- 2025年6月16日
【循環器専門医解説】高血圧の人が食べてはいけないものランキング!!
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。高血圧は日本人の約3人に1人が抱える国民病とも言える疾患です。適切な治療と生活習慣の改善により、血圧をコントロールすることが可能ですが、その中でも「食事」は特に重要な要素です。高血圧の方にとって、ある種の食品は血圧を上昇させるリスクがあり、できる限り避けたほうが良いものもあります。この記事では、循環器内科専門医の立場から、高血圧の方が注意すべき食品をランキング形式でご紹介します。
目次
- 高血圧の人が控えるべき食品とその理由
- 1位:塩分の多い加工食品
- 2位:醤油や味噌などの調味料
- 3位:ファストフード
- 4位:アルコール
- 5位:糖分の多い食品・飲料
- 6位:カフェインの多い飲み物
- 7位:動物性脂肪の多い食品
- 高血圧の人におすすめの食生活とは
- 高血圧患者のための実践的な食事アドバイス
- 高血圧と食生活に関するよくある質問
- まとめ

高血圧の人が控えるべき食品とその理由
高血圧の食事療法において、なぜ特定の食品を控えるべきなのでしょうか。その主な理由は、ナトリウム(塩分)の過剰摂取、カリウムとの不均衡、血管に負担をかける成分の摂取などが挙げられます。以下に、高血圧患者さんが特に注意すべき食品を、影響の大きさや科学的根拠に基づいてランキング形式でご紹介します。
1位:塩分の多い加工食品
高血圧と塩分の関係は多くの研究で明らかにされています。ナトリウムは体内の水分バランスに関わるため、摂りすぎると血液量が増え、結果的に血圧が上昇します。
特に注意したい加工食品
- 漬物・梅干し:100gあたり約2.0〜8.0gの塩分を含みます
- 塩蔵魚(塩鮭、塩サバなど):100gあたり約1.5〜3.0gの塩分
- ハム・ソーセージ:保存性を高めるために塩分が多く含まれています
- インスタント食品:カップ麺1食で約5〜6gの塩分を含むものもあります
- 佃煮・塩辛:少量でも塩分が非常に多いです
日本人の食生活では、これらの加工食品から無意識のうちに多くの塩分を摂取していることが少なくありません。日本高血圧学会では1日の塩分摂取量を6g未満にすることを推奨していますが、日本人の平均摂取量は約10gと言われておりとても多い状態です。そしてなんとWHO(世界保健機関)は1日の塩分摂取量を5g未満に抑えることを推奨しており、塩分制限の大切さが伺い知れます。

2位:醤油や味噌などの調味料
調味料は料理には欠かせませんが、使い方によっては知らず知らずのうちに塩分摂取量が増えてしまいます。
塩分の多い主な調味料
- 醤油:大さじ1杯(15ml)で約2.3gの塩分
- 味噌:大さじ1杯(18g)で約1.2gの塩分
- ソース類:中濃ソース大さじ1杯で約0.8gの塩分
- めんつゆ:大さじ1杯で約0.5〜1.2gの塩分(濃度による)
これらの調味料は日本食に欠かせないものですが、使用量を減らしたり、減塩タイプを選んだりすることで、塩分摂取を抑えることができます。
3位:ファストフード
忙しい現代人にとって便利なファストフードで私自身も大好きですが、全体として塩分も脂質も多いため高血圧の方にとっては注意が必要です。
血圧に悪影響を与えるファストフード
- ハンバーガーセット:1食で1日の塩分摂取目標量の半分以上を摂取することも
- ピザ:チーズやハムなどの具材に多くの塩分が含まれる
- フライドポテト:塩分に加え、油で揚げられているため、カロリーも高い
- 唐揚げなどの揚げ物:塩分と脂質の両方が問題に
ファストフードでは、栄養バランスが偏りがちで、知らず知らずのうちに塩分、脂質、カロリーの摂取過多になってしまいます。

4位:アルコール
適度な飲酒は問題ないですが、過剰な飲酒は高血圧の原因となります。
エタノールで男性20-30ml以下に制限することを推奨 (女性はその半分)
- 日本酒:1合(180ml)
- ビール:中ジョッキ1杯(約500ml)
- 焼酎:半合
- ワイン:2杯
- カクテル・リキュール:度数によるが、糖分も多く含むものが多く注意
アルコールは一時的に血管を拡張させますが、常習的な飲酒は交感神経系を刺激し、血圧を上昇させます。上記の量以下に制限をして休肝日を設けましょう。
5位:糖分の多い食品・飲料
過剰な糖分摂取は、肥満や糖尿病のリスクを高めるだけでなく、間接的に高血圧にも影響します。
血圧に影響する糖分の多い食品
- 清涼飲料水:500mlのペットボトル1本に約50g(砂糖大さじ約12杯分)の糖分を含むものもあります
- 菓子パン・ケーキ:砂糖に加え、バターなどの脂質も多い
- アイスクリーム:糖分と脂質の両方が多く含まれる
- チョコレート・キャンディ:少量でも糖分が非常に多い
過剰な糖分摂取は体重増加につながり、肥満は高血圧の大きなリスク因子です。また、インスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病のリスクも高めます。

6位:カフェインの多い飲み物
カフェインは一時的に血圧を上昇させる作用があります。特に高血圧の方は摂取量に注意が必要です。
カフェインと血圧の関係
- コーヒー:1杯(約120ml)に約60〜80mgのカフェインを含む
- 紅茶:1杯(約150ml)に約40〜60mgのカフェインを含む
- エナジードリンク:高濃度のカフェインを含むものが多い
- 緑茶:1杯(約150ml)に約30mgのカフェインを含む
カフェインは一時的に交感神経を刺激し、血圧を上昇させる効果があります。高血圧の方は、特に就寝前のカフェイン摂取を避け、1日の摂取量を控えめにすることが望ましいでしょう。
7位:動物性脂肪の多い食品
動物性脂肪、特に飽和脂肪酸の過剰摂取は、動脈硬化を促進し、結果的に高血圧のリスクを高めます。
注意したい高脂肪食品
- バラ肉・霜降り肉:脂肪分が多く、カロリーも高い
- 皮付き鶏肉:皮には多くの脂肪が含まれる
- バター・マーガリン:少量でも多くの脂肪を含む
- フライドチキン・天ぷら:油で揚げることでさらにカロリーが増加
飽和脂肪酸は悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増加させ、血管の健康に悪影響を与えます。高血圧の管理においては、脂質のバランスにも注意が必要です。

高血圧の人におすすめの食生活とは
高血圧の食事療法は、単に「食べてはいけないもの」を避けるだけでなく、積極的に摂るべき食品もあります。以下に、高血圧の方におすすめの食生活をご紹介します。
DASH食の実践
DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、高血圧の方のための食事法として科学的に効果が証明されています。
DASH食の特徴
- 野菜と果物を豊富に摂る
- 全粒穀物を選ぶ
- 低脂肪または無脂肪の乳製品を選ぶ
- 魚、鶏肉、豆類を主なタンパク源とする
- ナッツ類や種子を適量摂る
- 塩分、砂糖、赤身肉を制限する
DASH食を実践することで、薬物療法なしでも血圧を約8〜14mmHg下げる効果が期待できます。
DASH食に関しての詳細は以前のブログ「高血圧の食事療法について。DASH食とは?」をご覧ください。
カリウムを多く含む食品の摂取
カリウムはナトリウム(塩分)の排出を促し、血圧を下げる効果があります。
カリウムが豊富な食品
- バナナ・アボカド:手軽に摂取できるカリウム源
- ほうれん草・小松菜:カリウムだけでなく、食物繊維も豊富
- さつまいも・じゃがいも:日常的に摂取しやすい食品
- 大豆製品(豆腐、納豆など):良質なタンパク質も一緒に摂取できる
ただし、腎機能に問題がある方は、カリウムの過剰摂取に注意が必要です。必ず主治医に相談しましょう。

高血圧患者のための実践的な食事アドバイス
知識を得るだけでなく、実際の食生活に取り入れることが重要です。以下に、日常的に実践できるアドバイスをご紹介します。
減塩のテクニック
塩分を減らしながらも美味しく食べるためのコツです。
- 香辛料・ハーブの活用:塩の代わりに風味を加える
- レモンや酢の利用:酸味で塩気を補う
- だしを効かせる:うま味で満足感を得る
- 減塩調味料の活用:通常の調味料より塩分が少ない
外食時の注意点
外食が避けられない場合のポイントです。
- メニュー選びの工夫:煮物より焼き物、揚げ物よりグリルを選ぶ
- 調味料の使い方:ドレッシングやソースは別添えにしてもらい、量を調整する
- 汁物の工夫:ラーメンなどの汁は残す
- 和食の選び方:塩分の多い漬物や佃煮などは控える
食品表示の見方
食品を購入する際のポイントです。
- 栄養成分表示の確認:塩分(ナトリウム)含有量をチェック
- 原材料の確認:塩、醤油、味噌などが上位にある食品は塩分が多い可能性
- 加工食品の選び方:「減塩」「低塩」表示のある商品を選ぶ
- 調味料の選び方:減塩醤油や減塩味噌を活用する

高血圧と食生活に関するよくある質問
患者さんからよく寄せられる質問とその回答です。
Q1: 完全に塩分を排除する必要がありますか?
A: 完全な塩分排除は必要ありません。塩分(ナトリウム)は体に必要な栄養素です。大切なのは適量を守ることで、日本高血圧学会は1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることを推奨しています。極端な制限よりも、継続可能な範囲で減塩を心がけましょう。
Q2: 減塩すると味が薄く感じて食事が楽しめません。どうすればよいですか?
A: 減塩に慣れるには時間がかかります。徐々に塩分を減らしていくことで、味覚は約2〜3週間で順応します。また、だしをしっかり取る、香辛料やハーブ、レモンなどの酸味を活用する、食材本来の味を生かす調理法を取り入れるなどの工夫で、減塩でも美味しく食べることができます。
Q3: お酒は完全に禁止ですか?
A: 完全禁酒が必要なわけではありませんが、適量を守ることが重要です。男性は日本酒1合(または同等のアルコール量)程度、女性はその半分を目安にし、週に2日は休肝日を設けることをおすすめしています。お酒が好きな方は、「晩酌を楽しむために血圧をコントロールする」という前向きな考え方も有効です。
Q4:薬を飲んでいれば、食事制限は必要ないですか?
A: 薬物療法と食事療法は車の両輪です。薬を服用していても、適切な食事管理は必要です。
- 薬だけでは不十分な場合がある
- 食事管理により薬の量を減らせる可能性がある
- 食習慣の改善は高血圧以外の生活習慣病予防にも効果的
ただし、自己判断で薬を減らしたり中止したりするのは危険ですので、必ずご相談ください。

まとめ
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、自覚症状がないまま進行する恐ろしい病気です。しかし、適切な食事管理と生活習慣の改善によって、多くの場合コントロール可能です。今回ご紹介した「食べてはいけないものランキング」を参考に、ご自身の食生活を見直してみてください。すべてを一度に変えるのは難しいですが、少しずつ改善していくことが大切です。
当院では、高血圧の患者さんお一人おひとりの状態に合わせた食事指導を行っています。高血圧でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。食事療法と適切な薬物療法を組み合わせることで、健やかな毎日を送りましょう。