- 2025年8月19日
オンライン診療のメリット・デメリット|内科専門医が解説する新しい医療のカタチ

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。近年、医療のデジタル化が急速に進む中で、オンライン診療が注目を集めています。当院でもその流れを受けて2025年7月からオンライン診療を導入しました。しかし、「オンライン診療は本当に安全なの?」「どんな時に利用すべき?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今回はオンライン診療のメリットとデメリットを詳しく解説いたします。是非ご覧ください。
当院でのオンライン診療の受診方法については以前のブログ「オンライン診療のご案内~いつでも、どこでも、安心の医療を~」をご覧ください。
目次
- オンライン診療とは?基礎知識を分かりやすく解説
- オンライン診療の7つのメリット
- 知っておくべき5つのデメリット
- オンライン診療が適している症状・疾患
- 安全にオンライン診療を受けるための準備
- よくある質問 Q&A
- まとめ:上手に活用して健康管理を

オンライン診療とは?基礎知識を分かりやすく解説
オンライン診療とは、パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器を用いて、医師と患者様が離れた場所にいながら診療を行う医療サービスです。ビデオ通話機能を活用することで、医師が患者様の症状を視覚的に確認し、適切な診断や治療方針の決定を行います。
オンライン診療の種類
オンライン診療には主に以下の3つの形態があります。
1. 初診からのオンライン診療:かかりつけ医がいない患者様でも、条件を満たせば初回からオンライン診療を受けることができます。
2. 再診(かかりつけ)でのオンライン診療:一度対面で診察を受けたことのあるかかりつけ医によるオンライン診療です。(これが望ましいと考えられています。)
3. 定期処方のためのオンライン診療:血圧薬や糖尿病薬など、継続的な服薬が必要な場合の処方箋発行を目的とした診療です。
法的な枠組みと安全性の確保
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき、医師の責任のもとで適切に実施されています。診療録の作成・保存、処方箋の発行なども厳格に定められており、対面診療と同等の医療の質が保たれるよう配慮されています。

オンライン診療の7つのメリット
1. 通院時間と交通費の削減
最も実感していただけるメリットが、通院にかかる時間と費用の削減です。例えば、片道30分かかるクリニックへの通院の場合、往復で1時間、交通費も往復で数百円から千円程度かかります。オンライン診療なら、自宅にいながら5〜15分程度で診察が完了します。
2. 感染リスクの軽減
特に免疫力が低下している方、高齢の方にとって、院内での感染リスクを避けられることはメリットです。待合室での他の患者様との接触を避けることで、風邪やインフルエンザなどの感染症への感染リスクを軽減できます。
3. 待ち時間の有効活用
対面診療では、予約時間に到着しクリニック内で待つ必要がありますが、オンライン診療では、自宅などで好きなことをして過ごすことができるため、貴重な時間を有効活用していただけます。
4. 通院が困難な方への医療アクセス向上
以下のような状況の方にとって、オンライン診療は医療へのアクセスを大きく改善します。
- 身体障害や歩行困難により外出が困難な方
- 介護が必要なご家族を抱えている方
- 遠隔地にお住まいで専門医療機関まで距離がある方
- 仕事の都合で平日日中の受診が困難な方
5. 継続的な健康管理の促進
生活習慣病の管理において、定期的な医師との相談は極めて重要です。オンライン診療により受診のハードルが下がることで、治療の中断率が低下し、より良好なコントロールが期待できます。
6. プライバシーの保護
これは当院の話ではなく一般的な話ですが、精神的な疾患やデリケートな症状の診療科に通院する方にとっては、他の患者様の目を気にせずに済むことはメリットだと思います。
7. 家族同席での診察が容易
小さなお子様の診察時に保護者の方が同席しやすい、高齢の患者様の診察時にご家族が同席して情報を共有しやすいなど、ご家族を交えた診療が行いやすいという利点もあります。

知っておくべき5つのデメリット
1. 身体的な診察の制限
オンライン診療の最も大きなデメリットが、直接的な身体診察ができないことです。以下のような検査は実施できません。
- 血圧や体温の正確な測定
- 聴診器による心音・呼吸音の確認
- 触診による腹部の状態確認
- 皮膚や関節の詳細な観察
その他、診察に患者様が入ってきた時の歩行の仕方や全体的な雰囲気(重症感)も感じづらいのは大きなデメリットと感じています。そのため必要を感じた際には、対面診療をお勧めすることがあります。
2. 緊急時対応の困難さ
患者様の状態が急激に悪化した場合、オンライン診療では迅速な処置ができません。胸痛、呼吸困難、意識障害などの緊急症状に対しては、救急医療機関への受診が必要になります。
オンライン診療を受ける際は、緊急時の連絡先や対応方法について事前に確認しておくことが重要です。
3. 技術的なトラブルのリスク
インターネット接続の不調、機器の故障、アプリケーションの不具合などにより、診察が中断される可能性があります。特に高齢の患者様にとっては、技術的な操作が負担となる場合もあります。
4. 診断精度の低下リスク
画面越しでの視診には限界があり、微細な症状の変化を見逃すリスクがあります。特に皮膚疾患や外傷の評価においては、対面診療と比較して診断精度が低下する可能性が指摘されています。
このため、オンライン診療では「疑わしい場合は対面診療に移行する」という慎重な判断が求められます。
5. 処方薬、日数の制限
初診でのオンライン診療では、処方できる薬剤に制限があります。(睡眠薬など、一部の薬剤はオンライン診療では処方できません。)また初診の方に対する処方日数は7日までです。

オンライン診療が適している症状・疾患
適している疾患・症状
慢性疾患の継続管理
- 高血圧症 (安定期)
- 脂質異常症 (安定期)
- 花粉症などの継続管理
- 睡眠時無呼吸症候群のCPAPの管理
軽度の急性症状
- 軽度の風邪症状
- 軽度の胃腸炎
- 軽度の皮膚炎
オンライン診療が適さない症状・疾患
緊急性の高い症状
- 激しい胸痛や呼吸困難
- 高熱(38.5℃以上)
- 激しい腹痛
- 意識障害
- 外傷や出血
詳細な身体診察が必要な症状
- 初回の心電図や心雑音の評価
- 腹部腫瘤の疑い
- 関節の腫脹や変形

安全にオンライン診療を受けるための準備
技術面での準備
1. 通信環境の確認
- 安定したインターネット環境
- カメラとマイク機能付きのデバイス
- 十分な画面の明るさ設定
2. アプリケーションの事前準備
- 指定された診療アプリのダウンロードとアカウント設定 (当院ではデジスマアプリ)
- 操作方法の確認
診察環境の準備
1. プライバシーの確保
- 他人に診察内容が聞こえない環境
- 背景に個人情報が映り込まないよう配慮
- 十分な照明の確保
2. 必要な情報の準備
- お薬手帳または現在服用中の薬のリスト
- 前回の検査結果
- 症状の経過メモ
診察前の体調チェック
基本的なバイタルサインの測定
- 体温測定
- 脈拍・血圧測定(血圧計をお持ちの場合)
- 体重測定
これらの情報を診察時に医師に報告していただくことで、より正確な診断と治療方針の決定が可能になります。

よくある質問 Q&A
Q1: オンライン診療の費用はどのくらいかかりますか?
A: オンライン診療の診察料は、対面診療とほぼ同額の保険診療が適用されます。ただし、「システム利用料」として別途費用が加算される場合があります。当院の場合は500円が別途かかります。詳細は各医療機関にお問い合わせください。
Q2: 処方薬はどのように受け取れますか?
A: 処方箋は以下の方法で受け取ることができます:
- 従来の処方箋:指定薬局でのお受け取り(処方箋のFAX+郵送)
- 電子処方箋:電子処方箋控えに記載されている6桁の番号を薬局で伝える。
当院では基本的に電子処方箋を採用しています。
Q3: オンライン診療中に体調が悪化した場合はどうすればよいですか?
A: 診察中に体調の急変を感じた場合は、すぐに医師にお伝えください。必要に応じて診察を中断し、緊急時対応の指示を行います。重篤な症状の場合は、迷わず救急車の要請をお勧めする場合もあります。
Q4: 初診でもオンライン診療を受けられますか?
A: 一定の条件を満たせば初診からオンライン診療を受けることが可能になりました。ただし、かかりつけ医機能を有する医療機関での受診が推奨されており、緊急時の対応体制が整っていることが条件となります。当院でも初診からオンライン診療が可能です。
Q5: オンライン診療の予約はどのように取りますか?
A: 多くの医療機関では、専用のアプリケーションや医院のウェブサイトから予約を取ることができます。当院での予約方法はこちらをご覧ください。
Q6: 検査結果の説明もオンライン診療で受けられますか?
A: はい、血液検査などの結果説明は、オンライン診療で対応可能です。ただし、検査そのものはオンラインでは実施できないため、必要に応じて対面での検査を併用いたします。

まとめ:上手に活用して健康管理を
オンライン診療は、適切に活用することで患者様の利便性向上と継続的な健康管理に大きく貢献できる医療サービスです。しかし、万能ではなく、対面診療との使い分けが重要であることもご理解いただけたかと思います。
オンライン診療を効果的に活用するポイント
- 慢性疾患の継続管理に積極的に活用する
- 緊急時は迷わず対面診療や救急医療を選択する
- 医師との信頼関係を築いた上で利用する
- 定期的な対面診療との組み合わせを心がける
当院では、患者様お一人お一人の状況に応じて、オンライン診療と対面診療の最適な組み合わせをご提案しております。オンライン診療に関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にお声がけください。皆様の健康管理がより便利で効果的になるよう、引き続き質の高い医療サービスの提供に努めてまいります。
参考文献
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和5年改訂)