- 2026年2月25日
NEAT(ニート)で健康寿命を延ばす!運動嫌いでもできる日常生活活動のすすめ
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉優希です。

「運動が大切なのはわかっているけれど、ジムに通う時間もないし、激しい運動は苦手…」そんな悩みをお持ちの方に朗報です。実は、特別な運動をしなくても、日常生活の中での何気ない動作が健康維持に大きく貢献することが分かってきました。
その鍵となるのが「NEAT(ニート)」です。NEATとは「Non-Exercise Activity Thermogenesis(非運動性活動熱産生)」の略で、スポーツや筋トレなどの意図的な運動以外で消費されるエネルギーのことを指します。立ち仕事や階段の昇り降り、家事など、日常の何気ない活動全てが含まれます。
当院では、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の患者様に、このNEATの重要性をお伝えしています。本記事では、循環器・糖尿病専門医の立場から、NEATの医学的な意義と、今日から始められる実践方法をわかりやすく解説いたします。
目次

1. NEATとは何か?基礎知識を理解する
私たちのエネルギー消費の内訳
人間が1日に消費するエネルギーは、大きく3つに分けられます。
1. 基礎代謝(60〜70%):何もしなくても消費されるエネルギーで、呼吸や心臓の拍動、体温維持などに使われます。
2. 食事誘発性熱産生(10%):食事を摂取・消化する際に消費されるエネルギーです。
3. 身体活動によるエネルギー消費(20〜30%):ここがポイントです。この身体活動は、さらに2つに分けられます。
- 運動による消費(5〜10%): ジョギングや水泳、筋トレなど、意図的に行う運動
- NEAT(15〜20%):通勤、家事、立ち仕事、階段昇降など、運動以外の日常活動
NEATの驚くべき個人差
研究によると、同じような体格で同じような食事量の人でも、NEATには1日あたり300〜400kcal、多い場合には800kcal以上もの差があることが分かっています。これは、ジョギング1時間分以上のエネルギー消費に相当します。
つまり、特別な運動をしなくても、日常生活での動き方次第で、大きなカロリー消費の差が生まれるのです。

2. NEATが健康に与える驚くべき効果
体重管理への影響
アメリカのメイヨークリニックの研究では、太りやすい人と太りにくい人を比較したところ、食事量や運動量に大きな差はないにもかかわらず、NEATに顕著な差があることが判明しました。太りにくい人は、座っている時間が1日平均2.5時間少なく、その分立ったり歩いたりしている時間が長かったのです。
この2.5時間の差が、1日あたり約350kcalのエネルギー消費の差となり、年間では約12kgの体重差につながる可能性があると報告されています。
血糖コントロールの改善
糖尿病の患者様にとって、NEATは特に重要です。長時間座り続けると、筋肉での糖の取り込みが低下し、血糖値が上昇しやすくなります。
研究では、30分ごとに3分間立ち上がって軽く動くだけで、食後血糖値の上昇が約30%抑えられることが示されています。これは、インスリンの効きが良くなる(インスリン感受性の改善)ためと考えられています。
心血管疾患リスクの低下
特に注目しているのが、NEATと心血管疾患の関係です。1日11時間以上座っている人は、4時間未満の人と比べて、心血管疾患による死亡リスクが約40%高いというデータがあります。
一方、座位時間が長くても、こまめに立ち上がったり動いたりすることで、このリスクを大幅に軽減できることも分かってきました。
認知機能の維持
最近の研究では、NEATが認知機能の維持にも役立つ可能性が示されています。日常的に体を動かすことで、脳への血流が改善され、認知症のリスク低下につながると考えられています。

3. NEATと生活習慣病の関係
糖尿病とNEAT
当院でも多くの糖尿病患者様を診療していますが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2ヶ月の血糖コントロールの指標)の改善に、NEATの増加が大きく貢献したケースを数多く経験しています。
特に、デスクワーク中心の方が、30分ごとに立ち上がる習慣をつけただけで、HbA1cが改善したケースもあります。(もちろんそれだけが改善の原因ではないかもしれません)
高血圧とNEAT
高血圧の管理においても、NEATは重要な役割を果たします。日常的な身体活動は、血管の柔軟性を保ち、血圧を自然に下げる効果があります。
激しい運動が難しい高齢の患者様でも、家事や庭仕事などのNEATを増やすことで、降圧薬の減量につながることもあります。
脂質異常症とNEAT
NEATの増加は、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やし、中性脂肪を減らす効果があることが知られています。特に、立位や歩行などの活動は、脂質代謝の改善に効果的です。

4. 日常生活でNEATを増やす具体的な方法
自宅でできるNEAT増加法
朝の習慣として
- 歯磨きをしながらかかとの上げ下げ運動
- テレビのCM中は立ち上がってストレッチ
- 掃除機がけを大きな動作でゆっくり丁寧に
家事の工夫
- 洗濯物を干す際、背伸びをしながら
- 料理中は足踏みをしながら待つ
- 床拭きはモップではなく雑巾がけで
1日の目安: これらの活動で、1日50〜100kcalの追加消費が期待できます。
職場でできるNEAT増加法
デスクワークの工夫
- 30分に1回は立ち上がる
- 電話は立ちながら取る
- プリンターを少し遠くに配置する
- ゴミ箱をデスクから離れた場所に置く
移動の工夫
- エレベーターではなく階段を使う(1フロアだけでも効果的)
- 昼食は少し遠いお店まで歩く
- 会議は立ったまま行う
1日の目安: オフィスでの工夫で、1日100〜200kcalの追加消費が可能です。
通勤・移動時のNEAT増加法
- 電車やバスでは座らない
- 一駅前で降りて歩く
- 車での買い物は、入口から遠い駐車場に停める
- エスカレーターではなく階段を選ぶ
1日の目安: 通勤での工夫で、1日50〜150kcalの追加消費が期待できます。
座りすぎを防ぐテクノロジーの活用
最近では、座りすぎを警告してくれるスマートウォッチやアプリも増えています。1時間ごとに「動きましょう」とリマインドしてくれる機能を活用するのも良い方法です。
季節に応じたNEAT活動
春・秋: ガーデニング、散歩
夏: 窓拭き、ベランダ掃除(早朝や夕方の涼しい時間に)
冬: 雪かき、大掃除

5. よくある質問(Q&A)
Q1: NEATを増やすのと、週末にまとめて運動するのと、どちらが効果的ですか?
A: どちらも大切ですが、健康効果を考えると、毎日コンスタントにNEATを増やす方が推奨されます。週末だけの運動では、平日の座りすぎによる悪影響を完全には打ち消せません。理想的には、NEATを日常的に増やしつつ、週末に好きな運動を楽しむのが良いでしょう。
Q2: 1日にどのくらいNEATを増やせば効果がありますか?
A: 個人差はありますが、まずは1日の立位・歩行時間を30分増やすことを目標にされると良いでしょう。これだけで約100kcalの追加消費となり、年間で約5kgの体重減少効果が期待できます。無理のない範囲から始めて、徐々に増やしていくことが継続の秘訣です。
Q3: 高齢で体力に自信がありませんが、NEATを増やしても大丈夫でしょうか?
A: むしろ高齢の方こそ、NEATの増加が推奨されます。激しい運動は体に負担がかかりますが、日常生活動作を少し増やす程度のNEATなら、安全に実践できます。ただし、心臓や関節に持病がある方は、主治医に相談してから始めることをお勧めします。
Q4: スタンディングデスクは効果がありますか?
A: はい、効果が期待できます。ただし、一日中立ちっぱなしも体に負担がかかるため、座位と立位を適度に切り替えることが大切です。30分座ったら30分立つ、といったリズムが推奨されています。
Q5: NEATだけで糖尿病の薬を減らせますか?
A: NEATの増加により、血糖コントロールが改善し、結果として薬の減量につながることはあります。ただし、薬の調整は必ず主治医と相談しながら行ってください。自己判断での中断は危険です。当院では、患者様のライフスタイルに合わせたNEAT増加プランをご提案し、定期的な血液検査で効果を確認しながら、必要に応じて薬の調整を行っています。

6. まとめ
NEAT(非運動性活動熱産生)は、特別な運動をしなくても、日常生活の中で自然に増やせる健康習慣です。
本記事のポイント
✓ NEATは1日のエネルギー消費の15〜20%を占め、個人差が大きい
✓ 座位時間を減らし、こまめに動くことで、糖尿病、高血圧、脂質異常症の改善が期待できる
✓ 30分ごとに立ち上がるだけでも、血糖値の改善効果がある
✓ 自宅、職場、通勤時など、あらゆる場面でNEATを増やす工夫ができる
✓ 無理なく続けられる小さな習慣の積み重ねが大切
「運動しなければ」というプレッシャーではなく、「日常生活を少しアクティブにしよう」という軽い気持ちで始めてみてください。エレベーターではなく階段を選ぶ、テレビを見ながら足踏みをする、そんな小さな変化の積み重ねが、1年後、5年後の健康的な体を作ります。
当院 (松戸駅徒歩5分 キテミテマツド8階 丹野内科・循環器・糖尿病内科)では、患者様一人ひとりのライフスタイルに合わせた、無理のないNEAT増加プランをご提案しています。HbA1cの測定も当日結果が出ますので、NEATの効果を定期的に確認することができます。生活習慣病でお悩みの方、健康診断で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール

丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長 田邉 優希
- 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本医師会 認定産業医