- 2026年1月21日
ベムペド酸 (ネクセトール)とは?新しいコレステロール治療薬を循環器専門医が解説
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回は新しく発売されたコレステロールを下げる薬についての話題です。
コレステロール値が高いと指摘されたものの、スタチン系薬剤で筋肉痛などの副作用が出てしまい、治療を続けられなかった経験はありませんか?近年、そうした患者様の新たな選択肢として「ベムペド酸 (商品名:ネクセトール)」という薬剤が登場しました。
この記事では、循環器専門医の立場から、ベムペド酸の特徴や効果、従来の治療薬との違い、どのような方に適しているのかなどを、わかりやすく解説いたします。コレステロール管理にお悩みの方、スタチンが使えずに困っている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
- ベムペド酸(ネクセトール)とは何か
- ベムペド酸の作用メカニズム
- 従来のスタチン系薬剤との違い
- ベムペド酸が適している患者様
- 期待される効果と臨床データ
- 副作用と注意点
- 服用方法と日常生活での注意事項
- よくある質問(Q&A)
- まとめ

ベムペド酸 (ネクセトール)とは何か
ベムペド酸 (ネクセトール)は、2025年11月に発売された新しいコレステロール低下薬です。商品名は「ネクセトール」といい、1日1回の内服で効果を発揮します。
現在コレステロール治療の第一選択薬として広く使用されているのは「スタチン系薬剤」です。もちろん第一選択としてスタチンは揺らぐことはありませんが、筋肉痛などの副作用があり、一部の患者様では継続が難しいケースがありました。ベムペド酸は、そうした課題を解決する新たな治療選択肢として期待されています。
スタチンに関しての詳細は以前のブログ「高コレステロール血症のゴールデンスタンダード!スタチンとは?」をご覧ください。
高コレステロール血症と心血管疾患のリスク
コレステロール値、特にLDLコレステロール (いわゆる「悪玉コレステロール」) が高い状態が続くと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な心血管疾患のリスクが高まります。
例えば、LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管壁にコレステロールが蓄積し、徐々に血管が狭くなったり、詰まりやすくなったりします。これは、水道管の内側に錆が付着して水の流れが悪くなる状況に似ています。
だからこそ、適切な薬物療法でコレステロール値をコントロールすることが、将来の健康を守る上で非常に重要なのです。
脂質異常症が引き起こす心血管リスクの詳細は以前のブログ「脂質異常症が引き起こす心筋梗塞のリスク|循環器専門医が解説する予防と対策」をご覧ください。

ベムペド酸の作用メカニズム
ベムペド酸は、体内でのコレステロール合成を抑制する薬剤ですが、スタチンとは異なる作用点を持っています。
ATPクエン酸リアーゼ (ACL) の阻害
ベムペド酸は「ATPクエン酸リアーゼ (ACL)」という酵素を阻害することで、肝臓でのコレステロール合成を抑えます。この酵素は、コレステロールを作り出す過程の上流に位置しており、ここをブロックすることで効果的にコレステロール産生を減少させます。
肝臓特異的な作用
ベムペド酸の大きな特徴は、主に肝臓で活性化されるという点です。そのため、筋肉などの他の組織への影響が少なく、筋肉痛などの副作用が起こりにくいと考えられています。
この「肝臓特異性」が、スタチン不耐症の患者様にとって重要な利点となっています。

従来のスタチン系薬剤との違い
スタチンとベムペド酸は、どちらもコレステロールを下げる薬ですが、いくつかの重要な違いがあります。
作用点の違い
スタチンは「HMG-CoA還元酵素」という酵素を阻害しますが、ベムペド酸はより上流の「ACL」を阻害します。この違いにより、副作用のプロファイルが異なってきます。
副作用の違い
スタチンの代表的な副作用として、筋肉痛や筋力低下があります。これは「横紋筋融解症」という重篤な状態に至ることもあり、注意が必要です。一方、ベムペド酸では筋肉への影響が少ないため、スタチンで筋肉痛が出た方でも使用できる可能性があります。
併用療法の可能性
ベムペド酸とスタチンは作用点が異なるため、併用することでより強力なコレステロール低下効果が期待できます。

ベムペド酸が適している患者様
スタチン不耐症の方
スタチンを服用すると筋肉痛が出てしまう、あるいは肝機能検査値が上昇してしまうなど、スタチンの副作用で治療継続が困難な方に適しています。
スタチンだけでは効果不十分な方
すでにスタチンを服用しているものの、LDLコレステロール値が目標値まで下がらない方にも、追加療法としてベムペド酸が検討されます。
特に、家族性高コレステロール血症のように、遺伝的にコレステロール値が高い方では、複数の薬剤を組み合わせた治療が必要になることがあります。
心血管疾患のリスクが高い方
心筋梗塞や狭心症の既往がある方、糖尿病を合併している方など、心血管疾患のリスクが高い患者様では、より厳格なコレステロール管理が求められます。そうした場合にも、ベムペド酸が有用な選択肢となり得ます。心筋梗塞後などでLDLを70以下に下げたい場合、スタチン単独では目標値に達しないことが多いのが事実です。

期待される効果と臨床データ
LDLコレステロール低下効果
臨床試験では、ベムペド酸の投与により、LDLコレステロールが平均して約15〜25%低下することが報告されています。スタチンと併用した場合には、さらに大きな低下が期待できます。
心血管イベントへの影響
2023年に発表された大規模臨床試験「CLEAR Outcomes試験」では、心血管リスクの高いスタチン不耐患者においてベムペド酸の投与が心血管死などの心血管イベントのリスクを低下させたことが示されました。これは、単にコレステロール値を下げるだけでなく、実際の心血管疾患予防にも効果があることを意味しています。
効果が現れるまでの期間
ベムペド酸は、服用開始後およそ2週間程度でコレステロール低下効果が現れ始めます。最大の効果が得られるまでには、通常4週間程度かかることが一般的です。
そのため、服用開始後すぐに効果を判断せず、数ヶ月間継続して血液検査で効果を確認していくことが重要です。

副作用と注意点
主な副作用
ベムペド酸は比較的副作用が少ない薬剤ですが、以下のような副作用が報告されています。
- 尿酸値の上昇 (痛風発作のリスク)
- 筋肉痛 (スタチンよりは少ない)
- 肝機能検査値の上昇
特に注意が必要なのは、尿酸値の上昇です。痛風の既往がある方や、尿酸値が高めの方では、定期的な検査が推奨されます。
服用を避けるべき方
以下の方は、ベムペド酸の使用が推奨されていません。
- 妊娠中または妊娠を計画している女性
- 授乳中の女性
- 重度の肝機能障害がある方
定期的な検査の必要性
ベムペド酸を服用中は、定期的な血液検査が必要です。具体的には
- LDLコレステロール値の測定(治療効果の確認)
- 肝機能検査(AST、ALTなど)
- 尿酸値の測定
- 腎機能検査 (クレアチニンなど)
通常、服用開始後1〜2ヶ月で最初の検査を行い、その後は3〜6ヶ月ごとに検査を継続することが一般的です。

服用方法と日常生活での注意事項
服用方法
ベムペド酸は、1日1回180mgを食事の有無に関わらず服用します。毎日決まった時間に服用することで、飲み忘れを防ぐことができます。(用量も一つしかないので我々医療者も楽です。)
例えば、朝食後や就寝前など、生活リズムに合わせて服用時間を決めておくと良いでしょう。飲み忘れた場合は、気づいた時点で1回分を服用しますが、次の服用時間が近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、次回分から通常通り服用してください。
生活習慣の改善も重要
これはどの薬でも同じですが、並行して生活習慣の改善も非常に重要です。
食事面では
- 飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、生クリームなど)の摂取を控える
- 魚(特に青魚)、野菜、海藻を積極的に摂る
- 食物繊維を多く含む食品(全粒穀物、豆類など)を取り入れる
運動面では
- 週に150分以上の中等度の有酸素運動(早歩き、水泳など)
- 無理のない範囲で継続できる運動を選ぶ
- エレベーターではなく階段を使うなど、日常的な活動量を増やす
その他の生活習慣
- 禁煙(喫煙は動脈硬化を促進します)
- 適正体重の維持
- ストレス管理
- 十分な睡眠
他の薬剤との相互作用
ベムペド酸は、スタチンと併用することが多い薬剤ですが、スタチンの血中濃度を上昇させることが報告されており、副作用のリスクが高まる可能性が指摘されていますので、定期的な血液検査を行っていきます。

よくある質問(Q&A)
Q1: ベムペド酸はどのくらいの期間服用する必要がありますか?
A: 高コレステロール血症は慢性的な状態であるため、基本的には長期間の服用が必要となります。ただし、生活習慣の改善により、将来的に薬の減量や中止が可能になる場合もあります。定期的に医師と相談しながら、治療方針を決めていくことが重要です。
Q2: スタチンとベムペド酸、どちらを先に試すべきですか?
A: まずスタチンから開始することが推奨されています。スタチンは長年の使用実績があり、効果と安全性が確立されているためです。スタチンで副作用が出た場合や、効果が不十分な場合に、ベムペド酸への変更や追加が検討されます。
Q3: ベムペド酸を飲み始めてから、いつ頃効果を実感できますか?
A: 血液検査上の効果は2週間程度から現れ始めますが、自覚症状としては変化を感じないことが多いです。高コレステロール血症自体は症状がないことが多いためです。定期的な血液検査で効果を確認し、長期的な心血管疾患予防という視点で治療を続けることが大切です。
Q4: ベムペド酸を飲んでいれば、食事制限はしなくても良いですか?
A: いいえ、薬を飲んでいても食事療法は重要です。薬物療法と生活習慣改善は車の両輪のようなもので、両方を組み合わせることで最大の効果が得られます。薬に頼りすぎず、バランスの良い食事と適度な運動を心がけてください。
Q5: 副作用が心配です。どんな症状が出たら受診すべきですか?
A: 以下のような症状が現れた場合は、速やかに受診してください。
- 原因不明の筋肉痛や筋力低下
- 関節の激しい痛みや腫れ(痛風の可能性)
- 極度の疲労感
- 皮膚や目が黄色くなる(黄疸)
- 腹痛、吐き気、食欲不振
軽度の症状でも、気になることがあれば遠慮なく医師に相談してください。

まとめ
ベムペド酸 (ネクセトール)は、スタチン不耐症の方や、スタチンだけでは十分な効果が得られない方にとって、重要な治療選択肢となる新しいコレステロール低下薬です。
この記事のポイント:
- ベムペド酸は肝臓で特異的に作用し、筋肉痛などの副作用が少ない
- LDLコレステロールを15〜25%程度低下させる効果が期待できる
- 心血管イベントのリスク減少効果も示されている
- 尿酸値上昇などの副作用があるため、定期的な検査が必要
- 薬物療法だけでなく、生活習慣改善も重要
コレステロール管理は、将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防するための重要な取り組みです。ベムペド酸が適しているかどうかは、個々の患者様の状態によって異なります。
スタチンで副作用が出てしまった方、現在の治療で目標値に達していない方は、ぜひ主治医とベムペド酸について相談してみてください。当クリニックでも、循環器専門医として、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案させていただいております。
執筆者プロフィール

田邉弦
丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長
- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
- 日本内科学会 JMECCインストラクター
- 日本救急医学会 ICLSインストラクター
- 認知症サポート医
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