• 2025年11月8日

【専門医が解説】いびきの検査は何科?種類と費用、保険適用まで徹底解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病の田邉弦です。今回はよく質問のある睡眠時無呼吸症候群の検査に関するお話です。

「夜中のいびきがうるさいと家族に言われた」「朝起きても疲れが取れない」そんなお悩みはありませんか?いびきは単なる騒音問題ではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)など重大な病気のサインかもしれません。循環器内科専門医として多くの患者様を診察してきた経験から、いびきが心臓や血管に与える影響は決して軽視できません。適切な検査を受けることで、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを大幅に下げることができます。

本記事では、いびきの検査方法や受診すべき診療科、検査費用や保険適用について、わかりやすく解説いたします。


目次

  1. いびきはなぜ起こるのか?メカニズムを理解する
  2. いびきが引き起こす健康リスクと循環器への影響
  3. いびきの検査が必要なサインとは
  4. いびきの検査は何科を受診すべきか
  5. いびき検査の種類と内容
  6. 検査費用と保険適用について
  7. よくある質問(Q&A)
  8. まとめ:早期発見が健康寿命を延ばす

1. いびきはなぜ起こるのか?メカニズムを理解する

いびきの基本的なメカニズム

いびきは、睡眠中に空気の通り道である「気道」が狭くなることで発生します。狭くなった気道を空気が通過する際、喉の粘膜や軟口蓋が振動し、あの特有の音が生まれるのです。

例えば、ホースの先端を指で押さえて水を流すと「シュー」という音が出ますよね。これと似た原理が、私たちの喉で起きているとイメージしていただくとわかりやすいでしょう。

気道が狭くなる主な原因

気道が狭くなる原因はさまざまです。

  • 肥満:首周りに脂肪がつくと気道を圧迫します
  • 加齢:喉の筋肉が緩むことで気道が狭くなりがちです
  • 飲酒:アルコールは筋肉を弛緩させ、気道の閉塞を招きます
  • 鼻づまり:鼻が詰まると口呼吸になり、いびきをかきやすくなります
  • あごの構造:小さいあごや後退したあごは気道を狭めます

2. いびきが引き起こす健康リスクと循環器への影響

単なる騒音問題ではない理由

多くの方が「いびきは迷惑だけど病気ではない」と考えがちですが、これは大きな誤解です。特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴ういびきは、全身に深刻な影響を及ぼします。

循環器内科医が警告する心臓への影響

私が特に注目しているのは、いびきと心臓病の関連性です。睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に何度も呼吸が止まるため、血液中の酸素濃度が低下します。

すると心臓は酸素不足を補おうと、より強く血液を送り出そうとします。これが毎晩続くことで、

  • 高血圧:血圧が常に高い状態が続きます
  • 不整脈:心房細動などのリスクが約3倍高まります
  • 心筋梗塞:発症リスクが約3倍に上昇します
  • 脳卒中:リスクが約4倍になるという研究データもあります

その他の健康リスク

心臓以外にも、以下のような問題が生じる可能性があります:

  • 日中の眠気による事故リスク(交通事故は約7倍という報告があります。)
  • 集中力・記憶力の低下
  • うつ症状や不安感
  • 糖尿病の悪化
  • 夜間頻尿

睡眠時無呼吸の合併症に関しては、以前のブログ「意外と知らない睡眠時無呼吸症候群の闇。睡眠時無呼吸症候群は何が悪いの?」をご覧ください。

3. いびきの検査が必要なサインと

すぐに検査を受けるべき症状

以下のような症状がある場合は、早めの検査をお勧めします。

睡眠中の症状

  • いびきが突然止まり、その後大きな音とともに再開する
  • 息が苦しくて目が覚める
  • 寝汗をかくことが多い

日中の症状

  • 十分寝ているのに日中強い眠気がある
  • 起床時の頭痛や口の渇き
  • 集中力が続かない、物忘れが増えた
  • 慢性的な疲労感

家族や同僚からの指摘

  • 「いびきがうるさい」と言われる
  • 「寝ている時に息が止まっていた」と指摘された
  • 会議中や運転中に居眠りしそうになることがある

セルフチェックリスト

次の項目に3つ以上当てはまる方は、検査を検討されることをお勧めします。

□ BMI(体格指数)が25以上である □ 首回りが40cm以上ある(首が太いほど睡眠時無呼吸のリスクが高いとされています。) □ 習慣的にお酒を飲む □ 高血圧や糖尿病と診断されている □ 家族にいびきや睡眠時無呼吸症候群の人がいる

4. いびきの検査は何科を受診すべきか

主な診療科の選び方

いびきの検査を受けられる診療科は複数あります。症状や目的に応じて選択しましょう。

内科・循環器内科

  • 高血圧や心臓病などの持病がある方
  • 健康診断で異常を指摘された方
  • 総合的な健康管理を希望する方

当院のような循環器内科・糖尿病内科では、心臓や血圧、糖尿病への影響を含めた総合的な評価が可能です。

耳鼻咽喉科

  • 鼻づまりや扁桃腺の腫れがある方
  • 構造的な問題(鼻中隔湾曲症など)が疑われる方

呼吸器内科

  • 肺や気管支に問題がある方
  • COPDなど呼吸器疾患をお持ちの方

睡眠外来・睡眠センター

  • 睡眠時無呼吸症候群以外の睡眠障害も含めて総合的に検査を受けたい方

まずはかかりつけ医への相談を

どの科を受診すべきか迷われる場合は、かかりつけ医にご相談ください。症状や近隣の医療機関の状況に応じて適切な専門科への紹介状を書いていただけると思います。

5. いびき検査の種類と内容

問診と身体診察

検査の第一歩は、詳しい問診と診察です。

  • 睡眠の質や日中の眠気について
  • 既往歴や家族歴の確認
  • 体重の確認(BMI)
  • 口腔内や鼻腔の観察
  • 血圧測定

簡易検査

簡易睡眠ポリグラフ検査(PSG簡易版: 自宅で装着できる小型機器を使用します。当院では貸出で行っています。

測定項目:

  • 呼吸の状態(鼻と口の気流)
  • 血中酸素濃度
  • 体位

上記を測定して検査結果から、無呼吸低呼吸指数(AHI)という数値が算出されます。

まずは上記簡易検査を行い、AHIが40以上の場合はそのままCPAP治療、AHIが40未満の場合は、下記精密検査に移行します。

精密検査(自宅または入院で行う検査)

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査):睡眠時無呼吸症候群の確定診断に用いられる最も精密な検査です。以前は専用個室を完備した病院で入院が必要な検査でしたが、最近では専門メーカから専用機器を自宅にお届けし、自宅で行うこともできるようになっています。(検査後、自宅から直接メーカに返送)そのため、検査のハードルが大きく下がりました。

測定項目:

  • 脳波(睡眠の深さや覚醒)
  • 筋電図(あごや足の筋肉の動き)
  • 心電図
  • 呼吸運動(胸とお腹の動き)
  • 気流(鼻と口)
  • 血中酸素濃度
  • いびき音
  • 体位

6. 検査費用と保険適用について

保険適用される場合

いびきの検査は、保険適用となります。ただし「自覚症状がなく、いびきの指摘もない」などの場合は自費診療となることがあります。

検査費用の目安(3割負担の場合)

  • 簡易睡眠ポリグラフ検査:約3,000円
  • 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)
    • 自宅で行う場合約11,000円
    • 入院の場合は、30,000~50,000円程度かかることが多いようです。(個室料金もあるため医療機関ごとに異なります。)

7. よくある質問(Q&A)

Q1:検査は痛いですか?怖くないですか?

A:いびきの検査は基本的に痛みを伴いません。センサーを体につけるだけで、普段通りに寝ていただくだけです。少し眠りづらいかもしれませんが、多くの患者様が「思っていたより楽だった」とおっしゃいます。

Q2:検査の結果はいつわかりますか?

A:当院では簡易検査は機器を返却していただいた当日に説明可能です。精密検査の場合は機器を返送後1〜2週間程度で結果が出ることが一般的です。。

Q3:検査を受けたら必ず治療が必要になりますか?

A:検査の結果、軽度(精密PSG検査の結果、AHI 5以上20未満)の場合は生活習慣の改善(減量、飲酒制限、横向き寝など)で様子を見ることもありますし、マウスピース治療(歯科に紹介の上、作成)を行うこともあります。中等度以上(精密PSG検査でAHI 20以上)の場合は、CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)が推奨されますが、患者様の生活スタイルや希望を考慮して治療方針を決めていきます。

Q4:子どもでも検査できますか?

A:はい、可能です。小児の場合、扁桃腺やアデノイドの肥大が原因のことが多く、早期発見・早期治療が成長発達にとって重要です。お子様のいびきが気になる場合は、小児科や耳鼻咽喉科にご相談ください。

Q5:検査前の準備や注意事項はありますか?

A:

  • カフェインやアルコールは検査当日はなるべく控えてください。
  • 普段通りの睡眠時間帯に検査を行います。
  • 検査前のシャワーは問題ありません。
  • リラックスして臨んでいただくことが大切です

Q6:いびきをかかない人でも睡眠時無呼吸症候群になりますか?

A:まれですが、いびきをかかない睡眠時無呼吸症候群も存在します。日中の強い眠気や起床時の頭痛などがある場合は、いびきの有無にかかわらず検査をお勧めします。

8. まとめ:早期発見が健康寿命を延ばす

いびきは「年だから仕方ない」「太っているから当然」と見過ごされがちですが、適切な検査と治療により、生活の質(QOL)を大きく改善できる可能性があります。

特に循環器内科医の立場から強調したいのは、睡眠時無呼吸症候群の治療が心臓病や脳卒中の予防につながるという点です。実際、CPAP療法などの治療により、心血管イベントのリスクが大幅に低下することが多くの研究で示されています。

検査を受けるメリット

  1. 早期発見による重大疾患の予防:心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げられます
  2. 生活の質の向上:日中の眠気が改善し、仕事や趣味に集中できます
  3. 家族の安心:パートナーの睡眠の質も向上します
  4. 医学的根拠に基づいた治療:科学的に効果が証明された治療を受けられます

当院でのサポート体制

松戸市にある当院(丹野内科・循環器・糖尿病内科)では、循環器専門医として、いびきと心臓病の関連を含めた総合的な評価を行っております。簡易検査から精密検査、CPAP治療、マウスピース治療の紹介まで、一貫したサポートを提供しています。高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理と合わせて、包括的な健康管理をお手伝いいたします。

最後に

「たかがいびき」と思わず、気になる症状があればお気軽にご相談ください。早期発見・早期治療が、健康寿命を延ばす鍵となります。睡眠は人生の約3分の1を占める大切な時間です。質の高い睡眠を取り戻すことで、より活力ある毎日を送ることができます。ご不明な点やご心配なことがございましたら、いつでもお問い合わせください。患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供することをお約束いたします。

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 日本内科学会 JMECCインストラクター
  • 日本救急医学会 ICLSインストラクター
  • 認知症サポート医

インタビュー記事はこちらからご覧ください。

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