• 2025年1月30日
  • 2025年1月31日

糖尿病に欠かせない指標!HbA1cってなに?目標値は?

こんにちは!丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長の田邉優希です。今回は糖尿病についてよく聞かれることを書きたいと思います。

糖尿病の診断や治療効果の判定に欠かせないHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)。採血検査でよく目にする数値ですが、実際にどんな意味があるのでしょうか?また、目標とすべき数値はあるのでしょうか?

目次

HbA1cとは?その仕組みを解説

HbA1c値とは、赤血球中のヘモグロビンという色素のうち、どれくらいの割合が糖と結合しているかを示す検査値です。つまり、いつも血糖値が高い人はHbA1cが高くなり、血糖値が低い人はHbA1cが低くなります。
過去1-2ヶ月の血糖値の平均を反映して変動するので、血糖コントロールをすぐに反映するわけではありません。

例えば直近で数か月ほど食事療法を頑張ったりすると、HbA1cは改善しますが、前日や当日だけ食事を控えてもHbA1c値は改善はしないのです。

なぜHbA1cを測定するの?

血糖値は食事の影響で1日の中でも大きく変動します。一方、HbA1cは長期的な血糖コントロールの状態を教えてくれる、糖尿病患者さんの成績表のような役割を果たします。ですので多くのクリニック、病院ではこの値を測定し、治療に反映します。

HbA1cの特徴

  • 過去1〜2ヶ月の平均的な血糖状態を反映している
  • 直前の食事の影響を受けにくい
  • 糖尿病の診断や治療効果の判定に使用
  • 定期的な測定で血糖コントロールの経過が分かる

HbA1cの基準値と目標値

HbA1cには、診断のための基準値と、治療における目標値があります。

診断のための基準値

  • 正常値:4.6〜6.2%
  • 糖尿病型:6.5%以上
  • 境界型:5.7〜6.4%

治療における目標値

目標値は年齢や合併症の有無などによって個人差があります。

65歳未満の場合

  • 合併症予防や進展防止:7.0%未満

65歳以上の場合

  • 認知機能正常:7.0〜7.5%未満
  • 認知機能低下:8.0%未満
  • 重症低血糖のリスクが高い場合:8.0〜8.5%

HbA1cが高いとどうなる?

自覚症状として疲れやすさ、のどの渇き、頻尿、むくみ、体重の変化などが現れることがあります。

長期的な影響(合併症)

  • 網膜症:初期だと症状がなく、気づかないことも多いです。しかし放置しておくと失明の危険性もあります。
  • 腎症:尿から蛋白が漏れ出します。人工透析が必要になる可能性もあります。
  • 神経障害:最も早期からみられるといわれる合併症です。しびれや痛みが出現することがあります。
  • 動脈硬化:心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇につながります。

HbA1cを改善するには?

生活習慣の改善

1. 食事療法

  • 適切な食事量を把握し、それを実践することが大切です。
  • 栄養バランスの良い食事を心がけてください。
  • 規則正しい食事時間を守ることも重要です。

2.運動療法

  • 有酸素運動(ウォーキングなど)
  • 筋力トレーニング
  • 継続的な運動習慣

3.その他の生活習慣

  • 十分な睡眠も大切です。
  • ストレスは血糖コントロールに影響を与えます。リフレッシュ方法を用意しておきましょう。
  • 禁煙はすべてにおいて重要です。

薬物療法

生活習慣の改善でコントロールが不良な場合には必要に応じて薬物療法を行います。

HbA1c測定の頻度

一般的に以下のような頻度で測定します。

病状が安定している場合

1-3ヶ月に1回血液検査を行います。

治療開始時や治療変更時

1か月ごとに血液検査を行います。

HbA1cの偽低値、偽高値に注意

赤血球が体内で循環している中でヘモグロビンが血中のグルコースと結合し、糖化ヘモグロビンが作られます。総ヘモグロビンのうち糖と結びついているヘモグロビンの割合がHbA1cです。

HbA1c値は血液の状態によっては信頼できない値になることがあります。例えば、体に古い血液が多くある場合は、HbA1cは実際の値より高めに、新しい血液が多くある場合はHbA1cは実際の値より低めに出てしまうのです。

本来の値より高めに出る場合

高齢者や慢性的な貧血(鉄欠乏性貧血)があり、赤血球の寿命が長くなってしまっている状態です。つまり、新しい血液を作ることができず糖と結合している血液が長期間残ってしまうのです。ほか異常ヘモグロビン症、甲状腺機能亢進症、腎不全などの場合があります。

本来の値より低めに出る場合

赤血球寿命が短く新しい赤血球が増えている状態。

大量に輸血をした場合や大量に出血した場合は、体が血液を産生します。
また腎性貧血でエリスロポエチンという血液を作る薬剤を使用している場合、これは新しい血液が作られるため、糖と結合しているヘモグロビンが相対的に少なくなってしまうからです。

自覚がないのにHbA1cが高かったり低かったり変動した場合、上記のようなことがないかも確認、精査することが必要です。

HbA1c以外で調べることのある指標

グリコアルブミン(GA)や1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)などがあります。

グリコアルブミン

グリコアルブミンとは糖化アルブミンのことです。グリコアルブミンはアルブミンの半減期が17日であるためHbA1cよりも短い、3週間前から採血時までの平均血糖値を反映します。

1,5-アンヒドログルシトール(1.5-AG)

1,5-アンヒドログルシトール(1.5-AG)はグルコースに似た構造の単糖です。尿中の排泄によって量が調整されていますが、その再吸収がグルコースにより阻害されるため、血液中のグルコース値が腎臓の糖吸収閾値(約180mg/dl)を超えると、尿中に排泄されます。(つまり血液中の1.5-AGの濃度が低下します。)

 尿糖の排泄閾値よりも血糖値が上昇した場合に1.5-AGが低下するため、高血糖の有無を把握できます。こちらの値はHbA1cが比較的良好な方の食後高血糖などの血糖変動の有無を確認したい場合や初期の糖尿病など食後高血糖のみが優位な方の評価の際に有用とされています。

よくある質問

Q1: 食事の影響を受けますか?

A: HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均値を反映するため、検査当日の食事の影響はありません。空腹での採血は不要です。

Q2: 数値が改善するまでどのくらいかかりますか?

A: 生活習慣の改善や治療の効果は、約1〜2ヶ月で数値に反映されます。

Q3: 季節による変動はありますか?

A: 軽度の季節変動があり、夏に低く冬に高くなる傾向があるとはいわれていますが、おおむねあまり影響はありません。

まとめ

HbA1cは糖尿病の診断や治療効果を判定する重要な指標です。定期的な測定と適切な管理により、合併症の予防や進展防止が可能です。

数値が気になる方は、まずは当院での検査をおすすめします。あなたの生活スタイルに合わせた治療プランを提案いたします。お気軽にご相談ください。皆様の健康づくりを、私たちがしっかりサポートいたします。

丹野内科・循環器・糖尿病内科 047-711-6450 ホームページ