• 2025年2月6日

今年は花粉の飛散量3倍!?効果的な花粉症対策、治療は?

こんにちは、丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回は最近受診される方が少しずつ増えてきた花粉症の話です。なんと今年は例年の飛散量の3倍と言われています!!

私も含めて花粉症でお悩みの方にとって、つらい季節がやってきました。昨年と比較して今年は花粉の飛散量が大幅に増加すると予測されています。花粉症でお悩みの方にとって、より効果的な対策が必要となってきます。今回は最新の医学的知見に基づいた花粉症対策をご紹介いたします。つらい症状に悩まされる前に、しっかりとした対策を立てていきましょう。

目次

今年の花粉飛散予測と特徴

飛散量増加の原因

今年の花粉飛散量が増加する主な要因として、気象条件が大きく影響しています。具体的には以下のような要因が挙げられます。

  • 昨年夏の気温が平年より1.5度以上高く、日照時間が平年比120%と長かったことによる花芽の形成促進
  • 秋の降水量が平年の95%と花粉生成に適していたこと
  • 気候変動の影響による花粉シーズンの長期化
  • 前年の台風の影響が少なく、スギ・ヒノキの木々へのダメージが限定的だったこと

これらの要因が重なり、例年にない飛散量となることが予測されています。

地域別の飛散予測

関東地方、特に千葉県では例年の約3倍の飛散量が予測されています。当クリニックがある松戸市周辺では、以下のようなスケジュールで花粉の飛散が予測されています。

  • 2月上旬:スギ花粉の飛散開始
  • 2月下旬~3月:スギ花粉の飛散のピーク
  • 4月:ヒノキ花粉の飛散ピーク
  • 5月上旬まで:断続的な飛散の継続

特に今年は、例年よりも飛散開始時期が早まる可能性があり、早めの対策が重要となってきます。

花粉症の基礎知識

アレルギー反応のメカニズム

花粉症は、体内の免疫システムが花粉に過剰に反応することで引き起こされます。

1. 一次反応

  • 花粉が体内に侵入
  • 免疫システムがIgE抗体を産生
  • マスト細胞への結合

2. 即時型アレルギー反応

  • ヒスタミンなどの化学物質の放出
  • くしゃみ、鼻水などの即時症状
  • 炎症反応の惹起

3. 遅発型アレルギー反応

  • 好酸球などの炎症細胞の集積
  • 鼻づまりなどの持続的な症状
  • 過敏性の亢進

効果的な薬物療法

症状別におすすめの薬

花粉症の症状は人によって異なり、それぞれの症状に適した薬剤を選択することが重要です。

1. くしゃみ・鼻水が主症状の方

  • 第2世代抗ヒスタミン薬:一番多く使われる薬。眠気が少なく、1日1回の薬もあるため、日常生活への影響が最小限
  • ステロイド点鼻薬:炎症を抑制し、総合的な症状改善に効果的(局所投与なのでステロイドの全身投与のような副作用が少ない)

2. 鼻づまりが主症状の方

  • ロイコトリエン受容体拮抗薬:炎症を抑え、鼻づまりを改善
  • ステロイド点鼻薬
  • 血管収縮薬(点鼻薬):即効性があるが、使用期間に注意が必要(薬剤性鼻炎を惹起する可能性あり)
  • 第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤 (血圧や血糖コントロールが悪い方は注意必要)

3. 目のかゆみが強い方

  • 抗アレルギー点眼薬:かゆみや充血を抑制
  • 人工涙液:目の乾燥を防ぎ、花粉の洗い流しに効果的
  • ステロイド点眼薬:重症例に対して短期間のみ

4. 重症のスギ花粉症に対して

  • 抗IgE抗体療法

服薬のタイミングと注意点

花粉症の薬は、症状が出てから服用するよりも、飛散開始前から予防的に服用する方が効果的です。具体的なおすすめの服用スケジュールは以下の通りです。

  • 飛散開始2週間前:予防投薬の開始
  • 飛散期間中:定期的な服用の継続
  • 症状悪化時:相談の上、薬剤の調整

つまり毎年症状が強い方は、現時点で内服を開始するのがよいと考えられます。

服用時の注意点

  • 抗ヒスタミン薬と眠気の関係 (最近は眠気の少ない抗ヒスタミン薬も開発されていますが、感じ方は人それぞれですので、ご相談ください。)
  • 妊娠・授乳中の方は主治医に相談
  • 持病がある方は薬の相互作用に注意

生活習慣での対策

外出時の対策

外出時は以下のような対策を組み合わせることで、花粉との接触を最小限に抑えることができます。

1. 服装選び

  • 花粉が付きにくい素材(ナイロンなど)の選択
  • 静電気を防ぐ工夫
  • 洗濯方法の工夫(外干しをやめる)

2. 防御アイテム

  • 花粉対策メガネ:側面からの花粉侵入も防ぐタイプを選択
  • マスクの正しい装着:隙間をなくし、フィット感を重視
  • 帽子:髪の毛についた花粉の室内持ち込みを防止
  • 花粉防止スプレー:衣類や髪への花粉付着を軽減

3. 行動の工夫

  • 天気予報・花粉情報のチェック
  • 外出時間の調整(花粉飛散の多い時間帯を避ける)

室内での対策

室内環境の整備も花粉症対策の重要なポイントです。

1. 換気とフィルター

  • 換気のタイミング:花粉の少ない時間帯を選ぶ
  • 空気清浄機の効果的な使用:フィルターの定期的な清掃・交換
  • エアコンフィルターのメンテナンス

2. 掃除と洗濯

  • 掃除機の頻度増加
  • 結露対策による室内環境の改善
  • 寝具の定期的な洗濯・乾燥
  • 玄関マットの活用

3. 加湿と温度管理

  • 適切な湿度管理(40-60%)
  • 室温の調整(20-25度)
  • 加湿器の使用による粘膜保護

花粉症とかぜ症候群(ウイルス感染)の見分け方

花粉症シーズンになると花粉症だと思ったら、上気道炎やコロナウイルス感染症だったということが時折経験されますのでその簡単な見分け方を記載します。両者の症状は一部重複することがありますが、以下のような特徴的な違いがあります。

花粉症の特徴

  • かゆみを伴う症状(目、鼻、喉)
  • 症状の日内変動
  • 気温や天候との関連
  • 発熱は基本的になし

かぜ症候群の特徴

  • 発熱(37.5度以上)
  • 倦怠感
  • 咽頭痛や咳とともに鼻水が出る

症状判別のポイント

  • 過去の花粉症既往歴との比較
  • 症状出現の経過観察
  • 周囲の感染状況確認
  • 体温測定の習慣化

受診の判断基準

特に花粉症がひどい方などはわかりづらいことがあるかと思いますので、特に下記のような症状がある方はお気軽にご相談ください。

  • 普段の花粉症と異なる症状がある
  • 発熱が続く
  • 息苦しさを感じる
  • 強い倦怠感がある

当院での花粉症治療について

診察・治療の特徴

当院では、患者様一人一人に合わせた治療を提供しています。

1. 初診時の詳細問診

  • 問診による症状の正確な把握
  • アレルギー検査(必要に応じて)

2. 治療方針の決定

  • 症状の程度に応じた薬剤選択
  • 生活習慣の改善アドバイス
  • 長期的な対策立案

3. 定期的なフォローアップ

  • 症状経過の確認
  • 薬剤の効果評価
  • 必要に応じた処方調整

処方日数についてですが、アレルギー性鼻炎歴が長くて毎年同じ薬で症状が落ち着く方は長期処方も可能です。自分に合った薬がわからないという方やステロイドを含んだ内服や血管収縮の点鼻薬が必要な方は副作用もありますので短期処方が無難だと思います。

舌下免疫療法(減感作療法)について

当院では現時点では行っていませんが、舌下免疫療法(減感作療法)についても簡単に触れたいと思います。免疫療法は、根本的な体質改善を目指す治療法です。アレルギーの原因物質を含んだ錠剤を1日1回舌下投与することにより体質改善を目指します。体を徐々にアレルギー物質に慣らしていくイメージです。

舌下免疫療法の特徴

  • 現時点ではスギ花粉とダニに対するアレルギーのみ
  • 治療期間:3-5年
  • 80%以上の方に有効性が期待できる(現時点何年続くかははっきりとしたデータはないようです。)
  • 効果の持続:治療終了後も効果が持続
  • 適応:軽症~重症

メリット

  • 根本的な体質改善
  • 長期的な症状軽減
  • 薬物療法への依存度低下

デメリット

  • 治療期間が長い
  • 定期的な通院が必要
  • スギ花粉とダニ以外には効果がない(ヒノキにはあまり効果が期待できない)

まとめ

今年は例年の3倍という花粉飛散量が予測されているため、早めの対策開始が重要です。症状や生活スタイルに合わせた適切な対策を選択することで、花粉症のつらい症状を最小限に抑えることができます。

当院では、患者様一人一人の症状や生活環境に合わせた最適な治療をご提案いたします。花粉症でお悩みの方は、お早めにご相談ください。快適な春を過ごすためのサポートをさせていただきます。

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