• 2026年2月7日

【循環器専門医が解説】心筋梗塞の危険因子とは?命を守るために知っておくべき10の危険因子

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長の田邉弦です。今回は私の専門領域であります循環器関連の話題です。

心筋梗塞は、日本人の死因の上位を占める重大な疾患です。「突然起こる病気」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は心筋梗塞には明確な危険因子が存在します。実際に患者様から「自分は狭心症や心筋梗塞になりやすいのでしょうか?」「どうすれば予防できますか?」というご質問をいただくことが多くあります。

この記事では、心筋梗塞の危険因子について、医学的根拠に基づきながらも、できるだけわかりやすく解説いたします。ご自身やご家族の健康管理にお役立ていただければ幸いです。

目次

  1. 心筋梗塞とは?基礎知識を理解しましょう
  2. 心筋梗塞の主な危険因子10選
  3. 危険因子の重なりが特に注意すべき理由
  4. 日常生活でできる予防法
  5. よくあるご質問(Q&A)
  6. まとめ:定期的なチェックと生活習慣の見直しを

1. 心筋梗塞とは?基礎知識を理解しましょう

心筋梗塞のメカニズム

心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈が詰まってしまい、心筋が壊死してしまう病気です。

イメージしやすく説明すると、心臓は「24時間365日休まず働くポンプ」です。24時間でおおよそ10万回心臓は拍動しています。このポンプ自体にも栄養や酸素を届ける血管が必要で、それが冠動脈という血管です。この冠動脈が詰まると、心臓の筋肉が酸素不足になり、細胞が死んでしまいます。

なぜ危険因子を知ることが重要なのか

心筋梗塞は発症すると命に関わる重大な疾患ですが、多くの場合、長年にわたる生活習慣や体質的な要因が積み重なって発症します。

つまり、危険因子を知り、早期から対策を講じることで、発症リスクを下げることができるのです。


2. 心筋梗塞の主な危険因子10選

【変えられない危険因子】

(1)年齢

年齢が上がるにつれて、心筋梗塞のリスクは高まります。

男性では45歳以上、女性では55歳以上(閉経後)でリスクが上昇し始めるとされています。これは血管の老化現象(動脈硬化)が進行するためです。ただし、若い方でも他の危険因子が重なれば発症する可能性はありますので、年齢だけで安心はできません。

(2)性別

男性は女性に比べて心筋梗塞のリスクが高いことが知られています。

これは、女性ホルモン(エストロゲン)が血管を保護する働きを持っているためです。しかし、女性も閉経後はエストロゲンの分泌が減少するため、男性との差が小さくなります。女性の方も油断せず、特に閉経後は注意が必要です。

(3)家族歴(遺伝的要因)

ご両親や兄弟姉妹が若い年齢(男性55歳未満、女性65歳未満)で心筋梗塞や狭心症を発症している場合、ご自身のリスクも高まります。(家族性高コレステロール血症の診断基準にも若い年齢での冠動脈疾患の家族歴が入っています。)

家族歴がある方は、他の危険因子をより厳格に管理することが推奨されます。定期的な循環器科での検査をお勧めいたします。

【改善できる危険因子】

(4)高血圧

血圧が高い状態が続くと、血管壁に常に負担がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。

収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の状態を高血圧と定義します。日本では約4,300万人が高血圧と推定されており、そのうち約1,400万人が治療を受けていないとされています。

高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、自覚症状がほとんどないまま血管にダメージを与え続けます。

高血圧に関して詳しく知りたい方は高血圧のブログページもご覧ください。

(5)脂質異常症(高コレステロール血症)

LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)が高い状態や、HDLコレステロール(「善玉コレステロール」)が低い状態は、動脈硬化を促進します。

LDLコレステロールは血管壁に沈着しやすく、これがプラーク(動脈硬化)を形成します。このプラークが破れると血栓ができ、心筋梗塞を引き起こします。

コントロール目標はその他の併存リスクによって異なりますが、目安としてLDLコレステロールは140mg/dL未満、HDLコレステロールは40mg/dL以上を維持することが望ましいとされています。

脂質異常症に関して詳しく知りたい方は脂質異常症のブログページもご覧ください。

(6)糖尿病

糖尿病の方は、糖尿病でない方と比べて心筋梗塞のリスクが2〜4倍高いとされています。

高血糖状態が続くと、血管内皮が傷つき、動脈硬化が加速します。さらに、糖尿病の方は高血圧や脂質異常症を合併しやすく、複数の危険因子が重なることで、リスクはさらに高まります。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という指標で血糖コントロールを評価しますが、7.0%未満を目標とすることが一般的です。

糖尿病に関して詳しく知りたい方は糖尿病のブログページもご覧ください。

(7)喫煙

喫煙は心筋梗塞の強力な危険因子の一つです。

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管を収縮させ、血液を固まりやすくし、動脈硬化を促進します。1日1箱吸う方は、吸わない方に比べて心筋梗塞のリスクが約3倍になるという研究結果があります。

良いニュースは、禁煙すれば比較的早期にリスクが低下することです。禁煙後1年で心筋梗塞のリスクは半減し、15年後には非喫煙者とほぼ同じレベルまで下がるとされています。

(8)肥満・メタボリックシンドローム

内臓脂肪が蓄積すると、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの危険因子が重なりやすくなります。

メタボリックシンドロームは、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上で、かつ高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上該当する状態を指します。このメタボリックシンドロームがあると、心筋梗塞のリスクが高まることが知られています。

BMI(体格指数)が25以上の場合、適正体重への減量が推奨されます。

(9)運動不足

運動不足は、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクを高めます。

定期的な運動は、HDLコレステロールを増やし、血圧を下げ、血糖コントロールを改善し、ストレスを軽減する効果があります。WHO(世界保健機関)は、成人に対して週150分以上の有酸素運動を推奨しています。

「運動」と聞くとハードルが高く感じられるかもしれませんが、早歩きでの散歩や階段の利用など、日常生活に取り入れやすい活動から始めることが大切です。

(10)ストレス・睡眠不足

慢性的なストレスや睡眠不足も、心筋梗塞のリスク要因として認識されています。

ストレスは血圧を上昇させ、不健康な生活習慣(過食、喫煙、飲酒の増加など)につながりやすくなります。

3. 危険因子の重なりが特に注意すべき理由

相乗効果でリスクが増大

危険因子は単独でも心筋梗塞のリスクを高めますが、複数が重なるとリスクは単純な足し算ではなく、掛け算的に増加します。

例えば、高血圧、脂質異常症、喫煙の3つが重なると、リスクは約10倍になるという報告もあります。これは、それぞれの危険因子が異なるメカニズムで動脈硬化を促進するためです。

メタボリックシンドロームの怖さ

前述のメタボリックシンドロームは、まさにこの「危険因子の重なり」を表す概念です。

内臓脂肪の蓄積を基盤として、高血圧、高血糖、脂質異常症が連鎖的に発生します。この状態を放置すると、動脈硬化が急速に進行し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが飛躍的に高まります。

4. 日常生活でできる予防法

食生活の改善

減塩を心がける:1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。味噌汁は1日1杯まで、漬物や加工食品は控えめにしましょう。

バランスの良い食事:野菜、果物、魚、全粒穀物を中心とした食事を心がけましょう。特に青魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、心臓保護作用があることが知られています。

飽和脂肪酸を控える:動物性脂肪やトランス脂肪酸の摂取を控え、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を選びましょう。

適度な運動習慣

継続が最も重要:週3〜5回、1回30分程度のウォーキングから始めてみましょう。「ちょっときつい」と感じる程度の強度が効果的です。

日常生活での工夫:エレベーターではなく階段を使う、一駅手前で降りて歩く、テレビを見ながらストレッチするなど、無理なく続けられる方法を見つけましょう。

禁煙

禁煙は最も効果的な予防策の一つです。

一人で禁煙が難しい場合は、禁煙外来の利用をお勧めします。(当院では現時点で禁煙外来は行っておりません。)医療機関でのサポートにより、禁煙成功率は大幅に向上します。

ストレス管理と良質な睡眠

ストレス解消法を見つける:趣味の時間を持つ、友人と話す、適度な運動をするなど、自分なりのストレス解消法を持つことが大切です。

睡眠時間の確保:日本人は慢性的に睡眠不足の方が多いと言われています。毎日7時間程度の睡眠を確保しましょう。就寝前のスマートフォン使用を控える、寝室の温度を適切に保つなど、睡眠環境を整えることも重要です。

定期的な健康診断

年に1回は健康診断を受け、血圧、血糖値、コレステロール値などをチェックしましょう。

異常が見つかった場合は、早期に医療機関を受診し、適切な治療や生活指導を受けることが重要です。特に40歳を過ぎたら、定期的なチェックをお勧めします。

5. よくあるご質問(Q&A)

Q1: 家族に心筋梗塞の人がいます。私も必ず発症しますか?

A: いいえ、家族歴があるからといって必ず発症するわけではありません。遺伝的要因は確かにリスクを高めますが、生活習慣の改善により、そのリスクを大幅に減らすことができます。むしろ家族歴がある方は、早期から予防に取り組むことで、発症を防げる可能性が高まります。定期的な検診を受け、他の危険因子を厳格に管理することが大切です。

Q2: 血圧の薬を飲み始めたら一生やめられませんか?

A: 必ずしもそうとは限りません。生活習慣の改善により血圧が十分に下がれば、医師の判断のもとで減薬や中止できる場合もあります。ただし、自己判断での中断は危険ですので、必ず主治医にご相談ください。薬物療法は血管を守るための重要な手段であり、「薬に頼りたくない」という思いから治療を拒否することは、かえってリスクを高めてしまいます。

Q3: コレステロールは低ければ低いほど良いのですか?

A: LDLコレステロールについては、心血管疾患のリスクが高い方では低いほど良いとされています。一方、HDLコレステロールは高い方が良いとされています。適切な目標値は個々の患者様の状況により異なりますので、主治医と相談して決めることが重要です。

Q4: 健康診断で「要経過観察」と言われました。放置しても大丈夫ですか?

A: 「要経過観察」は「問題ない」という意味ではありません。現時点では治療が必要なほどではないものの、注意が必要な状態という意味です。生活習慣の見直しを始め、定期的にフォローアップすることが重要です。この段階で適切に対応すれば、将来の心筋梗塞リスクを大幅に減らすことができます。

Q5: 心筋梗塞の前兆はありますか?

A: 心筋梗塞の前兆として、階段を上る時や急いで歩く時に胸が締め付けられる感じがする、左肩や顎に放散する痛みがある、冷や汗が出るなどの症状が出ることがあります。これらは不安定狭心症の症状である可能性があり、心筋梗塞の前段階かもしれません。このような症状がある場合は、早急に循環器科を受診してください。

6. まとめ:定期的なチェックと生活習慣の見直しが大事

心筋梗塞は、突然発症する恐ろしい病気というイメージがありますが、実は多くの場合、長年にわたる危険因子の積み重ねによって起こります。

重要なポイント

  • 変えられない危険因子(家族歴)がある方は、より注意が必要
  • 改善できる危険因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足、ストレスなど)に積極的に取り組みましょう
  • 複数の危険因子が重なるとリスクは相乗的に増加します
  • 日常生活での小さな改善の積み重ねが、大きな予防効果につながります
  • 定期的な健康診断と、必要に応じた専門医への相談が重要です

当院では、患者様お一人お一人の状況に応じた最適なアドバイスを提供しています。「これくらい大丈夫だろう」と自己判断せず、気になることがあれば、お気軽にご相談ください。狭心症・心筋梗塞は予防できる病気です。今日からできることを一つずつ始めていきましょう。

丹野内科・循環器・糖尿病内科 (松戸市・松戸駅徒歩5分キテミテマツド8階)では、循環器専門医と糖尿病専門医が協力し、狭心症・心筋梗塞をはじめとする心血管疾患の予防に力を入れています。血圧、血糖、コレステロールの管理をはじめとして、包括的なサポートを提供しております。お気軽にご相談ください。

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 日本内科学会 JMECCインストラクター
  • 日本救急医学会 ICLSインストラクター
  • 認知症サポート医

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