• 2025年3月31日
  • 2025年4月1日

睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療とは?適応・費用・効果・注意点を徹底解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回は睡眠時無呼吸症候群の治療の第一選択であるCPAP療法についてのお話です。

睡眠時無呼吸症候群の治療で最も効果的とされるCPAP(シーパップ)治療。マスクを装着して眠るということは知っている方は多いと思いますが、詳しいことはご存じない方も多いと思います。この記事では、CPAP治療について、適応・費用・効果・メリット/デメリットを含めて詳しく解説します。

目次

CPAPとは?

CPAPは「Continuous Positive Airway Pressure(持続陽圧呼吸療法)」の略称です。呼んで言葉の通りで、睡眠中に空気を送り込むことで強制的に気道を確保する治療法です。

CPAPの仕組み

小型の装置から送られる空気が、マスクを通して鼻や口に送られます。この空気圧により、睡眠中に気道が狭くなったり塞がったりするのを防ぎます。いわば、空気の力で気道を「添え木」のように支える仕組みです。

なぜCPAPが必要なの?

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が止まる(無呼吸)または極端に弱くなる(低呼吸)状態が繰り返し起こります。これにより、

  • 十分な睡眠が取れない、睡眠の質の低下
  • 日中の眠気や集中力低下
  • 高血圧や心臓病、脳卒中のリスク上昇

などの問題が生じます。このあたりのことは、以前のブログ「意外と知らない睡眠時無呼吸の闇。睡眠時無呼吸症候群は何が悪いの?」でも記載しましたので、一読いただければと思います。

CPAP治療の効果

即効性のある効果

  • いびきの改善
  • 睡眠の質の向上→ 朝の目覚めの改善
  • 日中の眠気、集中力低下の軽減

長期的な効果

  • 高血圧の改善
  • 心血管疾患リスクの低下
  • 糖尿病のコントロール改善
  • 交通事故リスクの低下
  • 認知機能の維持

CPAP治療の適応と診断の流れ

簡易検査

当院での睡眠時無呼吸の検査の流れを説明します。まず、睡眠時無呼吸が疑われる場合は簡易検査を行います。簡易検査は、ご自宅で行える睡眠時無呼吸の検査です。睡眠中の呼吸の状態、血液中の酸素飽和度などを同時に測定します。就寝時にセンサーを貼り付け、本体のボタンを押して検査をスタートさせ、いつも通りお休みいただくだけです。クリニックで検査の行い方は丁寧に説明しますのでご安心ください。この検査結果により、以下のような診断の流れとなります。

AHI (無呼吸低呼吸指数)40以上の場合

  • 重症の睡眠時無呼吸症候群と診断
  • CPAP治療の直接適応

AHI 40未満の場合

  • 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)による精密検査が必要

連携医療機関に入院の上、精密PSGを行うのが一番正確な診断ができるとは思いますが、忙しい方で入院が難しい方は、自宅でできる精密検査をご案内しますのでご相談ください。

PSGによる精密検査

簡易検査では気流センサーと酸素モニターを付けるのみでしたので本当に患者さんが眠れているのかなどは測定困難でしたが、精密検査では以下のような項目を測ることによって睡眠の状態まで検査可能です。

  • 脳波、筋電図
  • 呼吸状態、酸素飽和度
  • 体位、いびき、心電図など
  • 総合的な睡眠の質の評価

PSG検査後の治療方針

簡易検査ではAHI40以上でCPAP適応となっていましたが、精密検査ではAHI20以上で適応となります。

  • AHI 20以上:CPAP治療の適応
  • 5≦ AHI < 20 :OA (マウスピース)作成を検討
  • AHI < 5:睡眠時無呼吸症候群は否定的

CPAP治療の進め方と費用

導入時の流れ

  1. 医師による説明と適応の判断→患者様の同意
  2. クリニックにてCPAP指示書を作成
  3. 患者さん宅へメーカーから機器の郵送または設置、取り扱い説明を行う
  4. 1か月に1度の定期的なフォローアップ

以上のような流れでCPAP導入になります。CPAP機器はレンタルです。クリニックがメーカーと契約し、毎月のCPAPのレンタル料をクリニックがメーカーに支払います。一方でクリニックは診察料や指導料として保険点数により患者様と健康保険へ請求することになります。ですので、CPAP治療は月に1回の外来診療が原則となります。治療費は月に1回の診察で3割負担の方で5000円程度になります。(毎月のレンタル費用(機器保守含む)をクリニックでの診察代金としてお支払いいただくイメージです。)

CPAP機器について

機器の種類

現在の主流は、自動圧調整式CPAP(Auto-CPAP)です。睡眠状態に応じて最適な圧力を自動で調整します。

主な構成部品

  1. 本体(空気圧発生装置)
  2. マスク(鼻マスクから始められる方がほとんどです。)
  3. チューブ
  4. フィルター

CPAP機器は日々進歩しており、以下のような改良が進んでいます。

  • より静かな動作音
  • コンパクト化による携帯性の向上
  • 加湿機能付きの機器
  • 素早い圧反応でイベントを改善
  • 使用データの詳細な解析機能

CPAPの機器もメーカにより得意としているところが違いますので、もし現状で不満な点や要望があるようでしたらメーカーや機器の交換も検討します。

CPAPを継続するためのコツ

快適に使用するために

1. マスクの正しい装着

  • 空気漏れを防ぐ
  • 適度な締め付け具合に調整

2. 機器のお手入れ

  • マスクやフィルタの定期的なお手入れ
  • チューブの清潔保持

3. 環境づくり

  • 寝室の適切な温度・湿度管理
  • 就寝時間の規則化
  • 寝る前のアルコールやコーヒー、お茶を控える

よくある問題と対処法

1. マスクの不快感、息苦しさ

  • マスクフィッティングを見直す(マスクと顔との間に指一本程度入るきつさ)
  • 息を吐くときにも陽圧がかかるため慣れが必要→鼻呼吸を意識
  • 圧や設定の見直し→メーカーやクリニックに相談ください

2. 鼻の乾燥

  • 加温加湿器の使用 (加湿機能付きの機器もありますので、ご相談ください。)
  • 室内の適度な湿度管理
  • 就寝前の十分な水分補給

よくある質問と回答(FAQ)

Q1: CPAPは一生続ける必要があるのでしょうか?

A1: 必ずしもそうではありません。体重減少や生活習慣の改善により、症状が改善する場合もあります。特に、肥満が原因で睡眠時無呼吸を発症している方の場合、適切な体重管理により、CPAP治療が不要になるケースもあります。ただし、治療の中止は必ず医師と相談の上で判断してください。

Q2: 旅行時はどうすればよいですか?

A2: CPAP機器は持ち運び可能です。国内旅行の場合は、コンパクトな専用バッグに入れて持参できます。

治療効果を最大限に引き出すために

生活習慣の改善 

CPAP治療と併せて、以下のような生活習慣の改善も重要です。

1. 適切な体重管理

  • BMIの目標設定
  • 運動療法の導入
  • 栄養指導との連携

2. 睡眠衛生の改善

  • 就寝時間の規則化
  • 寝室環境の整備(温度・湿度・照明)
  • 就寝前の活動の見直し

3. 禁煙支援

  • 喫煙は気道の炎症を悪化させる
  • 禁煙外来との連携

合併症の管理について

睡眠時無呼吸症候群は、様々な疾患との関連が指摘されています。以前のブログ「意外と知らない睡眠時無呼吸の闇。睡眠時無呼吸症候群は何が悪いの?」で詳しく解説しています。合併症は相互に関係しあい悪循環を引き起こします。当院では合併症の管理にも力を入れていますので是非ご相談ください。

データ管理と経過観察

確認する項目

  • 使用日数
  • 使用時間(1日4時間以上の使用を推奨)
  • AHI (無呼吸・低呼吸の発生回数)
  • マスクからの空気漏れ (リーク量)

定期受診の重要性

以上のようなデータを踏まえて改善点などを定期受診時にお話しします。また睡眠時無呼吸の治療には生活習慣の管理や合併症(高血圧や糖尿病など)の検索・コントロールも必須ですので、定期受診は非常に重要です。

まとめ

CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群に対する最も効果的な治療法です。確かに毎日の使用には慣れが必要ですが、適切なサポートがあれば、多くの方が継続して治療を受けられています。治療により睡眠の質が改善し、日中の活動性が向上するだけでなく、さまざまな合併症のリスクも軽減できます。

当院では、睡眠時無呼吸症候群の診断から、CPAP導入、その後のフォローアップまで、一貫したサポート体制を整えています。特に導入初期は、きめ細かな指導と調整を行い、継続して治療を受けられるようサポートいたします。睡眠・いびきに関する悩みがある方は、まずはご相談ください。

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