- 2026年1月16日
健康診断で血糖値が高いと言われたら?糖尿病専門医が解説する適切な対応と予防法
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉優希です。

健康診断の結果を見て「血糖値が高めですね」と言われた経験はありませんか? 多くの方が、その言葉を聞いた瞬間に不安を感じられることと思います。血糖値が高いということは、糖尿病の前段階である可能性や、すでに糖尿病を発症している可能性があるということを意味しています。
しかし、早期に気づき適切な対応をすることで、将来の健康リスクを大幅に減らすことができます。この記事では、糖尿病専門医として、健康診断で血糖値が高いと指摘された方に向けて、正しい知識と具体的な対応方法をわかりやすく解説します。
目次

1. 健康診断の血糖値とは? 基本的な知識
血糖値の基準値を知りましょう
血糖値とは、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度を示す数値です。健康診断では主に「空腹時血糖値」が測定されます。
正常な血糖値の基準
- 空腹時血糖値:100mg/dL未満
- 正常高値:100〜109mg/dL
- 境界型(糖尿病予備軍):110〜125mg/dL
- 糖尿病型:126mg/dL以上
例えば、朝食を抜いて受けた健康診断で血糖値が115mg/dLだった場合、これは境界型に該当し、糖尿病予備軍の段階といえます。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)も重要な指標です
健康診断では、血糖値に加えてHbA1cという項目も測定されることが一般的です。HbA1cは過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖値を反映する指標で、当日の食事の影響を受けません。
HbA1cの基準値:
- 正常:5.5%以下
- 糖尿病の可能性が否定できない:5.6〜6.4%
- 糖尿病型:6.5%以上
HbA1cが6.0%の場合、過去1〜2ヶ月の平均血糖値が高めであったことを意味しており、注意が必要な状態です。
HbA1cについて詳しく知りたい方は以前のブログ「糖尿病に欠かせない指標!HbA1cってなに?目標値は?」をご覧ください。

2. 血糖値が高いとどうなるの? 体への影響
初期段階では自覚症状がほとんどありません
血糖値が高い状態が続いていても、初期段階ではほとんど自覚症状がありません。これが糖尿病の怖いところです。まるで静かに進行する病気のように、知らないうちに体にダメージが蓄積されていきます。
放置すると深刻な合併症のリスクが高まります
高血糖の状態が長期間続くと、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
三大合併症
- 糖尿病網膜症:目の血管がダメージを受け、視力低下や失明のリスク
- 糖尿病性腎症:腎臓の機能が低下し、透析が必要になる可能性
- 糖尿病性神経障害:手足のしびれや痛み、感覚の鈍化
その他の合併症
- 心筋梗塞や脳梗塞のリスク増加
- 足の血流障害による壊疽
- 歯周病の悪化
- 認知症のリスク上昇
例えば、50代の男性が健康診断で血糖高値を指摘されたにもかかわらず放置した場合、60代で心筋梗塞を発症するリスクが2〜3倍に上昇するというデータもあります。

3. 血糖値が高くなる原因
生活習慣が大きく関わっています
血糖値が高くなる主な原因は、日々の生活習慣にあることが多いです。
食生活の問題
- 炭水化物(ごはん、パン、麺類)の摂りすぎ
- 甘い飲み物や菓子の頻繁な摂取
- 野菜や食物繊維の不足
- 不規則な食事時間や早食い
運動不足
- デスクワーク中心の生活
- 通勤も車で歩く機会が少ない
- 休日もほとんど体を動かさない
その他の要因
- 慢性的なストレス
- 睡眠不足
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 加齢
- 遺伝的要因
例えば、毎日コンビニ弁当とペットボトルの甘い飲み物で昼食を済ませ、夜は遅い時間に炭水化物中心の夕食を摂り、運動はほとんどしない、という生活を送っている40代の方は、血糖値が高くなるリスクが非常に高いといえます。

4. 健康診断後にすべきこと
まずは医療機関を受診しましょう
健康診断で血糖値が高いと指摘された場合、最も重要なのは必ず医療機関を受診することです。「少し高いだけだから大丈夫」と自己判断で放置することは避けましょう。
受診のタイミング
- 血糖値が126mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上:できるだけ早く(1〜2週間以内)
- 血糖値が110〜125mg/dL:1ヶ月以内
- 血糖値が100〜109mg/dL:3ヶ月以内
精密検査を受けることが推奨されます
医療機関では、以下のような検査が行われることが一般的です。
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT):糖尿病の診断を確定するための検査
- 血液検査:HbA1c、空腹時血糖値、食後血糖値など
- 尿検査:尿糖や尿タンパクの有無
- 合併症のチェック:糖尿病と診断された場合は眼底検査、腎機能検査など
これらの検査により、現在の状態を正確に把握し、適切な治療方針を立てることができます。

5. 血糖値を改善する具体的な方法
食事の改善が最も重要です!
すぐに始められる食事のポイント
- 野菜を最初に食べる:食物繊維が豊富な野菜から食べ始めることで、血糖値の急上昇を抑えられます
- 例:サラダや野菜のおかずを一番最初に食べる
- 炭水化物の量を見直す:ごはんやパン、麺類は今までの7〜8割程度に減らしましょう
- 例:ごはん茶碗に軽く1杯(約150g)程度
- 間食を工夫する:甘いお菓子の代わりに、ナッツ類や無糖ヨーグルトを選びましょう
- 飲み物に注意:砂糖入りの飲料は避け、水やお茶、無糖のコーヒーを選びましょう
- よく噛んで食べる:一口30回を目標に、ゆっくり食事を楽しみましょう
運動習慣を取り入れましょう!
運動は血糖値を下げる効果が高く、インスリンの働きも改善します。
おすすめの運動
- ウォーキング:1日30分程度、週5日以上が理想的
- 例:通勤時に一駅分歩く、昼休みに近所を散歩する
- 筋力トレーニング:週2〜3回、簡単なスクワットや腕立て伏せ
- 例:テレビを見ながらスクワット10回×3セット
- 食後の軽い運動:食後15〜30分後に10〜15分程度の散歩
- 血糖値のピークを抑える効果があります
運動を始める際は、無理のない範囲から始め、徐々に量を増やしていくことが長続きのコツです。
体重管理も重要です!
BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が25以上の場合、まずは現在の体重の3〜5%を減らすことを目標にしましょう。
例えば、体重70kgの方であれば、2〜3.5kgの減量で、血糖値や血圧、コレステロール値などが改善する可能性があります。
生活習慣の見直し
睡眠
- 1日7〜8時間の質の良い睡眠を心がける
- 就寝前のスマートフォンの使用を控える
ストレス管理
- 趣味の時間を持つ
- 深呼吸やストレッチで気分転換
禁煙
- 喫煙は血糖コントロールを悪化させます
- 禁煙外来の利用も検討しましょう

6. よくある質問(Q&A)
Q1: 一度血糖値が高いと診断されたら、一生薬を飲み続けなければならないのでしょうか?
A: 必ずしもそうではありません。糖尿病予備軍の段階であれば、生活習慣の改善だけで正常値に戻すことは十分可能です。糖尿病と診断された場合でも、早期に適切な治療と生活改善を行えば、薬の量を減らしたり、場合によっては薬が不要になることもあります。ただし、これは個人差が大きいため、主治医とよく相談することが重要です。
Q2: 健康診断で血糖値が正常でも、食後に急激に上がっていることはありますか?
A: はい、あります。これを「隠れ糖尿病」や「食後高血糖」と呼びます。空腹時血糖値は正常でも、食後の血糖値が異常に上昇している場合があります。特に、家族に糖尿病の方がいる場合や、肥満傾向がある場合は注意が必要です。気になる方は、食後血糖値やHbA1cも測定することをおすすめします。
Q3: 果物は血糖値を上げますか?食べない方がいいのでしょうか?
A: 果物には果糖が含まれているため、確かに血糖値は上昇します。しかし、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維も豊富に含まれていますので、適量であれば問題ありません。1日あたりみかん1個程度、またはりんご半分程度が目安です。ただし、果物ジュースは避け、生の果物を食べるようにしましょう。
Q4: 血糖値を下げるサプリメントは効果がありますか?
A: 一部のサプリメントには血糖値の上昇を緩やかにする効果が報告されているものもありますが、医薬品ほどの効果は期待できません。サプリメントだけに頼るのではなく、食事や運動などの生活習慣の改善を基本とし、サプリメントは補助的に考えることが大切です。また、服用中の薬がある場合は、医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。
Q5: 血糖値が高いと感じる自覚症状はありますか?
A: 初期段階では自覚症状がないことが多いですが、血糖値がかなり高くなると以下のような症状が現れることがあります。喉が異常に渇く、尿の回数や量が増える、体重が減少する、疲れやすい、傷が治りにくいなどです。ただし、これらの症状がない場合でも、健康診断で指摘されたら必ず医療機関を受診しましょう。

7. まとめ
健康診断で血糖値が高いと指摘されることは、決して珍しいことではありません。むしろ、早期に発見できたチャンスと捉えることが大切です。
本記事の重要なポイント
- 血糖値が高いと指摘されたら、必ず医療機関を受診する
- 初期段階では自覚症状がないため、定期的な検査が重要
- 生活習慣の改善(食事・運動・体重管理)が基本
- 早期発見・早期対応で、合併症のリスクを大幅に減らせる
- 一人で悩まず、医療従事者と相談しながら取り組む
血糖値が高いという結果は、「今日から健康な生活を始めよう」という体からのメッセージです。小さな一歩から始めて、無理なく継続できる生活改善を心がけましょう。
当院では、糖尿病専門医による丁寧な診察と、お一人お一人の生活スタイルに合わせた実践的なアドバイスを提供しております。HbA1cの即日検査も可能ですので、健康診断で血糖値が高いと指摘された方は、お気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール

丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長 田邉 優希
- 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本医師会 認定産業医