- 2025年8月9日
効果的な熱中症対策:正しい知識を手に入れて熱中症を予防しよう!

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。灼熱の暑さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?。クリニックがある松戸市も連日熱中症警戒アラートが発表されています。当院にも、「熱中症にならないためにはどうしたらいいの?」「日常生活でできる対策を知りたい」というご相談を多くいただきます。熱中症は正しい知識と適切な対策により、十分に予防できる病気です。本記事では、内科専門医の立場から、最新のガイドラインに基づいた科学的根拠のある実践的な熱中症対策について詳しく解説いたします。日常生活ですぐに実践できる方法を中心に、皆様の健康維持にお役立ていただければと思います。
目次

熱中症対策の基本的な考え方
熱中症対策の3つの柱
効果的な熱中症対策は、以下の3つの要素を組み合わせることが重要とされています。
1. 体温上昇の予防:環境温度をコントロールし、適切な服装を心がけることが重要です。
2. 脱水と電解質バランスの維持:水分と塩分の適切な補給により、体内の電解質バランスを維持します。特に経口補水液の重要性が注目されています。
3. 早期発見と予防的対応:4段階分類(I度~IV度)『熱中症診療ガイドライン2024』に基づく症状の早期発見と、予防を最優先とした対応が重要です。
熱中症の症状や重症度分類に関しては以前のブログ「【内科医が解説】熱中症の症状を見逃さないために知っておきたい基礎知識と対処法」をご覧ください。
熱中症対策が特に重要な時期と条件
時期的要因
- 梅雨明け直後(体が暑さに慣れていない時期)
- 気温が30度以上、湿度が70%以上の日
- 前日との温度差が5度以上ある日
環境的要因
- 直射日光が強い屋外
- 風通しの悪い屋内
- エアコンが効いていない車内や室内
- 湿度が高い場所
予防を重視した新しい考え方
最近では、「治療より予防」の考え方がより強調されています。軽度の症状が現れる前に、適切な予防対策を実施することで、重篤な状態を防ぐことができます。

日常生活でできる効果的な熱中症対策
水分補給の科学的根拠に基づく方法
基本的な水分補給の考え方
「のどが渇く前の水分補給」が重要です。のどの渇きを感じる時点で、すでに軽度の脱水状態になっています。
推奨される水分補給のタイミングと量
- 起床時:コップ1杯の水(200ml)
- 食事前:コップ半分程度(100ml)
- 外出前:コップ1杯の水(200ml)
- 外出中:30分~1時間ごとに100~200ml
- 帰宅後:失った水分を補給
- 就寝前:コップ半分程度(100ml)
効果的な水分補給のコツ
- 温度管理
- 5~15度程度の適温が吸収率が高い
- 氷水は胃腸に負担をかけるため避ける
- 適切な摂取方法
- 一度に大量に飲むと胃に負担
- 少量ずつ、こまめに摂取
- 電解質の重要性
- 大量の汗をかいた時はミネラル補給も重要と考えられていますが、高血圧の方は注意が必要です。
- 経口補水液が効果的と考えられていますが、日本人はもともと塩分摂取量が多いので、通常の食事をとっている方は、意識的に塩分摂取を増やす必要はないとも言われています。
おすすめの飲み物
- 日常的:水、麦茶(カフェインレス)
- 運動時:経口補水液、スポーツドリンク(薄めて使用も可)
避けるべき飲み物
- アルコール類(利尿作用により脱水促進)
- カフェインを多く含む飲料(コーヒー、紅茶等)
- 炭酸飲料(一時的な満腹感で水分補給が不十分になる可能性)
環境管理による熱中症対策
室内環境の最適化
環境管理も非常に重要です。
- 室温:26~28度
- 湿度:50~60%
- 風通し:扇風機やサーキュレーターとの併用
- 遮光:カーテンやすだれで日差しを遮る
エアコンの効果的な使用法
エアコンの使用は、熱中症対策の最も重要な要素の一つです。特に高齢者はエアコンを嫌がる傾向にあるので積極的に利用しましょう。
- 設定温度:26~28度
- 運転開始:外気温が28度を超えたら使用開始
- 夜間使用:就寝時も適切に使用
- 電気代を心配せず、健康を最優先に
エアコンが使用できない場合の対策
- 扇風機を活用して空気の流れを作る
- 打ち水で周辺温度を下げる(朝夕の涼しい時間帯)
- 遮光カーテンで直射日光を遮る
- 涼しい公共施設(図書館、商業施設等)の利用
服装と身体冷却による対策
適切な服装選び
服装選びのポイント
- 色の効果
- 白や薄い色の服装で熱の吸収を30%減少
- 黒い服は太陽光を吸収し体温上昇の原因
- 素材の選択
- 綿や麻などの天然素材
- 吸汗速乾性、接触冷感などの機能性素材
- 通気性の良いメッシュ素材
- 服装の工夫
- 襟元や袖口を緩めて風通しを良くする
- 帽子で直射日光を避ける
- 日傘の活用(紫外線95%以上カット、体感温度を下げる)
効果的な身体冷却方法
日常生活で簡単にできる身体冷却法
- 冷却ポイント:首、脇の下、鼠径部
- 冷却グッズ:冷却タオル、保冷剤、冷感スプレー
- 入浴方法:ぬるめのシャワーや入浴で体温を下げる
食事による熱中症対策
水分の多い食品の活用
食事からの水分補給も重要な対策です
- 果物:スイカ、メロン、桃(水分含有量90%以上)
- 野菜:きゅうり、トマト、レタス
- 料理:冷奴、冷やし中華、そうめん
- 汁物:味噌汁、スープ(塩分には注意)
栄養バランスを考えた食事
- ビタミンB1(豚肉、うなぎ):疲労回復効果
- ビタミンC(柑橘類、野菜):抗酸化作用
- カリウム(バナナ、野菜):電解質バランスの維持
避けるべき食品
- 高脂肪、高カロリー食品(消化にエネルギーを消費)
- 極端に冷たい食べ物(胃腸に負担)
- 塩分の摂りすぎ(適度な摂取が重要)

シチュエーション別の具体的な対策方法
屋外作業・運動時の対策
事前準備
- 作業開始2時間前に500ml程度の水分摂取
- 気温・湿度の確認
- 必要な物品の準備(水分、ミネラル補給品、冷却グッズ)
作業中の対策
- 30分作業、15分休憩のサイクル
- 日陰での休憩を必ず取る
- 水分補給のタイマー設定(15~30分ごと)
- 体調のセルフチェック
作業後のケア
- 涼しい場所でゆっくり休む
- 失った水分の補給
- 軽いシャワーで体温を下げる
車内での対策
駐車時の工夫
- 可能な限り日陰に駐車
- サンシェードやカーテンで日差しを遮る
- 窓を少し開けて空気の流れを作る
運転時の注意
- 乗車前に車内の熱気を逃がす
- エアコンを効率的に使用
- 長時間運転の場合は1時間ごとに休憩
- 水分補給用品を常備
自宅での対策
リビング・寝室
- エアコンの適切な使用(26~28度設定)
- 扇風機との併用で空気の循環
- 遮光カーテンで日差しカット
台所
- 火を使う時間を短縮
- 換気扇の使用
お風呂場
- 換気を十分に
- ぬるめのお湯での入浴
- 入浴前後の水分補給
外出時の対策
時間帯の選択
- 午前10時~午後4時の外出を避ける
- 早朝や夕方の涼しい時間帯を選ぶ
持ち物の準備
- 水筒やペットボトル
- 日傘や帽子
- 冷却グッズ
移動時の工夫
- 地下道や建物内を通るルートを選ぶ
- 公共交通機関をうまく活用
- 定期的な休憩場所の確保

特別な配慮が必要な方への対策
高齢者の熱中症対策
高齢者は熱中症のリスクが特に高いため、より注意深い対策が必要です。
生理的変化への理解
- のどの渇きを感じにくい
- 発汗機能の低下
- 体温調節機能の低下
- 暑さに対する感覚の鈍化
具体的な対策
- 水分管理
- 1日の水分摂取量を設定
- 起床時・食事前・就寝前の定期摂取
- 環境管理
- 室温を26~28度に維持
- 温度計・湿度計を見やすい場所に設置
- 24時間の適切な室温管理
- 見守り体制
- 家族による定期的な確認
- 近所の方との連絡体制
乳幼児・子どもの熱中症対策
子どもの特徴を理解した対策
- 体重に対する体表面積が大きく熱を受けやすい
- 体温調節機能が未熟
- 症状を正確に訴えられない
保護者の方へのアドバイス
- 観察ポイント
- 機嫌が悪い、ぐずりが続く
- 食欲がない、水分を拒否する
- 顔が赤い、汗をかいていない
- 活動量が明らかに減少
- 対策方法
- ベビーカーの高さでの気温に注意(地面から近いほど温度が高くなります)
- 水分補給は少量ずつ頻繁に
- 外出時間の調整(午前10時~午後4時を避ける)
- 車内に絶対に残さない
基礎疾患をお持ちの方への対策
糖尿病の方
- 脱水により血糖値が上昇しやすい
- 主治医と相談の上、水分補給方法を設定(清涼飲料水は特に注意が必要)
- 血糖値の変動に注意
心・腎疾患の方
- 水分・塩分・カリウム制限がある場合は主治医と相談
- 急激な温度変化を避ける
- 症状(胸痛、動悸、息切れ、浮腫)の変化に注意
- 尿量の変化にも注意
- 定期的な体重測定

よくある質問(Q&A)
Q1. 熱中症対策で重要なことは何ですか?
A: 以下の3点が重要です。
- 予防が最優先:のどが渇く前の水分補給と環境管理
- 早期発見:軽度の症状(めまい、立ちくらみ、大量の発汗)を見逃さない
- 継続的な対策:一時的ではなく、夏期間を通じた継続的な対策
特に、症状が出る前の予防的な水分補給と環境管理が最も効果的です。
Q2. エアコンの電気代が心配です。他に効果的な方法はありますか?
A: エアコンと組み合わせることで効果的な方法があります。
- 扇風機やサーキュレーターで空気の流れを作る
- 遮光カーテンやすだれで日差しを遮る
- 打ち水で周辺温度を下げる
- 涼しい公共施設(図書館、商業施設など)を活用
上記を組み合わせることが有効でありますが、近年の暑さはエアコンの使用が不可欠であるので、健康最優先でお願いします。
Q3. 室内にいても熱中症対策は必要ですか?
A: はい、室内でも熱中症対策は必要です。実際に、熱中症患者の約4割は住宅内で発症しているという報告があります。
以下の場所では特に注意が必要です。
- 風通しの悪い部屋
- 西日が当たる部屋
- 台所(火を使う場所)
室温28度、湿度60%を超える環境では積極的にエアコンを使用してください。
Q4. 高齢者の家族がいます。特に注意することは?
A: 高齢者は症状を自覚しにくいため、周囲の方の見守りが重要です。以下に注意してください。
環境管理
- 室温を26~28度に維持
- 温度計を見やすい場所に設置
- エアコンを適切に使用
水分管理
- 時間を決めた水分補給
- 経口補水液も検討
見守り
- 1日3回以上の声かけ
- 体調の変化に注意
- 緊急時の連絡体制を確保

まとめ
効果的な熱中症対策について書き連ねましたが、いかがだったでしょうか?
重要なポイント
- 予防が最優先:症状が出る前の継続的な対策
- 水分補給:のどが渇く前の定期的な摂取
- 環境管理:室温26~28度、適切なエアコンの使用 (電気代より健康が大切)
- 早期発見:軽度の症状を見逃さない観察
日常生活で実践すべき対策
- 時間を決めた水分補給
- 適切な服装と環境調整
- シチュエーションに応じた対策の実施
- 高齢者や子どもへの特別な配慮
熱中症は予防可能な病気です。適切な対策を日常生活で実践することで、安全で快適な夏を過ごしましょう。この記事が皆様の健康管理の一助になることを願っています。
参考