• 2026年5月9日

高血圧の薬はいつまでのむ必要があるの?やめられる条件と正しい知識を循環器内科医が解説


こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長の田邉弦です。

降圧薬(血圧を下げる薬)を処方されたとき、多くの方が「本当にずっと飲み続けなければいけないのか」という不安を感じられると思います。薬をやめられるのか、やめたらどうなるのか、そもそも飲み続けることに意味はあるのか—今回はそんな疑問に、循環器内科専門医の立場から丁寧にお答えします。

この記事を読み終えるころには、「なぜ高血圧の薬を飲み続けることが大切なのか」「どんな場合ならやめられる可能性があるのか」が、しっかりとわかっていただけると思います。是非ご覧ください。


目次

  1. 高血圧とはどんな状態?まず基礎から理解しよう
  2. 高血圧の薬(降圧薬)はなぜ必要なのか
  3. 「高血圧の薬はいつまで飲む?」——原則として長期服用が基本
  4. 薬をやめられる可能性があるケースとは
  5. 薬を勝手にやめると何が起きる?
  6. 生活習慣の改善で薬を減らせる?
  7. よくある質問(Q&A)
  8. まとめ

高血圧とはどんな状態?まず基礎から理解しよう

血圧とは、心臓が全身に血液を送り出すときに、血管の壁にかかる圧力のことです。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、診察室での血圧が 140/90mmHg以上 の場合を「高血圧」と定義しています。

ただし、高血圧はほとんどの場合、自覚症状がありません。

頭痛や肩こりを感じる方もいますが、血圧が多少高くても「体がだるい」「めまいがする」といった症状がない方がほとんどです。そのため、健康診断ではじめて指摘されたり、ほかの病気で受診した際に発見されることも少なくありません。

症状がないからこそ、「自分は大丈夫」と思って放置してしまう方も多いのですが、高血圧を長年放置すると、血管や心臓・脳・腎臓などに徐々にダメージが蓄積されていきます。

高血圧の症状に関しては、以前のブログ「自分の身体に潜むサイレントキラー ~高血圧の症状と対策~」もご覧ください。


高血圧の薬(降圧薬)はなぜ必要なのか

血管へのダメージを防ぐために

高い血圧が長期間続くと、血管の壁は常に強い圧力にさらされ続けます。これを「水道管に強い水圧が常にかかり続けている」状態に例えるとわかりやすいかもしれません。水道管であれば徐々に傷み、やがて破裂してしまいますよね。

血管も同様に、高血圧が続くと動脈硬化(血管が硬く・もろくなる状態)が進行します。

脳卒中・心筋梗塞・腎不全などの予防のために

長期的な高血圧が引き起こす主なリスクとして、以下が挙げられます。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血):脳の血管が詰まったり、破れたりすることで起こる
  • 心筋梗塞・狭心症:心臓の血管が狭くなったり、詰まったりすることで血流が阻害される
  • 心不全:心臓が高い圧力にさらされ続けた結果、肥大し機能が低下する
  • 慢性腎臓病:腎臓の細かい血管がダメージを受け、腎機能が落ちる
  • 大動脈瘤:太い血管が高い血圧にさらされ、拡張し、破裂の危険が生じる

降圧薬を使って血圧を適切にコントロールすることで、こうしたリスクを大きく下げることができます。複数の大規模臨床試験(SPRINT試験など)でも、血圧を適切に管理することで脳心血管イベントが有意に減少することが示されています。

「高血圧の薬はいつまで飲む?」——原則として長期服用が基本

結論からお伝えします。

高血圧の薬は、原則として長期間 多くの場合は生涯にわたって服用を続けることが推奨されます。

これは医師や製薬会社が儲けのために推奨しているわけではありません。理由は明確です。

高血圧の原因の大部分が「本態性高血圧」だから

高血圧の約90〜95%は、特定の原因疾患が見つからない「本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)」です。

本態性高血圧は、遺伝的な体質・加齢・生活習慣などが絡み合って生じます。つまり、「薬で血圧を正常値に戻しても、薬をやめれば多くの場合はまた血圧が上がる」のです。

薬を飲んでいる間は血圧が正常になるため、「治った」と感じる方もいらっしゃいますが、それはあくまでも「薬の効果で血圧がコントロールされている状態」であり、高血圧の体質そのものが治ったわけではありません。

薬をやめれば、多くの場合は元の高い血圧に戻ります。

薬をやめられる可能性があるケースとは

では、高血圧の薬を一切やめることはできないのでしょうか。

実は、一部のケースでは薬の減量や中止が検討される場合があります。 ただし、これは必ず主治医と相談の上で、慎重に行われるべきです。

①二次性高血圧の原因が取り除けた場合

高血圧のうち約5〜10%は、特定の原因疾患による「二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)」です。

原発性アルドステロン症・腎動脈狭窄・甲状腺疾患・睡眠時無呼吸症候群などが原因となることがあり、これらを治療した場合には、血圧が正常化して薬が不要になることがあります。

②生活習慣の改善で血圧が十分に下がった場合

体重の減量・塩分制限・有酸素運動の継続・禁煙・節酒——こうした生活習慣の改善によって血圧が大幅に改善し、軽度の高血圧であれば薬の減量や中止を検討できるケースもあります。

ただし、薬の中止はあくまでも主治医の判断のもと、十分な期間の経過観察を経て行われます。

③高齢者で過度な降圧が問題になる場合

高齢の方では血圧を下げすぎることによる「ふらつき・転倒・失神」などのリスクが問題になることもあります。高齢者でも血圧の目標値は基本的には変わりませんが、JSH2025でも、高齢者では過度な降圧に注意することが明記されています。このような場合には、薬の減量や調整が行われることがあります。

薬を勝手にやめると何が起きる?

「副作用が心配だから」「薬を飲むのが嫌になったから」と、自己判断で降圧薬を急に中止することは非常に危険です。

リバウンドによる急激な血圧上昇

薬を急に中止すると、血圧が急激に上昇することがあります。

脳卒中・心筋梗塞のリスク上昇

血圧コントロールが突然途絶えることで、脳卒中や心筋梗塞が起こるリスクが高まります。

「薬を飲み忘れた翌日に脳梗塞を起こした」という方が、実際の臨床現場では少なくありません。

薬に対する不安や疑問がある場合には、まず主治医に相談してください。薬の種類を変える・用量を調整するなど、さまざまな選択肢があります。

生活習慣の改善で薬を減らせる?

「薬に頼らずに高血圧を治したい」というお気持ちはとても自然なことです。

生活習慣の改善は、降圧薬と並んで非常に重要な治療の柱です。以下のような取り組みが、血圧改善に効果的と考えられています。

生活習慣の改善期待される降圧効果(目安)
食塩制限(6g/日未満)約2〜4 mmHg
体重減量(1kgあたり)約1 mmHg
有酸素運動(週150分以上)約4〜7 mmHg
節酒(適量を守る)約2〜4 mmHg
禁煙血管保護・心血管リスク低減

これらを組み合わせることで、薬の用量を減らせる可能性があります。ただし、効果には個人差があり、重度の高血圧や心血管リスクが高い方では、生活習慣だけで十分にコントロールするのは難しいこともあります。

生活習慣の改善と薬物療法を上手に組み合わせるために、ぜひかかりつけ医と相談しながら進めていただければと思います。

よくある質問(Q&A)

Q1. 血圧が正常に戻ったら薬をやめてもいいですか?

A. 薬の効果で血圧が下がっている状態ですので、自己判断でやめることはお勧めしません。「血圧が正常に見える」のは薬が効いているからです。やめる際は自己判断せず、必ず主治医と相談してください。

Q2. 降圧薬は飲み続けると効かなくなりますか?

A. 基本的には、耐性(効果が弱まること)は生じにくいとされています。ただし、加齢や体重増加・生活習慣の変化などで血圧が変動することはあります。その場合は薬の調整が必要になることがあります。

Q3. 副作用が心配です。どんな副作用がありますか?

A. 降圧薬の種類によって副作用は異なります。たとえば、ACE阻害薬では空咳が起きやすく、カルシウム拮抗薬では足のむくみが出ることがあります。気になる症状があれば、遠慮なく主治医に相談してください。薬の種類を変更することで改善できることが多いです。

Q4. 高血圧の薬は食事の前と後、どちらに飲むべきですか?

A. 多くの降圧薬は食事のタイミングに関わらず服用できますが、薬の種類によって異なります。処方時に薬剤師や医師から指示された用法を守るのが最も安全です。

Q5. 妊娠中でも降圧薬を飲み続けても大丈夫ですか?

A. 妊娠中に使える降圧薬の種類は限られており、特にACE阻害薬やARBは妊娠中は原則禁忌とされています。妊娠を希望される場合や妊娠が判明した場合は、必ず主治医にご相談ください。

まとめ

高血圧の薬をいつまで飲むか—その答えは、「原則として長期間、多くの場合は一生続けることが推奨される」です。

これは、高血圧の大部分が体質によるもの(本態性高血圧)であり、薬をやめれば多くの場合は再び血圧が上昇するからです。そして、高血圧を放置することで脳卒中・心筋梗塞・腎不全といった深刻な病気のリスクが高まるため、薬によるコントロールを続けることには大きな意義があります。

ただし、二次性高血圧の原因が取り除けた場合や、生活習慣の改善によって血圧が大幅に改善した場合などには、主治医の判断のもとで薬の減量や中止が検討されることもあります。

大切なのは、自己判断で薬を中止しないこと、そして不安や疑問は主治医に積極的に相談することです。

当院(丹野内科・循環器・糖尿病内科)では、循環器内科専門医が一人ひとりの患者様の状態に合わせて丁寧に診療を行っております。「高血圧の薬のことをもっと詳しく聞きたい」「今の薬が合っているか確認したい」という方は、お気軽にご相談ください。

丹野内科・循環器・糖尿病内科 キテミテマツド8階 松戸駅より徒歩約5分


参考文献

日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2025(JSH2025)

    執筆者プロフィール

    田邉弦

    丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

    • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
    • 日本循環器学会 循環器専門医
    • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
    • 認知症サポート医

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