- 2025年12月26日
【医師が解説】風邪を早く治す方法|正しい対処法と受診のタイミング
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。

「風邪をひいてしまった…少しでも早く治したい」そう思われる方は多いのではないでしょうか。仕事や家事、大切な予定があると、一日でも早い回復を望むのは当然のことです。
風邪は誰もが経験する身近な病気ですが、実は対処法を間違えると回復が遅れてしまったり、重症化したりすることもあります。本記事では、内科専門医の視点から、風邪を早く治すための正しい方法と、日常生活で実践できる具体的な対策について詳しく解説いたします。
目次

風邪の基礎知識:そもそも風邪とは
風邪は正式には「風邪症候群」や「急性上気道炎」と呼ばれ、主にウイルス感染によって引き起こされる病気です。原因となるウイルスは200種類以上あるとされており、ライノウイルス、コロナウイルス(通常の風邪を引き起こすタイプ)、アデノウイルスなどが代表的です。
風邪の一般的な症状
風邪の症状は段階的に現れることが多く、初期症状として以下のようなものがあります
- 喉の違和感や痛み
- 鼻水、鼻づまり
- くしゃみ
- 倦怠感(だるさ)
- 発熱(通常は37〜38度程度)
- 頭痛
- 咳
これらの症状は、ウイルスに対する体の免疫反応として現れるものです。一般的に風邪の症状は3〜7日程度で改善に向かいますが、咳だけは2週間程度 (場合によっては1か月程度) 続くこともあります。

風邪を早く治すための5つの基本対策
風邪を早く治すためには、体の免疫機能を最大限に活かすことが重要です。以下の5つの対策を実践することで、回復を早めることが期待できます。
1. 十分な休養と睡眠
最も重要なのは休養です。体がウイルスと戦うためには、エネルギーを免疫活動に集中させる必要があります。
具体的な実践方法
- 可能な限り、自宅で安静にする
- 睡眠時間を普段より1〜2時間多く確保する(8〜9時間程度)
- 無理に活動せず、体がだるいと感じたら横になる
- 室温を20〜25度程度に保ち、快適な睡眠環境を整える
研究によると、睡眠不足の人は十分な睡眠をとっている人と比べて、風邪をひくリスクが約3倍高くなるというデータもあります。回復期においても、睡眠は免疫機能の正常化に不可欠です。

2. 適切な水分補給
風邪をひくと、発熱や発汗によって体内の水分が失われやすくなります。また、適切な水分補給は鼻や喉の粘膜を潤し、ウイルスの排出を助けます。
具体的な実践方法
- 1日1.5〜2リットルを目安に水分を摂取する
- 常温の水や白湯、温かいお茶がおすすめ
- 少量ずつこまめに飲む(一気に大量に飲むと胃に負担)
- カフェインの多い飲み物は利尿作用があるため控える
喉が痛い場合は、はちみつを加えた温かいレモン水なども症状緩和に役立つことがあります。

3. 栄養バランスの取れた食事
食欲がない場合も、体の回復には栄養が必要です。無理に食べる必要はありませんが、食べられるものから少しずつ摂取しましょう。
おすすめの食品
- タンパク質:豆腐、卵、白身魚など消化の良いもの(免疫細胞の材料になる)
- ビタミンC:柑橘類、いちご、ブロッコリー(抗酸化作用があるとされる)
- ビタミンA:にんじん、かぼちゃ(粘膜の健康維持に役立つ)
- 亜鉛:牡蠣、赤身肉、納豆(免疫機能のサポート)
- 消化の良い炭水化物:おかゆ、うどん、バナナ
避けたい食品
- 脂っこいもの、辛いもの(胃腸に負担)
- アルコール(免疫機能を低下させる可能性)
- 極端に冷たいもの(体を冷やす)
4. 適度な湿度の維持
乾燥した環境では、鼻や喉の粘膜の防御機能が低下し、ウイルスが侵入しやすくなります。
具体的な実践方法:
- 室内湿度を50〜60%程度に保つ
- 加湿器を使用する(定期的な清掃を忘れずに)
- 加湿器がない場合は、濡れたタオルを室内に干す
- マスクの着用も呼吸による湿度維持に効果的
特に冬場は暖房により室内が乾燥しやすいため、意識的な湿度管理が重要です。
5. 体を温める
体温が上がることで免疫細胞の活動が活発になります。ただし、発熱して体がつらい時に無理に温める必要はありません。
具体的な実践方法
- 首、手首、足首を温める(太い血管が通っているため効率的)
- 温かい飲み物をこまめに摂取
- 入浴は体力があれば可(長湯は避け、シャワー程度でも可)
- 寒気がする時は無理せず布団で休む
- 汗をかいたら速やかに着替える

回復を遅らせるNG行動
風邪を早く治したいという気持ちが、かえって回復を遅らせることもあります。以下の行動は控えることが推奨されます。
無理な運動や活動
「汗をかいて風邪を治す」という考え方は医学的根拠に乏しく、むしろ体力を消耗させて回復を遅らせる可能性があります。特に発熱がある時の運動は避けましょう。
不適切な薬の使用
市販の風邪薬は症状を和らげることはできますが、風邪そのものを治す薬ではありません。また、解熱剤の過度な使用は、体の自然な免疫反応を妨げることがあります。
- 38℃以下の発熱は無理に下げない方が良い場合も
- 複数の風邪薬の併用は成分の重複に注意
- 不明な点は薬剤師に相談を
抗生物質の自己判断での使用
風邪はウイルス性疾患であり、細菌に効く抗生物質は効果がありません。風邪を早く治したいからという理由で抗生物質を希望される方もいますが、抗生物質は風邪に効果がないばかりか耐性菌のリスクもあります。以前処方された抗生物質を自己判断で服用することも避けましょう。
喫煙・飲酒
喫煙は気道の炎症を悪化させ、アルコールは免疫機能を低下させる可能性があります。風邪の間は控えることが賢明です。

こんな症状は要注意:医療機関を受診すべきタイミング
多くの風邪は自然に治りますが、以下のような症状がある場合は医療機関への受診をおすすめします。
早めの受診が推奨される症状
- 高熱が続く:38.5度以上の発熱が3日以上続く
- 呼吸困難:息苦しさや胸の痛みがある
- 激しい頭痛:通常の頭痛と明らかに異なる強い痛み
- 意識障害:ぼんやりする、反応が鈍い
- 脱水症状:尿量の著しい減少、強い口渇
- 症状の悪化:一度良くなったのに再び悪化
- 持病のある方:糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などをお持ちの方
インフルエンザの可能性も考慮を
以下の症状がある場合、インフルエンザの可能性があります
- 38度以上の急な発熱
- 全身の強い倦怠感や筋肉痛
- 周囲でインフルエンザが流行している
インフルエンザの場合、発症から48時間以内に抗ウイルス薬を使用することで、症状の軽減や期間の短縮が期待できます。早めの受診が重要です。
インフルエンザに関しては以前のブログ「【2025年版】インフルエンザ流行の基礎知識と対策法|松戸市の内科専門医が解説」をご覧ください。

よくある質問(Q&A)
Q1. 風邪薬を飲めば早く治りますか?
A. 市販の風邪薬は症状を和らげることが主な目的で、風邪そのものを治すものではありません。症状が辛い時の対症療法として有効ですが、最も重要なのは休養と栄養、水分補給です。薬に頼りすぎず、基本的な対策を優先することが推奨されます。
Q2. 熱があるときはお風呂に入らない方が良いですか?
A. 高熱がある時や体力が著しく消耗している時は入浴を控えた方が良いですが、微熱程度で体力がある場合は、短時間のシャワーや入浴は問題ありません。ただし、長湯は避け、入浴後は十分に体を拭いて保温することが大切です。
Q3. ビタミンCのサプリメントは効果がありますか?
A. ビタミンCの風邪予防効果については研究が続いていますが、現時点では「予防効果はあまり期待できないが、症状の期間をわずかに短縮する可能性がある」とされています。サプリメントよりも、バランスの取れた食事から栄養を摂ることが基本です。
Q4. 風邪は人にうつりますか?いつまで注意が必要ですか?
A. 風邪は主に咳やくしゃみによる飛沫感染、または手を介した接触感染で広がります。症状が出ている間は感染力があり、特に発症から2〜3日がピークとされています。咳やくしゃみが治まるまでは、マスク着用や手洗いなどの感染対策を続けることが推奨されます。
Q5. 風邪の予防法はありますか?
A. 以下の方法が効果的とされています
- こまめな手洗い(石鹸で30秒以上)
- 十分な睡眠と規則正しい生活
- バランスの良い食事
- 適度な運動習慣
- ストレス管理
- 人混みではマスク着用
- 室内の適切な湿度管理

まとめ
残念ながら、風邪に特効薬はありません。早く治すための最も重要なポイントは、「体の免疫機能を最大限にサポートすること」です。そのためには、
- 十分な休養と睡眠を最優先する
- こまめな水分補給で体の機能を維持
- 栄養バランスの取れた食事で回復をサポート
- 適度な湿度で粘膜の防御機能を保つ
- 体を温めることで免疫細胞を活性化
これらの基本対策を実践することで、風邪からの回復を早めることが期待できます。
ただし、症状が重い場合や長引く場合、持病をお持ちの方は、早めに医療機関を受診することが大切です。風邪だと思っていても、インフルエンザや他の感染症の可能性もあります。
当院(松戸駅徒歩5分 キテミテマツド8階)では、風邪症状でお困りの患者様に対して、適切な診断と治療を提供しております。また発熱がある方のために終日発熱外来も行っております。ご心配な症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール

田邉弦
丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長
- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
- 日本内科学会 JMECCインストラクター
- 日本救急医学会 ICLSインストラクター
- 認知症サポート医
インタビュー記事はこちらからご覧ください。