• 2025年6月2日

心臓や血管の健康のために!HDLコレステロールを上げる7つの効果的な方法

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回は、「善玉コレステロール」とも呼ばれるHDLコレステロールについての話です。健康診断で「HDLコレステロールが低い」と指摘されたことはありませんか?あるいは、「コレステロールが高い」と言われて不安になったものの、実は「どのコレステロール」が問題なのか分からないまま過ごしていませんか?HDLコレステロールは、私たちの健康、特に心臓の健康に非常に重要な役割を果たしています。高ければ高いほど良いとされるこの「善玉コレステロール」を上げる方法について詳しく解説します。

目次

  1. HDLコレステロールとは?基礎知識
  2. HDLコレステロールが低いとどうなる?
  3. HDLコレステロールを上げる7つの方法
  4. 食事でHDLコレステロールを上げるには?
  5. 運動とHDLコレステロール
  6. 生活習慣の改善
  7. よくある質問
  8. まとめ

HDLコレステロールとは?基礎知識

「善玉」と呼ばれる理由

HDL(High-Density Lipoprotein)コレステロールは、一般的に「善玉コレステロール」と呼ばれています。なぜ「善玉」なのでしょうか?それは、HDLコレステロールには血管の壁に蓄積された余分なコレステロールを回収し、肝臓へと運ぶ働きがあるからです。言わば、血管の掃除屋さんのような役割を担っています。一方、LDL(Low-Density Lipoprotein)コレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、これが血管内に蓄積されると動脈硬化の原因となります。

健康的なHDLコレステロール値とは?

健康診断などでよく目にするHDLコレステロールの基準値ですが、一般的には以下のように考えられています。

  • 40mg/dL未満:低値(リスクが高い)
  • 40mg/dL以上:正常値

男性よりも女性の方がHDLコレステロール値は高い傾向にあります。これは女性ホルモンの一種であるエストロゲンがHDLコレステロールの産生を促進するためです。

HDLコレステロールが低いとどうなる?

HDLコレステロールが低いと、どのような健康上の問題が生じる可能性があるのでしょうか?

心血管疾患のリスク上昇

HDLコレステロールが低いと、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まります。これは、血管の壁からコレステロールを除去する働きが弱まるためです。

具体的な症状

HDLコレステロールの低下自体には、特徴的な自覚症状はありません。しかし、長期的には以下のような問題につながる可能性があります。

  • 動脈硬化の進行
  • 狭心症・心筋梗塞
  • 脳卒中

HDLコレステロールを上げる7つの方法

HDLコレステロールを上げるには、主に生活習慣の改善が効果的です。薬物療法も選択肢のひとつですが、まずは日常生活の中でできることから始めましょう。

1. 適切な運動習慣を身につける

定期的な有酸素運動は、HDLコレステロールを上げるのに非常に効果的です。週に150分の中強度の運動(速歩きなど)、または75分の高強度の運動(ジョギングなど)を目標にしましょう。

2. 健康的な食生活に切り替える

オメガ3脂肪酸を多く含む魚(サバ、サンマ、イワシなど)、オリーブオイル、ナッツ類、大豆製品などを積極的に摂取することで、HDLコレステロールの上昇が期待できます。

3. 禁煙する

喫煙はHDLコレステロールを低下させる大きな要因です。禁煙することで、比較的短期間でHDLコレステロールの改善が見られるケースが多いです。

4. 適正体重を維持する

肥満、特に内臓脂肪型肥満はHDLコレステロール低下の原因となります。BMIが25以上の方は、5〜10%の体重減少を目指すことで、HDLコレステロールの改善が期待できます。

5. アルコールを適量に抑える

過度の飲酒は避けるべきですが、適量のアルコール(日本酒なら1合程度)は、実はHDLコレステロールを上げる効果があるとされています。ただし、これを理由に飲酒を始めることはお勧めしません。

6. トランス脂肪酸を避ける

マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸は、HDLコレステロールを下げる作用があります。加工食品や市販のお菓子などに多く含まれているため、注意が必要です。

7. ストレスを管理する

慢性的なストレスは、様々なホルモンバランスの乱れを引き起こし、HDLコレステロールの低下につながることがあります。適度な運動、十分な睡眠、趣味の時間などで、ストレスを管理しましょう。

食事でHDLコレステロールを上げるには?

心臓に優しい食事のポイント

HDLコレステロールを上げるために特に効果的な食品群をご紹介します。

オメガ3脂肪酸を多く含む食品

  • 青魚(サバ、サンマ、マグロ、ブリなど)
  • アマニ油
  • チアシード
  • クルミ

実際に、週に2回以上青魚を食べる習慣のある方は、そうでない方に比べてHDLコレステロール値が高かったというデータもあるそうです。

単価不飽和脂肪酸を含む食品

  • オリーブオイル
  • アボカド
  • ナッツ類(アーモンド、ピスタチオなど)

食物繊維が豊富な食品

  • 大豆製品(納豆、豆腐など)
  • 玄米
  • オートミール
  • 野菜や果物

その他、脂質異常症の食事療法に関しては以前のブログ「コレステロールが多い食品を知っていますか?心臓と血管の健康を守りましょう!!」をご覧ください。

運動とHDLコレステロール

効果的な運動の種類

HDLコレステロールを上げるのに特に効果的な運動は、有酸素運動です

  • ウォーキング(速歩き)
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳
  • エアロビクス

運動の頻度と強度

理想的な運動の頻度と強度は以下の通りです

  • 頻度:週に5日以上
  • 時間:1回30分以上(合計で週150分以上)
  • 強度:「ややきつい」と感じる程度(会話はできるが、歌うのは難しい程度)

運動を始める際のポイントとして、いきなり高強度の運動を行うのではなく、徐々に強度を上げていくことが重要です。例えば、まずは1日10分の散歩から始めて、慣れてきたら徐々に時間と速度を上げていきましょう。

ある60歳の患者さんは、毎日の30分ウォーキングを3ヶ月続けたところ、HDLコレステロールが38mg/dLから48mg/dLに上昇しました。この例からも、継続的な運動の効果がうかがえます。

生活習慣の改善

禁煙の効果

喫煙はHDLコレステロールを低下させる大きな要因です。禁煙によって、多くの場合1ヶ月程度でHDLコレステロール値の改善が見られ始めます。

45歳の男性患者さんの例では、20年間の喫煙習慣をやめて3ヶ月後、HDLコレステロールが34mg/dLから42mg/dLに上昇しました。

適正体重の維持

内臓脂肪の蓄積は、HDLコレステロールの低下と密接に関連しています。特に、ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合、内臓脂肪型肥満が疑われます。

体重の5〜10%の減量でも、HDLコレステロールの増加が期待できます。例えば、体重70kgの方なら3.5〜7kg減量することで効果が現れる可能性があります。

質の良い睡眠

睡眠不足や睡眠の質の低下は、様々な代謝異常を引き起こし、HDLコレステロールの低下につながることがあります。7〜8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。

よくある質問

Q: HDLコレステロールを上げる薬はありますか?

A: 現在、HDLコレステロールを上げることを主目的とした薬剤は、一般的に使用されていません。過去にはHDLコレステロールを上げる薬(CETP阻害薬など)の開発が進められていますが、心血管イベントの減少という点で十分な効果が証明されていないため、現時点では実用化には至っていません。

一部の脂質異常症治療薬(フィブラート系薬剤やニコチン酸誘導体など)には、LDLコレステロールを下げる効果と同時に、HDLコレステロールを上げる効果も期待できますが、大きく増加させるものではありません。

Q: どのくらいの期間で効果が現れますか?

A: 生活習慣の改善によるHDLコレステロールの上昇は、個人差がありますが、一般的には以下のようなタイムラインが考えられます。

  • 運動:定期的な運動を始めてから2〜3ヶ月で効果が現れ始めることが多いです
  • 食事改善:健康的な食事パターンを続けて1〜2ヶ月で変化が見られることがあります
  • 禁煙:禁煙後1ヶ月程度から徐々に改善し始めるケースが多いです
  • 減量:5%以上の体重減少を達成した時点で、HDLコレステロールの上昇が期待できます

Q: サプリメントは効果がありますか?

A: オメガ3脂肪酸サプリメントには、HDLコレステロールを上げる効果が期待できるという研究結果もありますが、食事から摂取する方が総合的な健康効果は高いと考えられています。サプリメントの医学的エビデンスは限定的ですので、バランスの良い食事と適切な運動習慣の確立を優先することをお勧めします。サプリメントの使用を検討される場合は、必ず医師に相談してください。

まとめ

HDLコレステロールを上げるための7つの方法をまとめます。

  1. 定期的な有酸素運動を行う
  2. オメガ3脂肪酸や単価不飽和脂肪酸を多く含む食品を摂取する
  3. 禁煙する
  4. 適正体重を維持する
  5. アルコールは適量に抑える
  6. トランス脂肪酸を避ける
  7. ストレスを適切に管理する

最も重要なのは、これらの取り組みを一時的なものではなく、生涯にわたる健康的な生活習慣として確立することです。急激な変化を目指すのではなく、少しずつできることから始めて、継続していくことが大切です。HDLコレステロールを含む脂質異常症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。健康診断でHDLコレステロールが低いと指摘された場合も、過度に心配せず、この記事でご紹介した生活習慣の改善から始めてみましょう。そして、定期的に健康診断などで数値の変化をチェックすることをお勧めします。

参考文献

  1. 日本動脈硬化学会. (2023). 「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」
  2. 厚生労働省. (2023). 「国民健康・栄養調査」
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