• 2025年2月27日

高尿酸血症・痛風とアルコールの関係。プリン体0のビールってどうなの?

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回はブログでは初登場の高尿酸血症の話です。これから暖かくなって、もうすぐ花見のシーズンになります。外で飲むビールを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。高尿酸血症とアルコールの関係は愛飲家の方にとって気になる内容だと思います。是非ご覧ください。

高尿酸血症や痛風は、「ぜいたく病」とも呼ばれ、特に働き盛りの方々に多い生活習慣病です。日本人の痛風患者数は年々増加傾向にあり、予備軍を含めると100万人以上と言われています。明治時代の頃は痛風の患者はほとんどいなかったとのことなので、食生活の変化が原因と考えられてます。特にアルコール、とりわけビールとの関係は多くの患者さんが気にされている点で私も多く質問を受けます。本記事では、高尿酸血症・痛風とアルコールの関係を医学的な視点から詳しく解説し、近年注目を集めているプリン体0のビールについても分析します。

目次

高尿酸血症・痛風とは

高尿酸血症の基本的な理解

高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える状態を指します。尿酸は、プリン体の代謝によって生成される物質です。体内で生成される尿酸の約7割は、細胞の新陳代謝により自然に作られる「内因性」のもので、残りの約3割が食事から摂取する「外因性」のものです。

過剰な尿酸は、痛風発作や腎臓病のリスクを高めるだけでなく、近年の研究では動脈硬化や心臓病のリスク因子としても注目されています。

痛風の発症メカニズム

尿酸値が継続的に高い状態が続くと、関節や腎臓に尿酸結晶(尿酸ナトリウム)が蓄積し、激しい痛みや炎症を引き起こします。特に、第一趾(親指)の付け根に痛みが生じることが多く、これを痛風発作と呼びます。

痛風発作の特徴

  • 中年男性に好発
  • 24時間以内にピークに達する急激な痛み
  • 関節が熱を持ち、腫れて真っ赤になる
  • わずかな接触でも痛みを感じる
  • 10日程で自然軽快する

痛風発作は、適切な治療を受けないと繰り返し、関節の変形や腎機能障害などの合併症を引き起こす可能性があります。

アルコールと尿酸値の関係

アルコールが尿酸値に与える影響

アルコール、特にビールは尿酸値を上昇させる主要な要因の一つです。その理由は以下の3つの機序によります。

1. プリン体の量

  • ビールの製造過程で使用される酵母にプリン体が含まれています
  • 通常のビール500mlには、約30mgのプリン体が含まれます
  • しかし、これはさほど多い量ではなく豚肉100g(約100mg)の3分の1程度に過ぎません

2. 尿酸産生

  • アルコールが体内で分解される際に尿酸が作られます
  • 結果として血中尿酸値が上昇します

3. 乳酸産生

  • アルコール代謝により乳酸が増加します
  • 乳酸は腎臓での尿酸の排泄を競合的に阻害します
  • これにより尿酸値がさらに上昇する悪循環が生じます

アルコール別の尿酸値への影響度

次に各種アルコール飲料の尿酸値への影響を比較してみましょう。

1. ビール:最も影響が大きい

  • プリン体含有量が多い
  • アルコールによる影響も加わる

2. 日本酒:中程度の影響

  • プリン体含有量はビールより少ない
  • アルコール度数が比較的高い

3. ワイン:比較的影響が少ない

  • プリン体含有量が少ない
  • 適度な飲酒量であれば影響は限定的

4. 焼酎・ウイスキー:比較的影響が少ない

  • プリン体含有量は少ない
  • ただしアルコール度数が高いため、大量摂取は避けるべき

ビールがプリン体含有量が最も高いですが、その他のお酒はアルコールによる尿酸への影響が大きいためいずれも適量飲酒が望ましいと考えられます。

プリン体0のビールは本当に安全?

プリン体0のビールの特徴

プリン体0と謳われるビールは、製造工程で特殊な酵母を使用したり、酵母を丁寧に取り除いたりすることで、プリン体含有量を減らしています。しかし、完全に尿酸値に影響がないわけではありません。

プリン体0ビールのメリット

  • 通常のビールと比較してプリン体が極めて少ない(0.5mg/100ml未満)
  • 味わいは通常のビールに近い
  • カロリーも通常のビールより低めに抑えられている製品が多い

プリン体0ビールのデメリット

  • アルコール自体の尿酸値上昇、排泄阻害作用は残る
  • 「0」という表示により過剰摂取を招きやすい

個人的にはこの「0」という数値がまったく尿酸値に影響がないという誤解を招き、飲みすぎてしまっている方が多いように思います。

飲酒と尿酸値:推奨されるアプローチ

安全な飲酒のために以下の点に注意が必要です。

1. 適度な飲酒量を守る

  • 1日のアルコール量は20g程度まで (ビールなら500ml缶1本程度)
  • プリン体0でも同様の基準を守る
  • 休肝日を設ける

2. 水分補給を十分に行う

  • アルコール1杯につき水1杯を目安に
  • 尿酸値の上昇を抑制する効果

3. プリン体の少ない飲料を選択する

  • プリン体0ビールの活用
  • ワインや焼酎などの選択肢も検討

4. おつまみを控える

アルコールにあうおつまみ(魚卵、内臓、干物など)はプリン体含有量が多いので控える

プリン体0のビールが高尿酸血症の方には良いとは思いますが、アルコールであることには変わらず尿酸値上昇作用はあるので、適量にとどめることが大切です。

尿酸値を下げるための実践的アドバイス

食事と生活習慣の改善

1. 食事の改善

  • 野菜や果物を多く摂取(アルカリ性食品が有効)
  • 赤身肉や内臓肉を控える(週2-3回まで)
  • 魚は小魚を避け、白身魚を選択
  • プリン体の多い食品(干物、レバー、白子など)を制限

2. 運動習慣

  • 適度な有酸素運動(1日30分、週3回以上目標)
  • 高強度の筋力トレーニングはむしろ尿酸上昇させるので避ける
  • 汗をかいたら適切な水分補給

3. 生活リズム

  • 規則正しい食事
  • 十分な睡眠
  • ストレス管理

4. 体重管理

  • 適正体重の維持
  • 急激なダイエットは避ける
  • BMI 25未満を目標に

定期的な検査の重要性

高尿酸血症のほとんどの方は自覚症状がないため、定期的な検査が重要です。

  • 年1回の健康診断受診
  • 尿酸値が高めの場合は3-6ヶ月ごとの検査
  • 家族歴がある場合は特に注意

生活習慣を改善しているにもかかわらず尿酸値が8mg/dL以上が続くような方は尿酸降下薬の適応になります。尿酸降下薬も降圧薬と同じように様々な種類がありますので、外来で診察しながら適切な薬剤を処方します。

まとめ

高尿酸血症・痛風は、適切な生活習慣の改善と管理によって十分にコントロール可能な疾患です。アルコール、特にビールとの付き合い方を理解し、自分に合った対策を見つけることが大切です。プリン体0のビールは一つの選択肢として有効ですが、アルコールであることには変わらないので、結局は適量摂取が原則です。

当院では、患者さん一人ひとりの生活習慣や嗜好に合わせた、無理のない治療プランを提案しています。尿酸値が気になる方、痛風でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。検査や治療のご相談は、お電話または当院のウェブサイトからご予約いただけます。

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