• 2025年7月3日

糖尿病の方が知っておきたい間食のコツ:血糖値に優しい選び方と食べ方

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉優希です。「甘いものが食べたくなった時、どうすればいいの?」「間食は絶対にダメなの?」 糖尿病と診断された患者様から、このようなご相談を受けることがよくあります。実は、糖尿病があっても間食を完全に諦める必要はありません。大切なのは、血糖値への影響を理解し、適切な選び方と食べ方を身につけることです。本記事では、糖尿病専門医の立場から、糖尿病の方でも安心して楽しめる間食の方法について詳しく解説いたします。

目次

  1. 糖尿病と間食の基礎知識
  2. 間食が血糖値に与える影響
  3. 糖尿病に配慮した間食の選び方
  4. 間食を楽しむための実践的なコツ
  5. よくあるご質問(Q&A)
  6. まとめ

糖尿病と間食の基礎知識

糖尿病における血糖コントロールの重要性

糖尿病の治療において最も重要なのは、血糖値を適切な範囲内に保つことです。血糖値は食事によって上昇し、特に糖質(炭水化物)を含む食べ物を摂取すると急激に上がることがあります。

間食も例外ではありません。実際に、多くの患者様が「ちょっとしたお菓子なら大丈夫だろう」と思って摂取した結果、思わぬ血糖値の上昇を経験されています。

間食が必要な場合もある

一方で、すべての間食が悪いわけではありません。以下のような状況では、むしろ間食が推奨される場合もあります。

  • 食事の間隔が長時間あく場合
  • 低血糖の予防や治療が必要な場合
  • 体重減少が問題となっている場合

間食が血糖値に与える影響

血糖値上昇のメカニズム

間食を摂取すると、食べ物に含まれる糖質が消化・吸収されて血糖値が上昇します。健康な方では、膵臓からインスリンが適切に分泌されて血糖値が調整されますが、糖尿病の方では以下のような問題が生じます。

インスリンの分泌不足:膵臓の機能低下により、十分なインスリンが分泌されない

インスリン抵抗性:インスリンが分泌されても効果が不十分

血糖値の持続的上昇:適切な調整ができず、高血糖状態が続く

間食による血糖値変動の実例

クリニックで実際に測定したデータをもとに、一般的な間食による血糖値変動の例をご紹介します。

  • クッキー2枚(約20g):食後1-2時間で血糖値が80-120mg/dL上昇
  • りんご1/2個(約100g):食後1-2時間で血糖値が30-50mg/dL上昇
  • ナッツ類15g:血糖値の上昇は10-20mg/dL程度と軽微

このように、同じ「間食」でも血糖値への影響は大きく異なります。

糖尿病に配慮した間食の選び方

血糖値を上げにくい間食の特徴

糖尿病の方におすすめできる間食には、以下のような特徴があります。

1. 糖質含有量が少ない

  • 10g以下が目安
  • 食品成分表示を確認する習慣をつけましょう

2. 食物繊維が豊富

  • 血糖値の急激な上昇を抑制
  • 満腹感も得られやすい

3. タンパク質を含む

  • 血糖値の安定化に寄与
  • 満足度も高く、また筋肉量の維持にも効果的

具体的なおすすめ間食

野菜系スナック

  • きゅうりやにんじんスティック
  • ミニトマト
  • 枝豆(塩分控えめ)

ナッツ・種子類

  • アーモンド(10粒程度)
  • くるみ(2-3個)
  • かぼちゃの種

タンパク質豊富な食品

  • 茹で卵1個
  • 無糖ヨーグルト(100g程度)
  • チーズ(15g程度)

海藻・こんにゃく系

  • 昆布
  • ところてん
  • こんにゃくゼリー(糖質ゼロタイプ)

避けた方が良い間食

以下のような間食は血糖値を急激に上昇させるため、できるだけ避けることが推奨されます。

  • 砂糖を多く含むお菓子:クッキー、ケーキ、チョコレートなど
  • 果汁100%ジュース:液体は吸収が早く血糖値が急上昇する
  • 白米系のスナック:おせんべい、おかきなど
  • ドライフルーツ:生のものより糖分が濃縮されている

間食を楽しむための実践的なコツ

タイミングを工夫する

昼間の活動量の多い時間帯や運動開始前:朝食や昼食のあと、また今後もエネルギー消費が見込まれるタイミングがベストです。

就寝前は避ける:就寝前の間食は血糖値を下げにくく、翌朝の空腹時血糖値に影響することがあります。

量をコントロールする

200kcal以下を目安に:1日のうちの間食は200kcal以下に抑えることが望ましいです。食品の栄養表示を確認し、ぜひご自身が食べている間食のカロリーがどれくらいか見てみてください。果物やヨーグルトであれば比較的沢山量を食べられます。

小分けパックを活用:大袋から直接食べると量の調整が困難です。あらかじめ小分けにしておくか、小分けパックの商品を選びましょう。

血糖値への影響を最小限にする工夫

よく噛んで食べる:咀嚼回数を増やすことで以下のような効果が得られます。

  • 満腹感が得られやすくなる
  • 血糖値の上昇が緩やかになる
  • 消化吸収が改善される

食物繊維と一緒に摂取:甘いものを食べたい時は、野菜などや食物繊維のサプリメントなどを先に摂取することで血糖値の急上昇を抑制できます。

水分も十分に摂取:間食と一緒に無糖の水やお茶を飲むことで、満腹感が得られ、食べ過ぎを防げます。

よくあるご質問(Q&A)

Q1: 血糖値が下がりすぎた時の間食はどうすればよいですか?

A: 低血糖(血糖値70mg/dL以下)の際は、速やかに血糖値を上げる必要があります。この場合は

  • ブドウ糖タブレット10-15g
  • 砂糖スティック1-2本
  • 100%果汁ジュース100-150ml

上記などを摂取し、15分後に血糖値を再測定してください。改善が見られない場合は追加摂取し、必要に応じて医療機関にご相談ください。

低血糖に関しては以前のブログ「糖尿病治療について。低血糖はなぜよくないの?」をご覧ください。

Q2: 人工甘味料を使った食品は血糖値に影響しませんか?

A: 人工甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)は一般的に血糖値への直接的な影響は少ないとされています。ただし、以下の点にご注意ください。

  • 個人差があること
  • 過度な摂取は消化器症状を引き起こす可能性が指摘されている
  • 甘味への依存をさらに高める可能性がある

適量であれば問題ありませんが、天然の食材を中心とした間食を心がけることが推奨されます。

Q3: 果物は糖分が多いから食べない方がよいでしょうか?

A: 果物を完全に避ける必要はありません。果物には以下のメリットがあります。

  • ビタミン・ミネラルが豊富
  • 食物繊維が含まれている
  • 抗酸化作用が期待できる

ただし、量と種類の選択が重要です。

  • おすすめ:ベリー類、キウイ、りんご(皮付き)
  • 注意が必要:バナナ、ぶどう、柿(糖度が高い)
  • 量の目安:1日80-100kcal程度(みかん1-2個相当)

Q4: 外出先で急に甘いものが食べたくなった場合の対処法は?

A: 外出先での急な甘味欲求への対処法をご紹介します。

準備できることは?

  • ナッツや昆布など、血糖値への影響が少ない間食を携帯する
  • 無糖ガムやミントタブレットで代用

コンビニでの選択肢は?

  • 無糖ヨーグルト
  • ナッツ類(無塩・無糖)
  • ゼリー(糖質ゼロ)
  • 茹で卵

カフェでの選択肢

  • ブラックコーヒーや無糖紅茶
  • 豆乳ラテ(砂糖抜き)

Q5: 間食の記録はつけた方がよいでしょうか?

A: はい、記録をつけることを強くお勧めします。記録によりどの食品が血糖値にどの程度影響するか、自分に適した間食の種類と量、食べるタイミングと血糖値変動の関係などがわかります。

記録項目の例:

  • 摂取時刻
  • 食品名と量
  • 摂取前後の血糖値(測定可能な場合)
  • 体調や気分

この記録は診察時に非常に有用な情報となりますので、ぜひご持参ください。

まとめ

糖尿病の方でも、適切な知識と工夫があれば間食を楽しむことは十分可能です。重要なポイントを改めて整理します。

選び方のポイント

  • 糖質10g以下、トータルで200kcal以下を目安とする
  • 食物繊維やタンパク質を含む食品を選ぶ
  • 加工度の低い天然食材を優先する

食べ方のコツ

  • 日中で食事のあとや運動前などのタイミングで摂取
  • よく噛んでゆっくりと食べる
  • 水分と一緒に摂取する

記録と観察

  • 間食の内容と血糖値の変化を記録
  • 個人差を理解し、自分に適した方法を見つける
  • 定期的に医師と相談し、調整を図る

糖尿病の管理は決して我慢の連続ではありません。正しい知識をもとに、QOL(生活の質)を保ちながら血糖コントロールを行うことが可能です。ご不明な点やご心配なことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。患者様一人ひとりの生活スタイルに合わせた、実践可能なアドバイスをご提供いたします。

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