- 2025年3月21日
「胸がドキッとする。」「脈が飛ぶ。」原因の第一位!期外収縮とは?
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。最近は糖尿病に関するブログが続いておりましたが、久しぶりに循環器領域の話題です。是非ご覧ください。

ふとした時に感じる「ドキッ」という心臓の鼓動、あるいは「脈が飛んだ」という感覚は多くの方が感じたことがあると思います。これらの症状に不安を感じ、「もしかして重大な心臓病?」と心配される方も少なくありません。実はこれらの症状の多くは「期外収縮」と呼ばれる不整脈が原因であることが多いのです。健康診断でも最も多くみられる不整脈の一つです。この記事では、期外収縮について詳しく解説し、皆様の不安解消のお手伝いをします。
目次
- 期外収縮とは?心臓の「しゃっくり」!?
- 期外収縮の症状:どんな感覚を覚えるの?
- 期外収縮の原因:なぜ起こるの?
- 期外収縮の診断方法:どう調べるの?
- 期外収縮は危険なの?心配すべき場合とそうでない場合
- 期外収縮の治療:どう対処すればいいの?
- 期外収縮と上手に付き合うコツ
- まとめ

期外収縮とは?心臓の「しゃっくり」!?
期外収縮とは、心臓の正常なリズムとは別に、予定外の収縮が入ることを言います。通常の心拍の順序とは異なるタイミングで収縮が起こるため、「期外」収縮と呼ばれています。心臓の「しゃっくり」なんて言われてたりもしますが、しゃっくりと同じで健康な人でも起こる不整脈です。
心臓の正常なリズムと期外収縮の違い
健康な心臓は、洞結節という心臓の天然のペースメーカーからの電気信号に従って規則正しく収縮します。しかし、期外収縮では洞結節以外の場所から不規則に電気信号が発生し、正常なリズムを乱します。
期外収縮は大きく分けて二種類あります。
- 上室性期外収縮(PAC):心房から発生する期外収縮
- 心室性期外収縮(PVC):心室から発生する期外収縮
これは期外収縮の発生場所が心臓の上の部屋(心房)にあるか心臓の下の部屋(心室)にあるかの違いです。これは自覚症状や脈のリズムだけでは見分けるのは困難で、心電図を取って初めてどちらの期外収縮かがわかります。
期外収縮の症状:どんな感覚を覚えるの?
多くの方が経験する期外収縮の症状には以下のようなものがあります。ただ自覚症状の感じ方は人それぞれで、数は少なくとも敏感に期外収縮の出現を感じ取る方はいますし、逆に数が多くてもまったく無症状という方もいらっしゃいます。
自覚症状
- 胸がドキッとする感覚
- 心臓が一拍抜けたような感覚(脈が飛ぶ)
- 心臓が飛び跳ねるような感覚
- 胸部の不快感
- 息切れ(特に連発する場合)
- めまい(頻度が高い場合)
期外収縮は健康診断でも見つかる
症状がなくても、健康診断の心電図検査で偶然発見される方も多くいらっしゃいます。「健康診断で不整脈と言われた」と心配して来院される患者さんの多くは、期外収縮を指摘されています。

期外収縮の原因:なぜ起こるの?
期外収縮の原因は多岐にわたります。主な原因と関連因子について見ていきましょう。
日常生活での原因 (自律神経の乱れ)
- カフェインの過剰摂取:コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど
- アルコール摂取:特に大量または長期間の飲酒
- 喫煙:たばこに含まれるニコチンの影響
- 疲労やストレス:精神的・身体的ストレスが自律神経に影響
- 睡眠不足:十分な休息が取れていない状態
- 脱水:体内の電解質バランスが崩れる
基礎疾患との関連
- 高血圧:長期間の高血圧は心臓に負担をかけます
- 心筋梗塞の既往:心筋梗塞後の瘢痕組織が期外収縮の発生源になることも
- 心不全:心臓の機能低下により発生リスクが高まります
- 心臓弁膜症:弁の異常により心臓内の血流が乱れることで発生
- 甲状腺機能亢進症:代謝が亢進し、心臓に負担がかかります
期外収縮の診断方法:どう調べるの?
期外収縮の診断には、以下のような検査が行われます。
基本的な検査
- 問診:症状の性質、頻度、持続時間、誘因などを詳しく聞きます
- 身体診察:聴診器での心音の聴取、脈拍の確認など
- 12誘導心電図:背景の心電図異常を調べるます、短時間の心電図検査で期外収縮が捉えられることもあります
精密検査
- ホルター心電図:24時間、携帯型の心電計で連続記録します
- 心エコー検査:心臓の構造や機能を評価し、基礎心疾患の有無を確認します
- 血液検査:電解質異常や甲状腺機能を調べます
- 胸部レントゲン:心拡大など心不全の有無を調べます
当院では、これらの検査を患者さんの症状や状態に応じて適切に選択し、正確な診断に努めています。

期外収縮は危険なの?心配すべき場合とそうでない場合
期外収縮は非常に一般的な不整脈で、健康な人でも経験することがあります。多くの場合は無害ですが、状況によっては注意が必要です。
心配の少ないケース
- 基礎疾患がない健康な方に時々発生する期外収縮
- 運動や活動に支障がない程度の症状
- 検査で心臓に異常が見つからない場合
注意が必要なケース
- 頻繁に発生する期外収縮(1日に1万回以上など総心拍数の10%を超える場合)
- 連発する期外収縮(2回以上続けて発生)
- 症状が強く、日常生活に支障をきたす場合
- 基礎疾患(心不全、心筋梗塞の既往など)がある場合
- めまいや失神を伴う場合
期外収縮の治療:どう対処すればいいの?
期外収縮の治療は、症状の程度や基礎疾患の有無によって異なります。
生活習慣の改善
- カフェイン摂取の制限:コーヒーや紅茶、エナジードリンクの摂取量を減らす
- 十分な睡眠:質の良い睡眠を確保する
- ストレス管理:リラクゼーション技法や適度な運動を取り入れる
- 禁煙:喫煙者は禁煙を検討する
- 適度な運動:定期的な有酸素運動が心臓の健康に良い影響を与えます
薬物療法
症状が強い場合や、基礎疾患がある場合には薬物療法(β遮断薬や抗不整脈薬)を行います。
カテーテル治療
期外収縮の回数が多く、頻繁に症状が出現し、薬物療法で効果が不十分な場合にはカテーテル治療が検討されます。
- カテーテルアブレーション:足の付け根や首から細い管(カテーテル)を心臓内に挿入し、異常な電気信号を発生させる心筋の部位を高周波エネルギーなどで焼灼します

期外収縮と上手に付き合うコツ
期外収縮は、完全に取り除くことは難しい不整脈ですので、上手に付き合っていくことが大切です。
心理面のケア
- 正しい知識を持つ:期外収縮は命に関わる病気ではないことを理解する
- 過度の心配を避ける:症状に過剰に注意を向けないよう心がける
- リラックスする方法を見つける:瞑想やヨガなど、自分に合ったリラックス法を見つける
症状が出たときの対処法
- 深呼吸:ゆっくりと深呼吸をして、自律神経を安定させる
- 水分摂取:脱水を避け、十分な水分を摂取する
- 休息:無理をせず、適度に休息をとる
予防のためのライフスタイル
- バランスの取れた食事:ミネラルやビタミンを豊富に含む食事を心がける
- 適度な運動:定期的な有酸素運動を取り入れる
- 規則正しい生活:睡眠時間を確保し、生活リズムを整える
- ストレス管理:趣味や気分転換を大切にする
長期的な管理
- 定期的な検診:症状の変化や進行がないか確認する
- 医師との良好な関係:不安や疑問は是非ご相談ください

まとめ
期外収縮は健康な方にも起こる有病率第一位の不整脈です。その多くは特に問題なく、経過観察、生活習慣の改善で対応可能です(しゃっくりみたいなものです)。しかし、気になる症状がある方は、一度心臓や他の病気が隠れていないか詳しく検査をした方が安心です。
- 期外収縮の症状には「胸がドキッとする」「脈が飛ぶ」などがあります
- 原因はカフェイン、ストレス、疲労など日常的な要因から、基礎疾患まで様々です
- 多くの場合は生活習慣の改善で症状が軽減します
- 症状が強い場合や基礎疾患がある場合は、診察を受けましょう
当院の特徴
- 循環器内科専門医による診察
- 24時間ホルター心電図検査の実施
- 心エコー検査などの精密検査
- 薬物療法から生活指導まで総合的なアプローチ
- 必要に応じて高度専門医療機関との連携
当院では、患者さん一人ひとりの症状や生活背景に合わせた診療を心がけています。「胸がドキッとする」「脈が飛ぶ」などの症状でお悩みの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。適切な診断と治療で、安心して日常生活を送れるようサポートいたします。