• 2026年4月30日

健康診断で「心電図異常」と言われたら?松戸の循環器内科専門医がわかりやすく解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長の田邉弦です。

毎年受ける健康診断や職場の定期健診で、「心電図に異常があります」という結果を受け取り、不安な気持ちになった経験はないでしょうか。「心臓に何か悪いところがあるのだろうか」「すぐに病院に行くべきなのか」と、心配になる方は非常に多くいらっしゃいます。しかし、「心電図異常」と言っても、その内容はさまざまです。中には経過観察でよいものも多く、すべてが緊急を要するわけではありません。一方で、見逃すと命に関わる可能性がある所見も存在します。

この記事では、循環器内科専門医として、健康診断で心電図異常を指摘された方に向けて、心電図の基礎から異常の種類・対処法まで、できるだけわかりやすく解説します。「まず何をすべきか」を正しく理解していただくことで、適切なタイミングできるように参考にしていただければと思います。


目次

  1. 心電図とは何か?基礎をやさしく解説
  2. 健康診断で指摘される主な心電図異常の種類
  3. 「要精密検査」「要経過観察」の違いとは?
  4. 心電図異常があったときの具体的な対処法
  5. 日常生活で気をつけるべきこと
  6. よくある質問(Q&A)
  7. まとめ

心電図とは何か?基礎をやさしく解説

心電図は「心臓の電気信号」を記録する検査

心臓は、電気信号によって動いています。この電気信号の流れを体の表面から記録したものが「心電図(ECG:Electrocardiogram)」です。

わかりやすく例えるなら、心臓は「電気で動くポンプ」のようなものです。そのポンプに流れる電気の波形を、皮膚に貼ったシールで拾い上げて、描き出すのが心電図検査です。

健康診断では一般的に「12誘導心電図」という方法が用いられます。両手・両足・胸の合計10か所に電極を貼り付け、12誘導の電気的な活動を記録します。検査時間は1〜2分程度で、痛みはまったくありません。

正常な心電図の波形

正常な心電図には、「P波」「QRS波」「T波」という特徴的な山と谷があります。

  • P波:心房(心臓の上の部屋)が収縮するときの波
  • QRS波:心室(心臓の下の部屋)が収縮するときの波(最も大きな山)
  • T波:心室が次の収縮に備えて回復するときの波

これらの波の形・高さ・間隔が一定の範囲内に収まっていれば「正常」とされます。「異常」とは、この波形がなんらかの理由で正常な範囲を外れた状態を指します。

健康診断で指摘される主な心電図異常の種類

健康診断の心電図結果には、さまざまな「所見」が記載されることがあります。代表的なものをご紹介します。

不整脈(リズムの乱れ)

心臓の拍動が正常なリズムから外れた状態を「不整脈」といいます。

期外収縮(きがいしゅうしゅく):健康診断の心電図異常として最も多いものの一つです。心臓が「規則正しいリズムの間に一回余分に動く」現象で、「脈がとぶ」「胸がドキッとする」と感じる方も多くいらっしゃいます。健康な方にもよく見られ、心臓に器質的な病気がない場合は経過観察でよいことがほとんどです。

期外収縮に関しては以前のブログ「「胸がドキッとする。」「脈が飛ぶ。」原因の第一位!期外収縮とは?」をご覧ください。

心房細動(しんぼうさいどう):心臓の上の部屋(心房)が細かく震えてしまう不整脈です。日本では推定100万人以上の方が罹患していると言われ、高齢になるほど頻度が増えます。動悸や脈の乱れを感じる方がいる一方で、無症状のまま健康診断で初めて発見されるケースも少なくありません。

心房細動では心臓内に血のかたまり(血栓)ができやすくなるため、脳梗塞(心原性脳塞栓症)のリスクが高まることが知られています。日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療」では、心房細動の早期発見と、患者さんの年齢・症状・生活習慣に合わせた個別化された治療の重要性が強調されています。脳梗塞リスクに応じた抗凝固療法をはじめ、薬物療法と非薬物療法(カテーテルアブレーションなど)を組み合わせた包括的な管理が推奨されています。

心房細動に関し手の詳細は以前のブログ「なかやまきんに君のCMで有名!?心房細動って何が問題なの?」をご覧ください。

徐脈(じょみゃく)・頻脈(ひんみゃく):心拍数が安静時に60回/分を下回る状態を徐脈、100回/分を上回る状態を頻脈といいます。スポーツを習慣的に行っている方は徐脈になることも多いですし、健康診断で緊張していらっしゃる方は頻脈になることもあります。

ST変化・T波異常

「ST低下」や「T波の陰転化(いんてんか)」は、心臓の筋肉(心筋)への血流が低下している可能性を示すことがあります。狭心症や心筋梗塞のサインとして重要視される所見です。ただし、貧血や甲状腺異常など心臓以外の原因で生じることもあります。

左室肥大・右室肥大

心臓の筋肉が厚くなった(肥大した)状態を示す所見です。長年にわたる高血圧が原因となることが最も多く、心臓に負担がかかり続けていたサインと考えられます。血圧管理が不十分な方に多く見られます。

脚ブロック

心臓の電気信号が伝わる「通路(脚)」に問題があり、電気の伝わり方が遅れている状態です。「右脚ブロック(うきゃくブロック)」は健康な方にも多く見られ、問題になることは少ないとされています。一方「左脚ブロック(さきゃくブロック)」は、心疾患を合併していることが多いため、精密検査が必要です。

「要精密検査」「要経過観察」の違いとは?

健康診断の結果には、異常の重要度に応じて以下のような区分が記載されることがあります。

区分内容推奨される対応
異常なし正常範囲特になし
要経過観察軽度の変化・経過を見てよい所見生活習慣の見直し、次回健診での再確認
要再検査再度検査して確認が必要医療機関での再検査
要精密検査さらに詳しい検査が必要専門医への受診が推奨される
要治療治療が必要な状態早急に医療機関への受診が必要

「要精密検査」と書かれていても、その場で緊急な処置が必要なケースは多くありませんが、放置することはお勧めできません。「また来年の健診でいいか」と先送りにしがちですが、心臓に関わる異常は早期発見・早期対応が重要です。

心電図異常があったときの具体的な対処法

STEP 1:結果票をよく確認する

まず、健診結果の「所見名」と「判定区分」を確認しましょう。「不完全右脚ブロック・要経過観察」と「ST低下・要精密検査」では、対応が異なります。

STEP 2:自覚症状を整理する

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関への受診が推奨されます。

  • 胸の痛みや圧迫感・締めつけ感
  • 動悸(脈がとぶ、速くなる、ドキドキする)
  • 安静時や労作時の息切れ
  • 失神・意識を失ったことがある (または失いそうな感じ)

これらの症状がない場合でも、「要精密検査」と判定された方は、早めに循環器内科への受診をご検討ください。

STEP 3:循環器内科専門医を受診する

内科のかかりつけ医や循環器内科専門医に相談することをお勧めします。受診の際は、健診の結果票ともしあれば心電図のコピーをお持ちください。

必要に応じて以下のような追加検査が行われることがあります。

  • ホルター心電図(24時間心電図):日常生活中の心電図を24時間連続して記録する検査。健診時には捉えられなかった不整脈の検出に有効です。
  • 心臓超音波検査(心エコー):心臓の大きさ・動き・弁の状態をリアルタイムで確認できます。
  • 運動負荷心電図(トレッドミル・マスター法):運動中の心電図変化を確認する検査で、狭心症の診断に役立ちます。(当院では行っておりません)
  • 血液検査:心筋トロポニン(心筋ダメージのマーカー)・BNP(心不全のマーカー)などを確認します。

日常生活で気をつけるべきこと

心臓に優しい生活習慣

心電図異常の予防・進行抑制のために、以下のような生活習慣の見直しが一般的に推奨されています。

血圧の管理と測定習慣:高血圧は心肥大や心房細動、さらには狭心症・心筋梗塞の大きなリスク因子です。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、年齢や合併症にかかわらず、診察室血圧130/80mmHg未満を基本目標として推奨されています。また、家庭での血圧測定も重視されており、朝・夜に計測した家庭血圧の平均が125/75mmHg未満を目安とすることが示されています。

JSH2025では、ガイドラインの名称が「高血圧治療ガイドライン」から「高血圧管理・治療ガイドライン」へと改められました。これは、薬で血圧を下げることだけでなく、日常的な血圧測定・減塩・体重管理・適度な運動などの生活習慣改善を治療の柱と位置づける、より包括的なアプローチへの転換を意味しています。塩分摂取量は1日6g未満が目安とされており、毎日の家庭血圧の測定習慣をつけることが特に重要とされています。

適度な運動:過度な運動は不整脈を誘発することもありますが、適度な有酸素運動(ウォーキング・軽い水泳など)は心血管系の健康維持に効果的とされています。主治医の指示のもとで行うことが大切です。

禁煙・節酒:喫煙は高血圧や冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)の重大なリスク因子です。また、多量のアルコール摂取は心房細動の誘発因子になることが知られており、節度ある飲酒が推奨されています。

ストレスの管理:過度なストレスや睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、不整脈を引き起こす誘因になることがあります。十分な睡眠と適切なストレス発散が大切です。

糖尿病・脂質異常症の管理:これらは心疾患のリスクを高める重大な危険因子です。健康診断で血糖やコレステロールの異常も指摘された方は、心電図の異常と合わせて専門的な評価を受けることが推奨されます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 健診で「不完全右脚ブロック」と言われましたが、危険ですか?

A. 不完全右脚ブロックは、健康な方にも比較的よく見られる所見です。自覚症状もない場合は、多くのケースで経過観察となります。指摘された場合は健診結果の区分に応じて、循環器内科受診されることをお勧めします。

Q2. 昨年の健診と同じ「要経過観察」でした。受診しなくてよいですか?

A. 要経過観察であれば基本的に受診は不要です。ただしもし自覚症状がある場合は、受診されることをお勧めします。

Q3. 心電図異常があると、激しい運動は禁止ですか?

A. 異常の種類によって大きく異なります。軽度の機能的な異常であれば運動制限が不要なケースが多いですが、心不全や重篤な不整脈がある場合は運動の内容や強度の制限が必要なこともあります。必ず主治医にご相談の上、個別に判断を仰いでください。

Q4. 「心電図異常」は遺伝しますか?

A. 遺伝的要素が関与する心疾患(肥大型心筋症・QT延長症候群など)は存在します。家族に若くして突然死した方や重篤な心疾患の方がいる場合は、その旨を主治医にお伝えください。

Q5. クリニックでも精密検査は受けられますか?

A. 当院 丹野内科・循環器・糖尿病内科(松戸駅徒歩5分・キテミテマツド8階)では、私が循環器内科専門医ですので、ホルター心電図・心臓超音波検査(心エコー)など、健診後の精密検査に対応しております。健診結果をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。

まとめ

健康診断での「心電図異常」は、すべてが危険なわけではありませんが、内容によっては専門的評価が重要です。ポイントを整理します。

  • 心電図は心臓の電気信号の波形を記録する検査で、所見の種類によって意味が大きく異なる
  • 「要精密検査」と判定された場合は、自覚症状の有無にかかわらず早めの受診が推奨される
  • 胸痛・動悸・息切れ・失神などの症状がある場合は速やかな受診を
  • 日常生活での血圧管理(目標:診察室血圧130/80mmHg未満・家庭血圧125/75mmHg未満)・禁煙・適度な運動・糖尿病・脂質管理が心臓の健康維持に重要
  • 健診の結果票を持参して、循環器内科専門医への相談を検討する

「去年も同じだったし、大丈夫だろう」と思っていても、心臓の問題は自覚症状が現れにくいことがあります。健診で心電図異常を指摘されたら、ぜひ一度、循環器内科専門医にご相談ください。

当院 (丹野内科・循環器・糖尿病内科 松戸駅徒歩5分・キテミテマツド8階)では、循環器専門医が心電図の精密検査から生活習慣のアドバイスまで行っております。健診結果についてご不明な点があれば、どうぞお気軽にお越しください。


参考文献

  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会「2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療」
  2. 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医

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