• 2025年2月13日

なかやまきんに君のCMで有名!?心房細動って何が問題なの?

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。なかやまきんに君のCMを見て思い立ったので今回は心房細動について解説したいと思います。

不整脈の一種である心房細動。最近では、なかやまきんに君が起用されたCMが多く放送され注目を集めています。「おい、オレの脈。正常なのかい?不規則なのかい?どっちなんだい!」というフレーズ聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?実は心房細動の有病率は高齢化に伴い増加しており、日本人の1~2%が抱える身近な病気です。この記事では、心房細動の症状や危険性、予防法から最新の治療法まで、わかりやすく解説していきます。

目次

心房細動って具体的にどんな状態?

心臓は、規則正しく収縮と拡張を繰り返すことで全身に血液を送り出しています。心臓には上の部屋(心房)と下の部屋(心室)がそれぞれ左右にあり合計で4つの部屋がありますが、通常その中の右の上の部屋(右心房)にある洞結節という場所にペースメーカ細胞があり、そこから一定のリズムで電気信号が作り出されています。しかし、何らかの原因で洞結節以外から異常な電気信号が発生し、心房内の電気信号が乱れた状態になると心房が小刻みに震える状態になってしまいます。これが心房細動という状態です。

通常は脈の間隔は一定のはずですが、心房細動では心房からの脈がバラバラに心室に伝わってしまうので、上の心電図のように不整になります。

心房細動の症状

  • 動悸:心臓がドキドキ・バクバクする感覚が続く。脈が乱れる。安静時でも感じることがあります
  • 息切れ:階段を上がるときなど、少し動いただけで息苦しくなる。日常生活に支障をきたす方もいます
  • めまい:立ちくらみやふらつきを感じる。疲労感:普段より疲れやすく、日常的な活動でも疲労を感じる
  • 胸の不快感:胸がモヤモヤする、圧迫感がある。時には痛みと表現する方もいます

ただ、これらの症状がまったく出ない「無症候性心房細動」も全体の40%程度は存在するという報告があり、定期的な健康診断でたまたま見つかることも少なくありません。最近受診されたAさんの事例を提示します。

患者さんの体験談:Aさん(65歳・男性)の場合

「最初は疲れているだけだと思っていました。階段を上がると息切れがするようになり、夜中に胸がドキドキすることが増えてきました。家族に勧められて受診したところ、心房細動が見つかりました。」

このように倦怠感のような症状で始まるような方もいるので注意が必要です。

なぜ心房細動は危険なの?

心房細動という不整脈事態はすぐに命にかかわるような不整脈ではありません(逆に心室細動は致命的でありいち早く除細動をする必要があります。)が、以下のような危険があります。

①脳梗塞

心房細動の最も怖い合併症は脳梗塞です。心房が震えることで血液のよどみができ、心房の中(特に左心耳という場所の中)に血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が血流にのって飛んでいき脳の血管を詰まらせると、脳梗塞になります。

心房細動による脳梗塞(心原性脳塞栓症)の特徴

脳梗塞には原因によって3つのタイプに分類されていますが、心原性脳梗塞はその中でも以下のような特徴があります。

  • 突然発症する
  • その他の脳梗塞のタイプより重症化しやすい
  • 後遺症が残りやすい
  • 再発リスクが高い

突然元気な働き盛りの方が突然脳梗塞で寝たきり状態になることもあり、社会全体としても重要な問題です。

②心不全

通常心臓は心房→心室と電気信号がつながり一定のリズムで動いていますが、心房細動になると脈が速くなったり不規則な心拍が続くことで、心臓に余分な負担がかかります。その結果、全身に十分な血液を送り出すことができなくなり、心不全を発症するリスクも高まります。また、もともと心筋症や弁膜症などの心臓の病気を持っている方に心房細動が合併すると急に心不全が悪くなることもあり、注意が必要です。

心不全になると、以下のような症状が出現します。

  • むくみ(特に下肢)
  • 労作時の息切れ
  • 夜間の呼吸困難、横になれない(心臓喘息と言われたりもします)
  • 急な体重増加

どんな人がなりやすいの?

年齢とともに増加

加齢とともにリスクは高まり、特に65歳以上の方は要注意です。高齢化社会の日本では、今後さらに患者数の増加が予想されています。

基礎心疾患がある方

  • 心筋梗塞
  • 心臓弁膜症
  • 心筋症

などを基礎として心不全がある方は起こりやすいです。

生活習慣病との関連

以下の方は特に注意が必要です

  • 高血圧の方:血圧が高い状態が続くと、心臓に負担がかかります
  • 糖尿病の方:心不全、心筋梗塞などあらゆる心臓病のリスク因子です
  • 睡眠時無呼吸症候群の方:夜間の無呼吸が心臓に負担をかけます
  • 肥満の方:やはり心臓への負担が増加します
  • 過度の飲酒習慣がある方:アルコールが心臓の電気的活動に影響を与えます

またその他にも肺気腫などの慢性の肺疾患があり、心臓に負荷がかかっている方や甲状腺機能亢進症の方なども心房細動を起こしやすくなります。

心房細動の診断方法

基本的な検査

1. 心電図検査

  • 12誘導心電図:標準的な心電図検査
  • ホルター心電図:24時間継続して心電図を記録
  • 携帯型心電計:症状が出たときに自分で記録

2. 血液検査

  • 甲状腺機能
  • 電解質バランス
  • 貧血の有無
  • 凝固機能

3. 心臓超音波検査(エコー)

  • 心臓の形態や機能を評価
  • 弁膜症の有無を確認
  • 心房内血栓の有無をチェック

最新の診断技術

最近では、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスで心房細動などの不整脈を検出できる製品も登場しています。もし心電図波形がとれるスマートウォッチを持っているようであれば、診察時にその波形を提示していただければ診断の大きな助けとなります。今後こういった技術はさらに進歩すると思われるので近い将来ホルター心電図などの従来の検査は不要になるかもしれません。

予防と対策

生活習慣の改善が重要

先ほど記したように生活習慣病との関連しているため生活習慣の改善が第一です。

1. 適度な運動

  • ウォーキングなど、無理のない有酸素運動を続ける
  • 1日30分程度の運動を心がける
  • 急激な運動は避ける
  • 運動前後のストレッチを忘れずに

2. 食生活の見直し

  • 減塩を心がける(1日の塩分摂取量6g未満を目標に)
  • バランスの良い食事を心がける
  • 野菜・果物を積極的に摂取 (糖尿病の方は注意)
  • 過度な飲酒を控える(日本酒なら1日1合程度まで、休肝日を設ける)
  • カフェインの過剰摂取に注意

3. 十分な睡眠

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 質の良い睡眠を確保する(7-8時間程度)
  • 就寝前の電子機器使用を控える
  • 快適な睡眠環境を整える

ストレス管理

  • 適度なリラックスタイムを設ける
  • 趣味や運動でストレス解消

定期的な健康診断

自覚症状がなくても、年に1回は健康診断を受けることをお勧めします。先ほども記したように心房細動の4割は無症状ですので、なかやまきんに君が宣伝しているように自己検脈も有用です。心房細動は長く続けば続くほど止まりづらくなる性質を持っていますので、早期発見・早期治療が重要です。

心房細動の治療法

薬物療法

1. 抗凝固薬 (血液サラサラの薬)

  • 血栓予防のために使用
  • 経口抗凝固薬(DOAC)がメイン (以前のワーファリンのように「納豆食べてはだめ!」のような食事制限はありません。)
  • 定期的な血液検査でモニタリングが必要

2. レートコントロール薬

  • 心拍数を適切にコントロール目指す薬
  • β遮断薬やCa拮抗薬などを使用

3. リズムコントロール

  • 心房細動を止めることを目指す薬
  • 個人に合わせて薬剤を選択
  • 副作用に注意が必要

カテーテルアブレーション

心房細動の原因となっている心臓の部位をカテーテルでやけどを作ることによって、心房細動を起こらなくする治療法です。近年デバイスの進歩もあり、より成績も向上しており適応も拡大しています。

治療の特徴

  • 1週間以内の入院で施行可能
  • 足の付け根と首からカテーテルを挿入
  • 成功率は80%程度 (個々の症例によって異なる)
  • 再発の可能性もあり
  • 再発の場合は複数回行うことも

年齢や自覚症状や持続期間などによって薬物療法が良い症例やカテーテルアブレーションが良い症例など様々です。よくお話を聞いて最適な治療を提案、必要に応じて紹介させていただきます。

まとめ:早期発見・早期治療が大切

心房細動は、高齢化に伴って増加しておりとても身近な不整脈です。早期発見・早期治療が重要で、早期に発見すれば適切な治療と生活習慣の改善で、十分にコントロール可能です。しかし、放置すると重大な合併症を引き起こす可能性があります。定期的な健康診断や検脈を行っていただき、気になる症状があった際にはいつでもご相談ください。

以下のような方は、特に受診をお勧めします。

  • 動悸や息切れを感じる方
  • 不整脈の家族歴がある方
  • 生活習慣病をお持ちの方
  • 健康診断で不整脈を指摘された方
  • 睡眠時無呼吸症候群の方
  • 過度の飲酒習慣がある方

予約は、お電話または当院のホームページから承っております。お気軽にご来院ください。

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