- 2025年7月24日
発熱と関節痛が同時に起こる原因と対処法|松戸市の内科医が詳しく解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。以前発熱と頭痛に関するブログも書きましたが、今回は発熱と関節痛に関する話です。突然の発熱に加えて関節の痛みを感じると、「何か重い病気かもしれない」と不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。発熱と関節痛は、実は多くの病気で同時に現れる症状です。風邪やインフルエンザのような身近な感染症から、膠原病のような専門的な治療が必要な病気まで、その原因は多岐にわたります。この記事では、松戸市で内科クリニックを開業している内科専門医として、発熱と関節痛が起こる仕組みや主な原因、そして適切な対処法について、分かりやすくお伝えします。症状に悩んでいる患者様やご家族の不安を少しでも軽減し、適切な医療機関受診の判断材料としていただければ幸いです。
目次

発熱と関節痛のメカニズム
発熱が起こる仕組み
発熱は、体が外敵(ウイルスや細菌など)と戦うための自然な防御反応です。体温が上昇することで、免疫システムが活性化され、病原体の増殖を抑制する効果があります。脳の視床下部という部分が体温調節の司令塔として働いており、炎症性物質(サイトカイン)の刺激を受けると、体温の設定値を上げて発熱を引き起こします。
関節痛が起こる仕組み
関節痛は、関節周囲の組織に炎症が起こることで生じます。発熱時に関節痛が現れる理由として、以下のようなメカニズムが考えられています。
- 炎症性物質の影響:発熱を引き起こす炎症性物質が、関節周囲の組織にも影響を与える
- 免疫反応による炎症:感染症や自己免疫疾患により、関節組織が炎症を起こす
- 筋肉の緊張:発熱時の震えや体調不良により、関節周囲の筋肉が緊張する
たとえば、インフルエンザの際に感じる全身の関節痛は、ウイルス感染に対する免疫反応の結果として現れる症状です。

主な原因疾患
発熱と関節痛が同時に現れる主な原因を、頻度の高いものから順にご説明します。
感染症
ウイルス感染症
- インフルエンザ:38℃以上の高熱と全身の関節痛が特徴的
- COVID-19:発熱、関節痛、筋肉痛が初期症状として現れることがある
- リンゴ病(パルボウイルスB19):大人のリンゴ病では関節痛が特徴的な症状
- 風邪症候群:軽度の発熱と関節の違和感程度のことが多い
細菌感染症
- 溶連菌性扁桃炎:のどの痛みに加えて発熱と関節痛を伴うことがある
- 細菌性肺炎:呼吸器症状に加えて全身症状として関節痛が現れる場合がある
膠原病・自己免疫疾患
関節リウマチ
- 朝のこわばりと関節痛が特徴
- 微熱が続くことがある
- 複数の関節に対称的に症状が現れる
全身性エリテマトーデス(SLE)
- 発熱、関節痛、皮疹が主要症状
- 若い女性に多く見られる
- 症状の良い時期と悪い時期を繰り返す
その他の原因
薬剤性発熱
- 特定の薬剤による副作用として発熱と関節痛が現れる
- 抗生物質、解熱鎮痛剤、降圧剤などが原因となることがある
悪性腫瘍
- 血液のがんや固形がんに伴い、発熱と関節痛が現れることがある
- 原因不明の発熱が続く場合は精密検査が必要

症状の特徴と見分け方
感染症による症状の特徴
急性発症
- 数時間から1日程度で症状が急激に現れる
- 発熱は38℃以上になることが多い
- 全身倦怠感、頭痛を伴うことが多い
一時的な症状
- 適切な治療により1週間程度で改善することが多い
- 関節痛は発熱とともに軽減される傾向がある
膠原病による症状の特徴
慢性経過
- 数週間から数か月にわたって症状が続く
- 微熱(37℃台)が続くことが多い
- 朝のこわばりや関節の腫れを伴うことがある
再発性
- 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す
- ストレスや疲労により症状が悪化することがある
症状の観察ポイント
患者様ご自身で症状を観察される際は、以下の点に注目してください
- 発症のタイミング:いつから症状が始まったか
- 発熱の程度と推移:最高体温と熱の持続時間
- 関節痛の部位:どの関節が痛むか、対称性があるか
- その他の症状:のどの痛み、咳、皮疹、朝のこわばりなど
- 日常生活への影響:食事摂取や睡眠への影響

家庭でできる対処法
安静と十分な休養
発熱と関節痛がある場合、まず大切なのは十分な休養を取ることです。
具体的な方法
- 仕事や学校は休み、自宅で安静にする
- 睡眠時間を通常より多く確保する(8-10時間程度)
- 激しい運動や重労働は避ける
水分補給
発熱により体内の水分が失われやすくなるため、積極的な水分補給が重要です。
推奨される飲み物
- 常温の水や白湯
- 経口補水液やスポーツドリンク(糖分に注意)
- 温かいお茶やスープ
避けたい飲み物
- アルコール類
- カフェインの多い飲み物(大量摂取時)
- 極端に冷たい飲み物
適切な解熱・鎮痛対策
市販薬の使用
- アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤が効果的
- 用法・用量を守って使用する
- アレルギーや既往歴がある場合は薬剤師に相談
物理的な冷却
- 首筋や脇を冷たいタオルで冷やす
- 氷枕の使用(長時間の使用は避ける)
- 室温を適切に調整する
関節痛の軽減方法
温熱療法
- 温かいタオルやホットパックで関節を温める
- 入浴時はぬるめのお湯でゆっくりと温まる
- 炎症が強い場合は冷却も効果的
軽い運動
- 関節の可動域を維持するための軽いストレッチ
- 痛みが強い場合は無理をせず安静にする

医療機関を受診すべきタイミング
以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。
緊急性の高い症状
すぐに受診が必要な症状
- 39℃以上の高熱が続く
- 呼吸困難や胸痛がある
- 意識がもうろうとする
- 激しい頭痛や首の痛み
- 皮疹や出血斑が現れる
- 水分摂取ができない
数日以内に受診を検討すべき症状
早めの受診が推奨される症状
- 発熱が3日以上続く
- 関節の腫れや赤みがある
- 朝のこわばりが1時間以上続く
- 複数の関節に症状がある
- 体重減少や食欲不振が続く

よくある質問(Q&A)
Q1: 発熱と関節痛があるとき、お風呂に入っても大丈夫ですか?
A1: 軽度の発熱(37℃台)で全身状態が良好な場合は、短時間の入浴は問題ありません。ただし、38℃以上の高熱がある場合や、強い倦怠感がある場合は、入浴は控えることをお勧めします。入浴後は体温が上昇しやすいため、水分補給を忘れずに行ってください。
Q2: 市販の解熱鎮痛剤はどのくらいの期間使用しても大丈夫ですか?
A2: 市販の解熱鎮痛剤は、一般的に数日程度の短期使用が安全とされています。それ以上の期間使用が必要な場合や、効果が不十分な場合は、医療機関での診察を受けることをお勧めします。また、胃腸障害や腎機能に問題がある方は、使用前に医師や薬剤師にご相談ください。
Q3: 関節痛があるときは運動を控えるべきですか?
A3: 急性期で関節に腫れや熱感がある場合は、激しい運動は控えることが推奨されます。しかし、関節の可動域を維持するための軽いストレッチや関節運動は、痛みが許す範囲で行うことが大切です。症状が改善してきたら、徐々に活動量を増やしていくことが理想的です。
Q4: 膠原病の可能性がある場合、どのような検査が行われますか?
A4: 膠原病が疑われる場合、血液検査で炎症反応(CRP、ESR)、自己抗体(リウマトイド因子、抗核抗体など)などが行われることが一般的です。症状や検査結果に応じて、さらに詳しい検査や専門医への紹介が検討されます。早期診断により適切な治療を開始することで、症状の進行を抑えることが可能です。

まとめ
発熱と関節痛が同時に現れる症状について、原因から対処法まで詳しくお伝えしました。
重要なポイント
- 多くは感染症が原因:インフルエンザや風邪などの感染症による症状が最も一般的
- 慢性的な症状は要注意:数週間以上続く場合は膠原病などの可能性も考慮が必要
- 適切な初期対応:安静、水分補給、適切な解熱鎮痛対策が基本
- 受診のタイミング:高熱の持続、重篤な症状がある場合は速やかに受診
- 自己判断の限界:症状が長引く場合や不安な場合は医療機関での相談が重要
症状に悩まれている患者様は、一人で抱え込まずに、ぜひお気軽に当院にご相談ください。発熱や関節痛の経過をお聞きして適切に治療、必要に応じて連携医療機関に紹介いたします。何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。