• 2025年11月29日

インフルエンザの薬はいつ飲む?種類と効果・副作用を内科専門医が解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。松戸市では現在インフルエンザが流行中です。そこで今回は前回に引き続きインフルエンザに関する話題です。

インフルエンザにかかったとき、「薬は飲んだほうがいいの?」「どんな薬があるの?」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。インフルエンザ治療薬は発症から48時間以内の服用が重要とされており、適切なタイミングで使用することで症状の期間を短縮し、重症化を防ぐ効果が期待できます。

本記事では、松戸市で内科クリニックを運営する医師として、インフルエンザ治療薬の種類や効果、服用のタイミング、副作用について詳しく解説します。患者様からよくいただく質問にもお答えしますので、正しい知識を身につけていただければと思います。

目次

  1. インフルエンザ治療薬の基礎知識
  2. 主なインフルエンザ治療薬の種類と特徴
  3. インフルエンザ薬を服用すべきタイミング
  4. 副作用と注意点
  5. よくある質問(Q&A)
  6. まとめ

1. インフルエンザ治療薬の基礎知識

インフルエンザ治療薬の作用メカニズム

インフルエンザ治療薬は、一般的に「抗インフルエンザウイルス薬」と呼ばれます。風邪薬のように症状を和らげるだけではなく、ウイルスそのものの増殖を抑える働きがあります。

インフルエンザウイルスは体内で急速に増殖し、感染した細胞から次々と新しいウイルスが放出されます。抗インフルエンザウイルス薬は、このウイルスが細胞から放出される過程をブロックすることで、ウイルスの拡散を防ぎます。

治療薬の効果と限界

適切に使用された場合、インフルエンザ治療薬には以下のような効果が期待できます。

期待できる効果

  • 発熱期間を約1日程度短縮
  • 症状の重症度を軽減
  • 合併症のリスク低減
  • 周囲への感染拡大の抑制

ただし、インフルエンザ治療薬は「魔法の薬」ではありません。服用してもすぐに熱が下がるわけではなく、通常は服用後24〜48時間程度で徐々に症状が改善していきます。また、発症から時間が経過してから服用した場合は、効果が限定的になることもあります。

2. 主なインフルエンザ治療薬の種類と特徴

現在、日本で使用されているインフルエンザ治療薬には、いくつかの種類があります。それぞれに特徴があり、患者様の年齢や症状、基礎疾患などを考慮して選択されます。

タミフル(オセルタミビル)

服用方法 1日2回、5日間服用するカプセル剤または粉薬(ドライシロップ)

特徴

  • 最も使用実績が豊富な治療薬
  • 成人から小児まで幅広く使用可能
  • 1歳未満の乳児にも処方できる
  • 重症化リスクの高い方にも使いやすい

タミフルは2001年から使用されており、長年の実績があります。服用回数は多いですが、効果と安全性のバランスが取れた薬として、現在でも第一選択薬の一つとされています。

リレンザ(ザナミビル)

服用方法 1日2回、5日間吸入する粉末タイプ

特徴

  • 吸入薬のため、直接気道に作用
  • 全身への影響が少ない
  • 5歳以上から使用可能
  • 吸入操作が必要なため、使用できる方が限られる

リレンザは吸入タイプのため、喘息などの呼吸器疾患がある方や、吸入操作が難しい小さなお子様には向かない場合があります。

イナビル(ラニナミビル)

服用方法 1回の吸入で治療が完了する吸入薬

特徴

  • 1回の吸入で5日間効果が持続
  • 飲み忘れの心配がない
  • 5歳以上から使用可能
  • 吸入操作が必要

イナビルは「1回で終わる」という点が大きなメリットです。ただし、吸入がうまくできなかった場合に再投与が難しいという側面もあります。

ゾフルーザ(バロキサビル)

服用方法 1回の服用で治療が完了する錠剤または顆粒

特徴

  • 新しいタイプの作用機序を持つ
  • 1回の服用で完了
  • 12歳以上から使用推奨 (低年齢で耐性ウイルスが報告)
  • 特にB型に有効性が高いとされる
  • ウイルスの増殖そのものを阻害

ゾフルーザは2018年に登場した比較的新しい薬です。他の薬とは異なる作用メカニズムで、ウイルスの遺伝子複製を阻害します。服用の手軽さから人気がありますが、低年齢になるほど耐性ウイルスの出現が報告されているため、低年齢(特に5歳以下)使用には慎重な判断が求められます。

ラピアクタ(ペラミビル)

投与方法 点滴静注(1回15分程度)

特徴

  • 重症例や経口摂取が難しい場合に使用
  • 1回の点滴で治療完了
  • 医療機関での投与が必要

ラピアクタは主に入院患者様や、嘔吐などで内服が困難な場合に使用されます。

3. インフルエンザ薬を服用すべきタイミング

発症48時間以内が重要な理由

インフルエンザ治療薬の効果を最大限に得るためには、発症から48時間以内の服用が推奨されています。これには明確な理由があります。

インフルエンザウイルスは感染後、急速に増殖します。発症から24〜48時間でウイルス量はピークに達し、その後は自然に減少していきます。治療薬はウイルスの増殖を抑える働きがあるため、ウイルスが盛んに増殖している時期に使用することで効果を発揮します。

48時間を過ぎると、すでにウイルスの増殖のピークを過ぎているため、薬の効果が限定的になってしまうのです。

こんな症状があれば早めの受診を

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 38度以上の急な発熱
  • 強い倦怠感や関節痛、筋肉痛
  • 咳、のどの痛み、鼻水などの呼吸器症状
  • 周囲でインフルエンザが流行している

特に高齢者、乳幼児、妊婦さん、慢性疾患をお持ちの方は、重症化リスクが高いため、早期の診断と治療開始が重要です。

薬を使わない選択肢もある

健康な若年〜中年の方で、症状が軽い場合は、抗インフルエンザウイルス薬を使用しなくても自然に回復します。実際、多くの国では軽症例には対症療法のみを行うことも一般的です。

薬を使用するかどうかは、年齢、基礎疾患の有無、症状の程度、発症からの時間などを総合的に判断して決定します。担当医とよく相談して、ご自身に合った治療方針を選択することが大切です。

4. 副作用と注意点

一般的な副作用

インフルエンザ治療薬は比較的安全性の高い薬ですが、以下のような副作用が報告されています。

タミフル

  • 吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状(5〜15%程度)
  • 頭痛

吸入薬(リレンザ、イナビル)

  • 気管支攣縮(まれ)
  • 吸入時の咳

ゾフルーザ

  • 下痢
  • 肝酵素の上昇

これらの副作用の多くは軽度で一時的なものですが、症状が強い場合は医師にご相談ください。

異常行動について

インフルエンザ治療薬、特にタミフルの使用と異常行動の関連が議論されてきました。しかし、現在の研究では、異常行動はインフルエンザそのものによって引き起こされるとされています。

実際、薬を使用していない患者様でも異常行動が報告されています。そのため、薬の使用に関わらず、発症後2日間は以下の点に注意が必要です。

注意すべきポイント

  • 特に未成年の方は一人にしない
  • 玄関や窓の施錠を確認する
  • 異常な言動がないか注意深く観察する

服用を避けるべき場合

以下のような場合は、薬の使用を慎重に判断する必要があります。

  • 過去に同じ薬でアレルギー反応があった方
  • 重度の腎機能障害がある方
  • 気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある方(吸入薬)

必ず医師に現在の健康状態や服用中の薬について伝えてください。

5. よくある質問(Q&A)

Q1. インフルエンザの薬は予防にも使えますか?

A. 予防投与という方法があります。ただし、これは保険適用外となり、自費診療となります。また、予防投与は以下のような限られた状況で検討されます。

  • 高齢者施設などで集団発生した場合
  • 重症化リスクの高い方が濃厚接触した場合
  • ワクチン接種ができない事情がある方

ワクチン接種が基本的な予防法ですので、まずは毎年のワクチン接種をお勧めします。

Q2. 熱が下がったら薬をやめてもいいですか?

A. いいえ、処方された日数分を最後まで服用することが重要です。熱が下がっても体内にはまだウイルスが残っています。途中で服用をやめると、ウイルスが再び増殖したり、耐性ウイルスが出現したりする可能性があります。

Q3. 薬を飲んでも熱が下がらないのですが?

A. インフルエンザ治療薬を服用しても、すぐに熱が下がるわけではありません。通常、服用後24〜48時間で徐々に症状が改善していきます。ただし、以下のような場合は再度受診をお勧めします。

  • 服用後3日経っても高熱が続く
  • 呼吸困難や意識障害などの重篤な症状が現れた
  • 症状が悪化している

Q4. 市販の風邪薬と併用してもいいですか?

A. 併用については医師や薬剤師に相談してください。解熱鎮痛剤については、アセトアミノフェン(カロナールなど)は比較的安全に併用できますが、一部の解熱鎮痛剤は使用を避けるべきものもあります。

Q5. 授乳中ですが薬を飲んでも大丈夫ですか?

A. タミフルやリレンザは授乳中でも使用できるとされています。ただし、個別の状況によって判断が異なる場合がありますので、必ず医師に授乳中であることを伝えてください。

Q6. 家族がインフルエンザになったのですが、自分も薬をもらえますか?

A. 症状がない場合、基本的には処方されません。ただし、重症化リスクが高い方で、インフルエンザ患者様と濃厚接触があった場合は、予防投与が検討されることがあります。その場合は自費診療となります。

6. まとめ

インフルエンザ治療薬は、適切なタイミングで使用することで症状の期間を短縮し、重症化を防ぐ効果が期待できます。特に発症から48時間以内の使用が重要とされています。

記事のポイント

  1. インフルエンザ治療薬はウイルスの増殖を抑える働きがある
  2. 発症から48時間以内の服用が効果的
  3. タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザなど複数の種類がある
  4. 処方された日数分を最後まで服用することが大切
  5. 副作用は一般的に軽度
  6. 薬を使わない選択肢もあり、担当医と相談して決定する

インフルエンザかもしれないと感じたら、早めに医療機関を受診することをお勧めします。特に高齢者、乳幼児、妊婦さん、基礎疾患をお持ちの方は、重症化を防ぐために早期の診断と治療が重要です。

また、インフルエンザの最も効果的な予防法は、毎年のワクチン接種です。手洗い、うがい、適度な湿度の維持なども予防に役立ちます。

インフルエンザにかかりやすい人については前回のブログ「インフルエンザにかかりやすい人の特徴と対策|最新研究が明らかにした予防のポイント」をご覧ください。

当クリニックでは、インフルエンザの診断から治療まで、患者様一人ひとりの状況に応じた適切な医療を提供しております。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。


参考文献

  1. 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
  2. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 日本内科学会 JMECCインストラクター
  • 日本救急医学会 ICLSインストラクター
  • 認知症サポート医

インタビュー記事はこちらからご覧ください。

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