- 2025年4月11日
尿酸値を下げる食べ物とは?痛風予防に効果的な食事法を徹底解説
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。

「最近、健康診断で尿酸値が高いと言われた。」「家族が痛風で苦しんでいたことがあるので自分も心配。」「尿酸値を下げるにはどんな食べ物を摂ればいいの?」
このような悩みをお持ちの方は少なくありません。実は、尿酸値と食生活には密接な関係があり、日々の食事選びが将来の痛風発作を防ぐ鍵となります。
この記事では、尿酸値を下げるために効果的な食べ物や、逆に控えるべき食品について、医学的根拠に基づきながらも分かりやすく解説します。
目次

尿酸値とは?基礎知識
尿酸とは何か
尿酸は、体内でプリン体という物質が代謝されることによって生成される老廃物です。通常は血液中を循環したあと、腎臓で濾過され、尿として体外に排出されます。
血液中の尿酸濃度を「尿酸値」と呼び、日本では基準値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されます。
これは、水に溶けきらない砂糖がコップの底に沈殿していくイメージに似ています。尿酸値が高すぎると、余分な尿酸が結晶化し、関節などに蓄積して炎症を引き起こすことがあり、これを痛風発作と呼びます。
尿酸値が高くなる原因
尿酸値が高くなる原因は主に次の3つです
- プリン体の過剰摂取:レバー、魚卵、肉など、プリン体を多く含む食品の過剰摂取
- 尿酸の生成増加:体質的な要因や、過度な飲酒、肥満など
- 尿酸の排泄低下:腎機能の低下や一部の薬剤の影響など
特に現代の食生活では、肉類や加工食品の摂取増加により、知らず知らずのうちにプリン体の摂取量が増えていることが多いです。
高尿酸血症と痛風の症状
高尿酸血症の段階
尿酸値が高くても、必ずしも自覚症状があるわけではありません。しかし、高尿酸血症が長期間続くと、次のようなリスクが高まります。
- 痛風発作
- 腎臓への負担増加(腎機能低下や腎結石)
- 動脈硬化の促進
生活習慣病全体がそうですが、やはり高尿酸血症も自覚症状がないため、気づかないうちに体にダメージを与え続けることがあります。健康診断で「尿酸値が高め」と指摘された段階から、食生活の見直しを始めることが大切です。
痛風の症状とその辛さ
高尿酸血症が進行すると痛風発作を起こすことがあります。典型的な症状は以下の通りです。
- 24時間以内にピークに達する急激な痛み(特に足の親指の付け根に多い)
- 関節の腫れや熱感、赤み
- 10日程で自然軽快する
- わずかな接触でも痛みを感じる
「熱したアイロンを押し当てられたような」「ガラスの破片で足を切ったような」と表現されるほどの激痛で、軽い接触さえも耐えられないという方もいます。
尿酸値を下げるには、プリン体の摂取を減らすだけでなく、尿酸の排泄を促進したり、尿をアルカリ性に傾けたりする食品が効果的です。以下に特におすすめの食品をご紹介します。
(参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン)
尿酸値を下げる食べ物8選

1. 乳製品(特に低脂肪乳)
カルシウムが豊富な乳製品は、尿酸値を下げる効果があると言われています。特に低脂肪乳は、尿酸の排泄を促進するタンパク質「カゼイン」を含み、効果的です。
具体例:朝食にヨーグルト100gと低脂肪牛乳200mlを摂ることで、1日の尿酸排泄量が約5〜10%増加するというデータもあります。
2. サクランボ・ブルーベリーなどの赤紫色の果物
サクランボやブルーベリーに含まれるアントシアニンには、抗炎症作用があり、痛風の痛みを和らげる効果が期待できます。
具体例:アメリカの研究では、10日間毎日サクランボを200g(約20個)食べたグループは、尿酸値が平均で15%低下したという結果もあるそうです。
3. バナナ
バナナにはカリウムが豊富に含まれており、尿酸の排泄を促進します。また、ビタミンB6も含まれ、プリン体の代謝をサポートします。
具体例:朝食にバナナ1本を毎日食べ続けた方の中には、3ヶ月で尿酸値が0.5mg/dL程度下がったケースも報告されています。

4. トマト
リコピンを豊富に含むトマトには抗酸化作用があり、体内の炎症を抑える効果が期待できます。また、カリウムも含まれているため、尿酸の排泄を促します。
具体例:サラダにトマトを取り入れることで彩りも良くなりおすすめです。トマトジュースを選択する場合は、無添加にするようにしてください。
5. 玉ねぎ
玉ねぎに含まれるケルセチンという成分には、尿酸値を下げる効果があるとされています。
具体例:毎日の料理に薄切り玉ねぎを1/4個程度取り入れるだけでも、尿酸値への良い効果が期待できます。サラダや味噌汁の具として生でも加熱しても効果的です。
6. わかめなどの海藻類
海藻類に含まれるフコイダンには、尿酸値を下げる効果があります。また、食物繊維も豊富で、腸内環境を整えます。
具体例:毎日の味噌汁にわかめを小さじ1杯程度入れるだけでも、腸内環境が改善され、尿酸の排泄が促進されおすすめです。
7. きのこ類
きのこ類はプリン体含有量が比較的少なく、食物繊維が豊富なため、腸内環境を整え、代謝を促進します。
具体例:しいたけやしめじ、えのきなどを毎日50g程度摂取することで、食物繊維の摂取量が増え、腸内環境の改善につながります。

8. 大豆製品(豆腐、納豆など)
大豆製品は良質なタンパク源でありながら、肉類に比べてプリン体含有量が少ないため、肉の代替として優れています。
具体例:週に2〜3回、夕食の肉料理を豆腐や納豆に置き換えることで、プリン体摂取量を削減できます。
尿酸値を上げる食べ物と避けるべき食習慣
尿酸値を下げるためには、摂取を控えるべき食品を知ることも重要です。以下は特に注意が必要な食品です。
プリン体の多い食品
食品カテゴリー | 特に注意が必要なもの | 摂取目安 |
肉類 | レバー、内臓肉 | 週1回まで、1回30g程度 |
魚介類 | アンコウの肝、魚卵、干物 | 週1回まで、1回50g程度 |
加工食品 | エキス、ブイヨン、濃縮スープ | できるだけ避ける |

アルコール飲料
アルコールに関しては以前のブログ「高尿酸血症・痛風とアルコールの関係。プリン体0のビールってどうなの?」で詳しく書きましたので、そちらをご覧ください。
果糖ブドウ糖液糖を含む食品
果糖ブドウ糖液糖の過剰摂取は、尿酸値を上昇させることが知られています。清涼飲料水や加工食品に含まれるため、注意が必要です。
(果糖ブドウ糖液糖は異性化糖と呼ばれる甘味料の一種です。でんぷんを原料として作られますが、ブドウ糖より安価なことから清涼飲料水やドレッシングなどに多く含まれています。)
具体例:清涼飲料水を1日500ml摂取し続けると、約3ヶ月で尿酸値が0.7mg/dL程度上昇するというデータもあります。
効果的な食事プランの例
以上を踏まえて尿酸値を下げるための効果的な1日の食事例をご紹介します。
朝食の例
- 玄米ごはん(小盛り)
- 味噌汁(わかめとなめこ入り)
- 納豆
- 低脂肪ヨーグルト
- バナナ1本
昼食の例
- 雑穀ごはん(普通盛り)
- 豆腐と野菜の炒め物
- 海藻サラダ(玉ねぎスライス入り)
- トマトのスープ
夕食の例
- 玄米ごはん(小盛り)
- 白身魚の蒸し物(脂肪の少ない魚を選ぶ)
- セロリと人参のきんぴら
- 小松菜のおひたし
- きのこの味噌汁
間食の例
- フルーツ(特にサクランボやブルーベリー)
- 無塩ナッツ(少量)
- 低脂肪乳製品
ポイント
- 動物性タンパク質は1日あたり100g程度に抑える
- 野菜や果物を積極的に摂る(1日350g以上)
- 精製炭水化物より玄米や雑穀を選ぶ
- 水分をしっかり摂る
このような食事プランにすることで、プリン体の摂取を抑えつつ、尿酸値を下げる効果のある食品をバランスよく摂ることができます。
こうしてみてみると以前高血圧の食事療法のブログ「高血圧の食事療法について。DASH食とは?」で紹介したDASH食と類似していることがわかります。生活習慣病に関する食事療法は類似点が多いのです。

食事以外での尿酸値対策
尿酸値を下げるには、食事だけでなく生活習慣全体を見直すことが重要です。
適度な運動
適度な有酸素運動は、肥満解消につながり、インスリン抵抗性を改善することで尿酸値を下げる効果があります。
ただし、激しい運動は逆に尿酸値を上げることがあるため注意が必要です。高強度の筋力トレーニングやマラソンなどの激しい運動は逆効果なこともあります。
体重管理
肥満は高尿酸血症の大きなリスク因子です。特に内臓脂肪型肥満の方は、尿酸値が高くなりやすい傾向があります。
水分摂取
十分な水分摂取は、尿酸の排泄を促進します。1日2リットル程度の水分摂取を心がけましょう。

よくある質問(Q&A)
Q1: 尿酸値を下げる薬を飲んでいるのですが、食事制限は必要ですか?
A1: はい、必要です。薬物療法は食事療法と併用することで、より高い効果が期待できます。薬だけに頼らず、プリン体の摂取制限や尿酸値を下げる食品の摂取を心がけましょう。
薬は一時的に尿酸値を下げる効果がありますが、生活習慣の改善なしでは、薬の服用をやめると再び尿酸値が上昇してしまうことが多いです。
Q2: 野菜や果物ならば、どれだけ食べても大丈夫ですか?
A2: ほうれん草、アスパラガス、カリフラワーなどはプリン体量が野菜の中では多いですが、それでも肉類に比べると少ないため気にする必要はないと考えます。果物は糖分が多いので、適量にしましょう。
一般的には、野菜は1日350g以上、果物は1日200g程度(みかんなら2つ、リンゴなら1つ程度)を目安に摂ることをお勧めします。
Q3: 尿酸値が正常でも、痛風予防のための食事制限は必要ですか?
A3: 尿酸値が正常範囲内であれば、厳格な食事制限は必要ありませんが、プリン体の過剰摂取は避けるべきです。特に家族に痛風の方いる場合は、遺伝的要因もあるため、予防的な食生活を心がけることをお勧めします。
Q4: 痛風発作が起きたときの食事はどうすればよいですか?
A4: 痛風発作時は、プリン体の摂取を極力控え、水分を多く摂ることが重要です。もちろんアルコールは禁止です。具体的には、野菜中心の食事にし、肉や魚は避け、十分な水分(1日2.5〜3リットル程度)を摂りましょう。

まとめ
尿酸値を下げるための食生活のポイントをまとめます。
1. 尿酸値を下げる食品を積極的に摂る
- 乳製品(特に低脂肪乳)
- 赤紫色の果物(サクランボ、ブルーベリーなど)
- バナナ、トマト、セロリ、玉ねぎ
- 海藻類、きのこ類、大豆製品
2. プリン体の多い食品を控える
- レバーなどの内臓肉
- 魚卵、干物
- エキス、ブイヨンなどの濃縮食品
3. アルコール(特にビール)と清涼飲料水(果糖ブドウ糖液糖を含む)を制限する
一朝一夕で尿酸値が下がるわけではありませんが、日々の食生活を少しずつ改善していくことで、痛風の予防や尿酸値の正常化につながります。毎日の食事選びの積み重ねが未来の健康を左右すると言っても過言ではありません。もし尿酸値について気になることがあれば、ぜひ当院にご相談ください。