- 2025年4月17日
エコー(超音波)検査で何がわかる?内科医が解説する超音波検査の全知識

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。当院は2025年の2月から最新のエコー検査装置を導入いたしました。エコー検査は私の専門である心臓病に特に有効で欠かせない検査でありますが、今回はその「エコー検査」について詳しく解説します。
「エコー検査って何がわかるの?」「痛みはあるの?」「どんな準備が必要?」など、検査を受ける前に抱く疑問や不安は尽きないと思います。この記事では、そんな疑問にお答えしながら、エコー検査の基本からわかりやすく説明していきます。
目次

エコー検査とは?基本的な仕組みと特徴
エコー検査の基本
エコー検査とは、「超音波検査」とも呼ばれ、人間の耳では聞こえない高周波の音波を体内に送り、その反射(エコー)を画像化する検査法です。
私たちの体は、臓器や組織によって音波の反射率が異なります。例えば、水分を多く含む臓器(肝臓など)と空気を含む臓器(肺など)では反射の仕方が違います。この特性を利用して、体の中の様子を映し出すのがエコー検査の原理です。
エコー検査の特徴
エコー検査の優れた点は以下の通りです
- 被曝がない:X線やCTとは異なり、放射線被曝の心配がありません
- 痛みがない:体の表面から検査するため、基本的に痛みはありません
- リアルタイム:臓器の動きをリアルタイムで観察できます
- 繰り返し可能:安全性が高いため、何度でも検査できます
- 費用対効果:他の画像検査に比べて比較的安価です
一方で、以下のような限界もあります:
- 空気や骨に弱い:肺や骨などは超音波が通りにくく、鮮明な画像が得られません
- 検査者の技術に依存:検査を行う人の技術によって精度が変わることがあります
- 体型の影響:肥満の方では、超音波が深部まで届きにくいことがあります
日常診療では、これらの特徴を理解した上で、必要に応じて他の検査(Xp、CT、MRIなど)と組み合わせて診断を行います。

エコー検査で分かること(部位別)
エコー検査は様々な部位で行われ、それぞれ異なる情報が得られます。ここでは主な部位別に解説します。
心臓エコー
心臓エコー(心エコー)では、以下のような情報が得られます
- 心臓の大きさや形状 (心拡大の程度)
- 心臓の壁の厚さや動き(心筋肥大の程度)
- 弁の形状や機能 (弁膜症)
- 心臓の収縮力(心機能)
- 心臓内の血流状態
例えば、「階段を上るとすぐに息切れする」という症状の方に心エコーを行い、心機能や弁膜症の有無を調べます。
腹部エコー
腹部エコーでは以下の臓器を観察できます
肝臓
- 大きさや形状の異常
- 脂肪肝の有無
- 腫瘍の有無
- 肝硬変の有無
胆嚢
- 胆石の有無
- 胆嚢壁の肥厚(胆嚢炎の兆候)
- 胆嚢ポリープの有無
膵臓
- 膵炎の兆候
- 膵腫瘍の有無
- 膵管の拡張
腎臓
- 腎臓形態
- 腎結石の有無
- 水腎症(尿の流れが悪くなる状態)
- 腎臓の腫瘍や嚢胞
脾臓
- 脾臓の腫大(感染症や血液疾患の兆候)
大動脈・血管
- 大動脈瘤の有無
- 動脈硬化の程度
例えば、「最近、右上腹部に鈍い痛みがある」という症状の方の場合、エコー検査で胆のうや胆石、膵臓を重点的に観察を行います。
頸動脈エコー
頸動脈(首の動脈)エコーでは、以下のことがわかります
- 動脈硬化の程度
- プラーク(動脈壁にたまった脂質など)の有無
- 血管の狭窄(狭くなること)の程度
高血圧や脂質異常症、糖尿病の方では、頸動脈エコーを行い動脈硬化の程度を検査します。
甲状腺エコー
甲状腺エコーでは、以下のことがわかります
- 甲状腺の大きさや形状
- 結節(しこり)の有無と性状
- 甲状腺炎の有無
「健康診断で甲状腺腫大を指摘された。」と来院された方に、甲状腺エコーを行うことで、甲状腺結節や甲状腺炎が見つかることがあります。
甲状腺腫大に関しては以前のブログ「健康診断でよく指摘される甲状腺腫大。考えられる病気は?」をご覧ください。

エコー検査の事前準備
検査前の準備
エコー検査の種類によって、準備が異なります
腹部エコー
- 検査前6時間程度は食事を控える(空腹状態が望ましい。胃や腸に食物があると超音波が届かないため)
- 検査前の常用薬の服用に関しては別途医師と相談が必要
- 上下が分かれているお腹が開きやすい服装にする
心臓エコー
- 特別な準備は不要
- 常用薬の服用は医師の指示がない限り続けてOK
頸動脈エコー・甲状腺エコー
- 特別な準備は不要
エコー検査の種類と使い分け
体表エコー(経胸壁・経腹部など)
最も一般的なエコー検査で、プローブを体表から当てて行います。多くの内臓や血管の観察に用いられます。当院で行っているのもこのエコーです。
経食道エコー
心臓をより詳しく観察するために行われます。体表(経胸壁)からでは見えにくい心臓の場所も見ることができます。弁膜症や短絡疾患の詳細評価や心臓内の血栓評価などに効果的です。
経膣エコー
婦人科領域で女性の子宮や卵巣をより詳しく観察するために行われます。経腹エコーよりも鮮明な画像が得られることが特徴です。
経直腸エコー
泌尿器科で主に前立腺の観察に用いられ、経腹エコーよりも詳細な観察が可能です。
当院で行うのは、体表エコーのみです。

エコー検査で見つかる代表的な疾患
エコー検査では様々な疾患を発見することができます。以下に代表的なものを挙げます。
心臓・血管系
- 心不全:心臓のポンプ機能が低下した状態で、エコーでは心臓の収縮・拡張能や心筋肥大・心内腔拡大の程度を評価します
- 弁膜症:心臓の弁に異常がある状態で、エコーでは弁の動きや形状の異常、血流の乱れが観察されます
- 先天性心疾患:胎生期から心臓の壁に穴が開いている状態(心房中隔欠損症など)で血流を評価します
- 大動脈瘤:動脈硬化が原因で大動脈の一部が風船のように膨らんだ状態で、エコーでは拡張した血管として観察されます
甲状腺
- 甲状腺結節:甲状腺内に生じる腫瘤で、良性と悪性があります
- バセドウ病:自己免疫疾患の一種で、エコーでは甲状腺腫大と著名な血流増加を認めます
- 橋本病(慢性甲状腺炎):自己免疫疾患の一種で、エコーでは甲状腺の不均一な低エコー像を認めます
肝臓・胆道系
- 脂肪肝:肝臓に脂肪が蓄積した状態で、エコーでは肝臓が「明るく」映ります
- 胆石症:胆嚢内に結石ができる病気で、エコーでは音響陰影を伴う高エコー像として認められます
- 胆嚢ポリープ:胆嚢内面に生じる隆起性病変で、多くは良性ですが、大きさや形状によっては経過観察が必要です
- 膵臓疾患:膵炎や膵腫瘍などを検索します。深部にあるため消化管ガスによって描出が難しいこともあります
腎臓・泌尿器系
- 腎結石:腎臓内に結石ができる病気で、エコーでは強い反射(高エコー)と音響陰影を示します
- 水腎症:腎臓の尿路が閉塞して腎臓が水で膨らんだ状態で、エコーでは腎盂(じんう)の拡張として認められます

よくある質問(Q&A)
Q1: エコー検査は痛いですか?
A1: 基本的に痛みはありません。プローブを体に押し当てる際に、若干の圧迫感を感じることはありますが、痛みを伴うことは少ないです。もし痛みを感じたら、遠慮なくエコー術者にお伝えください。
Q2: エコー検査にはどのくらい時間がかかりますか?
A2: 検査部位や目的によって異なりますが、一般的な腹部エコーでは15〜20分程度、心臓エコーでは20〜30分程度かかることが多いです。当院では30分枠で一つの部位を行うように設定し、予約制としております。
Q3: 検査結果はすぐに分かりますか?
A3: 検査後に所見を整理して説明します。ただし、詳細な検査結果の解釈には、他の検査結果や臨床症状と合わせて総合的に判断する必要があるため、後日の診察で詳しく説明することもあります。
Q4: エコー検査で全ての病気が見つかりますか?
A4: エコー検査は安全で非常に有用な検査ですが、万能ではありません。小さな病変や部位によっては観察が難しいことがあります。また、被検者の体型によっても検出能が変わります。必要に応じてCTなど他の検査と組み合わせることで、より確実な診断が可能になります。
Q5: 妊娠中でもエコー検査は受けられますか?
A5: はい、エコー検査は放射線被曝がないため、妊娠中でも安全に受けることができます。むしろ、妊娠中の方には、胎児の発育状態を確認するためになじみが深い検査です。

まとめ
エコー検査は、体への負担が少なく、多くの情報を得られる非常に有用な検査方法です。放射線被曝がなく、痛みもないため、安心して受けていただけます。
特に以下のような場合には、エコー検査が有効です。
- 心臓の病気が疑われる
- 甲状腺腫大が疑われる
- 動脈硬化のリスクが高い
- 腹部の不快感や痛みがある
- 肝機能や腎機能の異常が指摘された
ただし、エコー検査にも限界があり、全ての疾患を発見できるわけではありません。症状や検査結果に応じて、他の検査(血液検査、CT、MRIなど)と組み合わせることで、より確実な診断が可能になります。
エコー検査について何か疑問やご希望があれば、遠慮なくご相談ください。患者さん一人ひとりにあった検査を提案いたします。