• 2026年4月3日

【2026年4月~】妊婦さんへのRSウイルスワクチン定期接種開始!!赤ちゃんを守る「母子免疫」をわかりやすく解説

丹野内科・循環器・糖尿病内科(松戸駅徒歩5分 キテミテマツド8階)


こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。

2026年4月から、妊婦さんへのRSウイルスワクチンが定期接種の対象となりました。これは、日本の予防接種の歴史上、「母子免疫ワクチン」として初めて定期接種化された、とても画期的な出来事です。

「RSウイルスって何?」「妊娠中にワクチンを打っても大丈夫?」「赤ちゃんへの効果はどのくらいあるの?」——そんな疑問や不安を抱えていらっしゃるお母さんも多いのではないでしょうか。

この記事では、内科専門医の視点から、RSウイルスの基礎知識、ワクチンの仕組みと効果、接種のタイミング、副反応などを、できるだけわかりやすくご説明します。赤ちゃんとご自身の健康を守るための大切な情報として、ぜひご参考になさってください。


目次

  1. RSウイルスとはどんなウイルスか
  2. 赤ちゃんへの影響—なぜ生後6ヶ月未満が危険なのか
  3. 母子免疫ワクチンの仕組み—お母さんの抗体が赤ちゃんを守る
  4. 2026年4月から定期接種化—何が変わるのか
  5. 接種の時期・方法・対象者
  6. ワクチンの有効性と安全性
  7. よくあるご質問(Q&A)
  8. まとめ—赤ちゃんへの最初のプレゼント

RSウイルスとはどんなウイルスか

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、飛沫・接触感染で広がる呼吸器系のウイルスです。

大人や3歳以上の子どもが感染した場合は、鼻水・咳・発熱といった「ただの風邪」と区別がつかない程度の症状で、1週間前後で回復することがほとんどです。そのため、「RSウイルス?あまり聞いたことがない」という方も多いかもしれません。

しかし、このウイルスは非常に感染力が強く、2歳までにほぼ全員が一度は感染するとされています。そして一度かかっても何度も感染するという特徴を持ちます。

つまり、生まれてきた赤ちゃんのほぼ全員が、遅かれ早かれRSウイルスに出会うということです。問題は「いつ出会うか」にあります。

赤ちゃんへの影響—なぜ生後6ヶ月未満が危険なのか

RSウイルスが特に怖いのは、生後6ヶ月未満の赤ちゃんや高齢者にとっての重症化リスクです。今回は主に赤ちゃんにフォーカスを当てて解説します。

生後6ヶ月未満でRSウイルスに感染すると、重症な肺炎や気管支炎になることが多いとされています。日本では、毎年12万〜14万人の2歳未満の乳幼児が感染し、そのうち約3万人が重症な呼吸器症状(咳・呼吸困難・喘鳴)で入院しています。

生まれたばかりの赤ちゃんは、免疫システムがまだ十分に発達していません。大人であれば軽く済むウイルスが、小さな体では細気管支炎(気管支の奥の炎症)や重症肺炎を引き起こすことがあります。さらに、乳児期早期には無呼吸発作を起こすこともあります。

残念ながら、現在、RSウイルス感染症に対する特効薬(抗ウイルス薬)はなく、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。そのため、感染予防が非常に重要となります。従来は冬の感染症と言われていましたが、最近は春夏にピークがきていることもあるので流行シーズンは読めませんが、「生まれてすぐにRSウイルスにかかってしまった」というケースは決して珍しくありません。


母子免疫ワクチンの仕組み—お母さんの抗体が赤ちゃんを守る

では、どうすれば生まれたばかりの赤ちゃんをRSウイルスから守れるのでしょうか。

ここで注目されているのが「母子免疫」という考え方です。

妊婦さんにワクチンを接種すると、お母さんの体内でRSウイルスに対する抗体(免疫の武器)が作られます。その抗体は胎盤を通って赤ちゃんに届き、生まれた直後からRSウイルスと戦う力を持った状態で誕生することができます。

イメージとしては、「お母さんが赤ちゃんのために免疫の盾(たて)を先に準備して、胎盤を通して届ける」ようなイメージです。

母子免疫ワクチンとは、「妊婦が接種すると、母体内で作られた抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、生まれた乳児が出生時からRSウイルスに対する予防効果を得ることができるワクチンです。」

これは、赤ちゃん自身にはまだ打てないワクチンの効果を、お母さんが「代わりに」用意してあげるという、とても合理的な予防策です。

2026年4月から定期接種化—何が変わるのか

2026年4月から妊婦さんへのRSウイルスワクチンの定期接種が始まりました。「母子免疫ワクチン」が定期接種の対象となるのは初めてのことです。以前は任意接種(自己負担)でしたが、RSウイルスワクチン (アブリズボ) は非常に高価なため接種する方は限られていました。定期接種化により、公費負担・無料で接種できるようになりました。

定期接種になることの意義は、費用負担の軽減だけにとどまりません。「国が推奨する予防接種」として位置づけられることで、より多くの妊婦さんがアクセスしやすくなり、社会全体として乳幼児のRSウイルス重症化を減らすことが期待されます。

なお、使用するワクチンについては、組換えRSウイルスワクチンであるアブリスボ®(ファイザー社)を母子免疫ワクチンとして使用します。

接種の時期・方法・対象者

接種対象者

定期接種の対象は、妊娠28週0日〜36週6日までの妊婦です。

接種回数と方法

妊娠28週0日から36週6日までの間に1回、筋肉内注射します。

なぜ28〜36週なのか

接種してから抗体が十分に作られ、さらに胎盤を通じて赤ちゃんに届くまでには、一定の時間が必要です。ワクチンの効果が現れるまでには約2週間程度かかるとされています。そのため、出産予定日から逆算して、適切な時期に接種を受けることが重要です。

また、研究データによれば、母体抗体レベルは接種後2〜3週で最も高くなり、出産の5週以上前の接種が最も胎盤移行率が高いことが示されています。

なお、接種後14日以内に出生した乳児における有効性は確立していないことから、妊娠38週6日までに出産を予定している場合は医師に相談してください。早産が予想される場合などは、担当の産婦人科医と相談のうえで接種時期を検討されることをお勧めします。

ワクチンの有効性と安全性

有効性について

国際共同臨床試験(MATISSE試験)のデータでは、医療受診を要した重症RSV関連下気道感染症に対する有効性は生後90日以内81.8%、生後180日以内69.4%でした。

生後3ヶ月以内の重症化リスクが最も高い時期に、8割以上の防御効果が得られるというのは、非常に心強いデータです。

安全性について

妊娠中のワクチン接種に不安を感じる方は多いと思います。臨床試験では、接種後の副反応として注射部位の痛みや疲労感が主な訴えとして報告されていますが、重篤な副反応の頻度はプラセボ(偽薬)群と同程度であることが確認されています。

ワクチンの安全性については、接種を担当する医師から詳しく説明を受け、ご自身の体調や妊娠経過を踏まえたうえで判断されることが大切です。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 以前の妊娠でRSウイルスワクチンを打ちました。今回の妊娠でも接種できますか?

A. 毎回の妊娠において接種を検討することができます。かかりつけ医にご相談ください。

Q2. 定期接種なので費用は無料ですか?

A. RSウイルスワクチンは予防接種法上のA類疾病に追加されたので、全額公費負担(無料)で受けることができます。手続きの詳細については、お住まいの市区町村の窓口または医療機関にご確認ください。

Q3. 赤ちゃんに直接ワクチンを打つことはできないのですか?

A. RSウイルスワクチンは乳児に接種するワクチンがありません。そのため、現在は妊婦さんへの母子免疫ワクチンが、生後早期の赤ちゃんを守る最も有効な手段とされています。なお、出生後の乳幼児に対してRSウイルスの予防目的で投与するモノクローナル抗体製剤があり、重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児・乳児・幼児に対しては医療保険の適用となっています。ただし、この抗体製剤は現時点で定期接種の対象ではありません。

Q4. どこで接種を受けられますか?

A. 産婦人科のほか、内科でも対応している医療機関があります。かかりつけ医にご相談いただくか、お住まいの自治体の予防接種窓口にお問い合わせください。当院でも対応しております。


まとめ—赤ちゃんへの最初のプレゼント

  • RSウイルスは2歳までにほぼすべての子どもが感染する一般的なウイルスですが、生後6ヶ月未満では重症化リスクが高く、年間約3万人の乳幼児が入院しています。
  • 有効な治療薬がないため、感染を予防することが最も重要です。
  • 妊婦さんへのRSウイルスワクチン接種(母子免疫)は、お母さんの抗体を赤ちゃんに届けることで、生まれた直後から守る仕組みです
  • 2026年4月から定期接種化され、無料で受けられるようになりました(日本で初の母子免疫ワクチン定期接種)
  • 接種推奨時期は妊娠28〜36週、1回の筋肉内注射です
  • 生後90日以内の重症RSV感染症への有効率は8割程度と報告されています

「我が子を守りたい」というお気持ちは、すべてのお母さんに共通する思いです。RSウイルスワクチンは、生まれてくる赤ちゃんへの”最初のプレゼント”として、ぜひ検討していただきたい選択肢です。

接種を検討される際は、体調・妊娠週数・既往歴などを踏まえた個別の判断が必要ですので、必ずかかりつけの産婦人科医にご相談ください。当院でも内科的な観点からご相談を承っております。お気軽にお声がけください。

以前高齢者のRSウイルスワクチンについてのブログも記載しておりますのでそちらも併せてご覧ください。「高齢者に対するRSウイルスワクチンの有効性。RSウイルスは子供の感染症!?」


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参考文献・引用元

  1. 厚生労働省「RSウイルスワクチン」(2026年)
  2. 国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所「RSウイルス母子免疫ワクチンと抗体製剤 ファクトシート」(令和7年10月22日)
  3. 日本小児科学会「妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン」(2025年)
  4. 日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会「成人のRSウイルスワクチンに関する見解」(2025年12月9日)
  5. Kampmann B, et al. Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants (MATISSE試験). N Engl J Med. 2023;388(16):1451-1464.

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医

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