- 2025年10月31日
ホルター心電図とは?検査でわかることや受け方を循環器専門医が解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病の田邉弦です。今回は当院でも良く行っているホルター心電図についてのお話です。
「動悸が気になるけど、病院に行った時には症状が出ない」「胸の違和感があるのに、普通の心電図では異常が見つからなかった」――このようなお悩みをお持ちではありませんか?
心臓の不調は、必ずしも常に症状が出ているわけではありません。多くの場合、日常生活の中で突然現れたり消えたりします。そんな「タイミングの悪い」心臓の症状を捉えるために開発されたのが、ホルター心電図検査です。
この記事では、松戸市で循環器内科クリニックを開業している医師として、ホルター心電図について分かりやすく解説いたします。検査を受けるべきかどうか迷っている方、すでに検査が決まっている方にとって、不安を解消し、検査への理解を深めていただける内容となっています。是非ご覧ください。
目次

1. ホルター心電図とは何か
24時間心臓の動きを記録する検査
ホルター心電図は、小型の心電図記録装置を身につけて、24時間(場合によっては48時間以上の機器もあります。)連続で心臓の電気的な活動を記録する検査です。1961年にアメリカの医師ノーマン・ホルター博士によって開発されたことから、この名前が付けられました。
通常の心電図検査が「心臓の写真」だとすれば、ホルター心電図は「心臓の動画」に例えられます。検査中は普段通りの生活を送っていただくため、日常生活における心臓の状態をありのままに把握することができるのです。
現代の装置は小型で快適
昔のホルター心電図装置は大きく重いものでしたが、現在の装置は非常に小型化されています。多くの場合、スマートフォンよりも小さく軽量で、胸に貼り付けた電極から心電図を記録します。以前は本体を首からぶら下げたりしていましたが、当院で取り扱っているものは下記画像の大きさで日常生活の邪魔になりづらいと思います。

2. 通常の心電図との違い
検査時間の違い
通常の心電図検査(安静時心電図)は、ベッドに横になった状態で数十秒程度の記録を行います。一方、ホルター心電図は24時間以上にわたって記録を続けます。
この時間の違いが、検査の意義に大きく影響します。心臓の不整脈や虚血(血流不足)は、一日の中で特定の時間帯や活動時に起こることが多いため、短時間の検査では捉えられないことがあるのです。
得られる情報の違い
通常の心電図では、その瞬間の心臓の状態しか分かりません。しかし、ホルター心電図では以下のような詳細な情報が得られます。
- 一日を通じた不整脈の種類と回数
- 不整脈が起こる時間帯やタイミング
- 症状が出た時の心電図の変化
- 睡眠中の心臓の状態
- 運動や食事、ストレスなど、日常活動と心臓の関係
特に重要なのが、患者様が症状を感じた時の心電図データと、実際の心臓の状態を対比できることです。「この動悸の時、実は心臓には異常がなかった」あるいは「自覚症状はなかったが、この時間帯に不整脈が起きていた」といった情報が分かります。

3. どんな時にホルター心電図が必要なのか
こんな症状がある方におすすめです
ホルター心電図検査は、以下のような症状がある方に推奨されることが多い検査です。
動悸や胸のドキドキ感:「急に心臓がバクバクする」「脈が飛ぶ感じがする」といった症状は、不整脈の可能性があります。しかし、病院を受診する頃には症状が治まっていることも多く、通常の心電図では異常が見つからないことがあります。
胸の痛みや圧迫感:特に朝方や胸の痛みや違和感がある場合、異型狭心症などの可能性を調べる必要があります。
めまいや立ちくらみ、失神:突然のめまいや意識が遠のく感じは、不整脈による一時的な心拍停止や血圧低下が原因のこともあります。
健康診断で指摘された方
健康診断や人間ドックで「不整脈の疑い」「心電図異常」などと指摘された方にも、精密検査としてホルター心電図が行われることがあります。
治療効果の確認
すでに不整脈の治療(例えば心房細動のアブレーション術後など)を受けている方が、薬の効果や術後経過を確認するために定期的にホルター心電図検査を受けることもあります。

4. 検査の流れと実際の方法
検査前の準備
ホルター心電図検査は、特別な準備はほとんど必要ありません。ただし、検査中はお風呂に入りづらいので、検査装着前にシャワーを浴びておくことをおすすめします。
装置の装着
当クリニックで、看護師が装置を取り付けます。所要時間は5〜10分程度です。
- 胸部の皮膚を清潔にします
- 電極(シール状のもの)を数カ所に貼ります
- 電極と記録装置をケーブルでつなぎます
- 行動記録表をお渡しします
検査中の過ごし方
装置を装着したら、そのまま帰宅して普段通りの生活を送っていただきます。重要なのは、いつも通りの日常を過ごすことです。無理に安静にしたり、激しい運動を避けたりする必要はありません(ただし、医師から特別な指示がある場合を除きます)。
行動記録表の記入
検査中に動悸や胸の痛みなど、気になる症状があった時は、その時刻と症状の内容を日誌に記録します。これにより、症状が出た時の心電図データと照合することができます。
また、以下のような日常の活動も記録しておくと、より詳しい解析が可能になります。
- 起床・就寝時刻
- 食事の時間
- 運動や階段の昇降
- ストレスを感じた出来事
- 服薬の時間
装置の返却と結果説明
24時間後(または指定された時間後)に、再度クリニックを受診して装置を返却します。記録されたデータは専用のソフトウェアで解析され、通常は1週間程度で結果が出ます。
結果説明の際には、一日を通じた心電図の変化、不整脈の有無や回数、症状との関連などについて、詳しく説明を行います。

5. 検査中の日常生活での注意点
ホルター心電図検査中にできること
ホルター心電図検査中でも、以下のことは問題なく行えます。
- 通勤や通学
- デスクワークや家事
- 散歩や軽い運動
- 食事(制限なし)
- 睡眠(通常通り)
- 車の運転
ホルター心電図検査中に避けるべきこと
入浴:当院で使っている装置は防水仕様ではありますが、検査中は入浴は控えていただいております。直接本体にかからないように軽くシャワーで流す程度にしてください。
激しい運動:医師の指示がない限り、過度に激しい運動は避けた方が無難です。ただし、日常的に行っている運動(ジョギング、軽い筋トレなど)は、むしろ心臓の状態を評価するために有用な場合もあります。
電極を触ったり剥がしたりしない:電極が剥がれてしまうと、正確なデータが取れなくなります。違和感があっても、自分で触らずにそのままにしておいてください。

6. ホルター心電図でわかること
不整脈の診断
不整脈には様々な種類があり、ホルター心電図によって以下のようなことが分かります。
期外収縮:心臓のリズムが一時的に乱れる最も一般的な不整脈です。多くの場合は治療の必要がありませんが、頻度や種類によっては治療が必要なこともあります。
期外収縮に関しては以前のブログ「「胸がドキッとする。」「脈が飛ぶ。」原因の第一位!期外収縮とは?」をご覧ください。
心房細動:心房が細かく震える不整脈で、脳梗塞のリスクを高めることが知られています。ホルター心電図では、心房細動が起きているかどうか、また起きている時間の長さを正確に把握できます。
心房細動に関しては以前のブログ「なかやまきんに君のCMで有名!?心房細動って何が問題なの?」をご覧ください。
徐脈(脈が遅い)や頻脈(脈が速い):一日を通じて脈拍数がどのように変化するか、極端に遅くなったり速くなったりする時間帯があるかを確認できます。
冠攣縮性狭心症(異型狭心症)の評価
狭心症の可能性を調べる上でも、ホルター心電図は重要です。胸の痛みや圧迫感がある時の心電図変化を捉えることで、冠動脈(心臓に血液を送る血管)の問題を発見できることがあります。特に、冠攣縮性狭心症の診断に有用です。
治療効果の判定
不整脈の薬を服用している方の場合、薬がきちんと効いているかを確認できます。
自律神経の評価
心拍数は自律神経によってコントロールされています。ホルター心電図のデータから、自律神経のバランスについての情報も得られることがあります。例えば夜間の心拍変動が多い方は、睡眠時無呼吸症候群を疑うことがあります。

7. よくある質問(Q&A)
Q1: 検査は痛いですか?
A: 全く痛みはありません。電極を胸に貼る際に、多少の皮膚の刺激を感じることがありますが、それ以外の不快感はほとんどありません。装置も軽量ですので、着けていることを忘れてしまう方も多くいらっしゃいます。
Q2: 検査費用はどのくらいかかりますか?
A: 保険診療の場合、3割負担で5000円程度です。ただし、他の検査や診察との組み合わせによって変動しますので、詳しくは受診される医療機関にお問い合わせください。
Q3: 検査中に異常が見つからなかったら、心臓は問題ないのでしょうか?
A: 24時間の検査で異常が見つからなくても、それは「検査した24時間の間は異常がなかった」ということを意味します。症状が続く場合は、より長期間の記録や他の検査が必要になることもあります。医師とよく相談してください。
Q4: 仕事をしながら検査を受けられますか?
A: はい、ほとんどの仕事は問題なく続けられます。デスクワークはもちろん、適度な体を使う仕事も可能です。ただし、装置に強い衝撃が加わる可能性がある作業は避けた方が良いでしょう。
Q5: 寝る時はどうすればいいですか?
A: 普段通りに寝ていただいて大丈夫です。睡眠中のデータも重要な情報ですので、日常生活を送ってください。
Q6: 妊娠中でも検査できますか?
A: はい、ホルター心電図は妊娠中でも安全に受けていただける検査です。放射線を使わず、お腹の赤ちゃんへの影響もありません。
Q7: 子供も受けられますか?
A: はい、お子様でも検査可能です。ただし、小さなお子様の場合は、装置を触ったり外したりしないように保護者の方の協力が必要です。

8. まとめ
ホルター心電図は、心臓の健康状態を詳しく調べる上で、非常に有用な検査です。24時間という長い時間をかけて記録することで、通常の心電図では見つからない異常を発見できる可能性があります。
この記事のポイント
- ホルター心電図は24時間連続で心臓の電気的活動を記録する検査
- 動悸、胸痛、めまいなどの症状がある方に推奨される
- 検査中は普段通りの生活を送ることが重要
- 痛みはなく、日常生活への影響も最小限
- 不整脈や冠攣縮性狭心症の診断に有効
心臓の症状で不安を感じている方、健康診断で異常を指摘された方は、ぜひ一度当クリニックを受診し、ホルター心電図検査について相談してみてください。当クリニックでは、最新のホルター心電図装置を用いて、丁寧な検査と分かりやすい結果説明を心がけております。心臓のことで気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール

田邉弦
丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長
- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
- 日本内科学会 JMECCインストラクター
- 日本救急医学会 ICLSインストラクター
- 認知症サポート医
インタビュー記事はこちらからご覧ください。