- 2026年4月20日
動脈硬化と生活習慣の深い関係|今日から始める血管を守る実践法
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回は簡単なようで難しい動脈硬化についてのお話です。

「最近、健康診断で血圧が高いと言われた」「コレステロール値が気になる」──このような指摘を受けたことはありませんか。実はこれらは、動脈硬化という血管の老化現象の重要なサインかもしれません。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気の根本的な原因となります。しかし、動脈硬化の進行には日々の生活習慣が深く関係しており、適切な対策を行うことで予防や進行の抑制が可能です。
本記事では、循環器専門医の視点から、動脈硬化と生活習慣の関係について詳しく解説いたします。難しい医学用語はできるだけ避け、今日からご自身で実践できる具体的な対策をご紹介します。
目次

1. 動脈硬化とは何か|血管で起きている変化
1-1. 動脈硬化の基本的なメカニズム
動脈硬化とは、文字通り「動脈が硬くなる」状態を指します。健康な動脈は、ゴムホースのように柔軟で、心臓から送り出された血液をスムーズに全身に届けることができます。
しかし、加齢や様々な生活習慣の影響により、動脈の内側にコレステロールなどの脂質が溜まり、血管壁が厚く硬くなっていきます。この状態が進行すると、血管の内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなってしまうのです。
1-2. 動脈硬化の種類
医学的には、動脈硬化にはいくつかの種類がありますが、最も問題となるのが「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」です。これは、血管の内側にドロドロとした粥(かゆ)のような物質が溜まっていく状態で、いわゆる「プラーク」と呼ばれる塊を形成します。
このプラークが破れると、そこに血栓(血の塊)ができて血管を完全に塞いでしまうことがあります。これが心臓の血管で起これば心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞となります。

2. 動脈硬化を進行させる生活習慣
2-1. 食生活の乱れ
動脈硬化の進行に最も大きく影響するのが、日々の食生活です。
脂質の過剰摂取:揚げ物やバター、チーズなどの動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増やします。LDLコレステロールは血管壁に入り込み、動脈硬化の原因となるプラークを形成します。
塩分の取りすぎ:日本人の平均塩分摂取量は1日約10グラムと言われていますが、目標値は一日6グラム未満とされています。塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、血管壁に負担をかけることで動脈硬化を加速させます。
糖質の過剰摂取:甘い飲み物やお菓子、精製された炭水化物の取りすぎは、血糖値の急上昇を招きます。高血糖状態が続くと、血管の内側が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行しやすくなります。
2-2. 運動不足
現代社会では、デスクワークや車での移動が増え、慢性的な運動不足に陥りがちです。運動不足は以下のような悪影響をもたらします。
- 善玉コレステロール(HDLコレステロール)の減少
- 内臓脂肪の蓄積
- インスリン抵抗性の増大
- 血圧の上昇
これらすべてが動脈硬化の進行を促進する要因となります。
2-3. 喫煙習慣
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管を収縮させて血圧を上昇させるだけでなく、血管の内皮細胞を直接傷つけます。喫煙者は非喫煙者と比較して、心筋梗塞のリスクが2〜3倍高いというデータもあります。
2-4. 過度な飲酒
適量のアルコールは善玉コレステロールを増やす効果があるとされていますが、過度な飲酒は逆効果です。アルコールの過剰摂取は血圧上昇、中性脂肪の増加、肥満につながり、動脈硬化を進行させます。
2-5. ストレスと睡眠不足
慢性的なストレスや睡眠不足は、交感神経を過度に刺激し、血圧上昇やホルモンバランスの乱れを引き起こします。また、ストレスによる過食や喫煙量の増加など、二次的に不健康な生活習慣につながることも問題です。

3. 動脈硬化が引き起こす症状と影響
3-1. 初期には自覚症状がない「サイレントキラー」
高血圧でもサイレントキラーという言葉を使いましたが、動脈硬化の恐ろしい点は初期段階では自覚症状がほとんどないことです。血管の内腔が狭くなり血流障害が起きたり、血管が破れたりするまで多くの方は何の異変も感じません。
3-2. 進行すると現れる症状
動脈硬化が進行すると、影響を受ける臓器によって様々な症状が現れます。
心臓の血管(冠動脈)が影響を受けた場合
- 胸の圧迫感や痛み(狭心症)
- 運動時の息切れ
- 重症化すると心筋梗塞
脳の血管が影響を受けた場合
- 手足のしびれや脱力感
- 言葉が出にくい、ろれつが回らない
- 頭痛(脳出血の場合)
足の血管が影響を受けた場合
- 歩行時の足の痛みやしびれ
- 冷感
- 重症化すると壊疽
3-3. 合併症のリスク
動脈硬化は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などと密接に関連しています。これらは互いに影響し合い、悪循環を形成します。例えば、高血圧は動脈硬化を進行させ、動脈硬化は血管の弾力性を失わせることでさらに血圧を上昇させるのです。

4. 血管を守るための生活習慣改善法
4-1. 食生活の見直し
バランスの良い食事を心がける
日本の伝統的な和食は、動脈硬化予防に理想的な食事パターンです。以下のポイントを意識してみましょう。
- 野菜を1日350グラム以上摂取する:両手いっぱい分の野菜を目安に、色とりどりの野菜を取り入れます。食物繊維が豊富で、コレステロールの吸収を抑える効果が期待できます。
- 青魚を週2〜3回食べる:サバ、イワシ、サンマなどの青魚に含まれるEPAやDHAは、血液をサラサラにし、中性脂肪を下げる効果があります。
- 減塩を実践する:醤油やソースを「かける」から「つける」に変える、味噌汁は1日1杯までにするなど、小さな工夫を積み重ねましょう。
- 良質な油を選ぶ:オリーブオイルやアマニ油など、不飽和脂肪酸を含む油を適量使用します。揚げ物は週1〜2回程度に抑えることが推奨されます。
4-2. 適度な運動習慣
運動は「血管の若返り」とも言える効果をもたらします。
推奨される運動
- ウォーキング:1日30分以上、週5日以上
- 軽いジョギング
- 水泳
- サイクリング
ポイント
- 急に激しい運動を始めるのではなく、徐々に強度を上げていきます
- 「やや息が弾む程度」の有酸素運動が理想的です
- 運動前後のストレッチも忘れずに行いましょう
特に糖尿病や高血圧などの持病がある方は、運動を始める前に医師に相談されることをお勧めします。

4-3. 禁煙の重要性
禁煙は動脈硬化予防において最も効果的な対策の一つです。禁煙後2〜3年で心血管疾患のリスクが大幅に低下するというデータもあります。
4-4. 適正飲酒
お酒を飲まれる方は、以下を目安にしてください。女性は以下の半分が推奨されています。
- ビール:中瓶1本(500ml)
- 日本酒:1合(180ml)
- ワイン:グラス2杯(200ml)
- ウイスキー:ダブル1杯(60ml)
また、週に2日程度は「休肝日」を設けることが推奨されます。
4-5. ストレス管理と質の良い睡眠
ストレス対策
- 趣味の時間を確保する
- 深呼吸や瞑想を取り入れる
- 適度な運動でストレス解消
- 悩みを一人で抱え込まず、信頼できる人に相談する
睡眠の質を高める
- 就寝・起床時間をできるだけ一定にする
- 寝る1〜2時間前は強い光を避ける
- 寝室の温度・湿度を快適に保つ
- カフェインやアルコールの摂取タイミングに注意
7〜8時間の睡眠時間を確保することが理想的です。
4-6. 定期的な健康チェック
先ほども記載したように動脈硬化は自覚症状に乏しいため、定期的な健康診断が非常に重要です。
定期的にチェックすべき項目
- 血圧測定(家庭血圧の測定も有効)
- 血液検査(コレステロール、中性脂肪、血糖値など)
- 心電図検査
- 必要に応じて頸動脈エコー検査など
異常を指摘された場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

5. よくあるご質問(Q&A)
Q1. 動脈硬化は何歳くらいから始まりますか?
A. 動脈硬化は実は20代から始まっているとされています。ただし、生活習慣の影響が顕著に現れるのは40代以降が多いです。若い頃からの予防が重要ですが、いくつになっても生活習慣の改善による効果は期待できます。
Q2. コレステロール値が高いと必ず動脈硬化になりますか?
A. コレステロール値が高いこと自体が直ちに動脈硬化を意味するわけではありません。しかし、高コレステロール血症は動脈硬化の重要な危険因子の一つです。特にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い場合は、食事療法や必要に応じて薬物療法を検討することが推奨されます。
Q3. 一度進行した動脈硬化は元に戻りますか?
A. 動脈硬化は加齢変化の側面もあるため、元の状態に戻すことは難しいとされていますが、適切な治療と生活習慣の改善により、進行を遅らせることは可能です。早期に対策を始めるほど効果が期待できます。
Q4. 家族に心臓病の人がいます。私も注意が必要ですか?
A. はい、心血管疾患には遺伝的要因も関係しています。近親者に若年(男性55歳未満、女性65歳未満)で心筋梗塞や脳卒中を発症した方がいる場合は、より注意深く健康管理を行うことが推奨されます。定期的な健康診断を受け、医師に家族歴を伝えることが大切です。
Q5. サプリメントで動脈硬化は予防できますか?
A. 一部のサプリメント(例:EPA・DHAなど)には一定の効果が報告されていますが、サプリメントだけで動脈硬化を予防できるわけではありません。基本はバランスの良い食事、適度な運動、禁煙などの生活習慣改善です。サプリメントの使用を検討される場合は、かかりつけ医に相談されることをお勧めします。

6. まとめ
動脈硬化は、日々の生活習慣の積み重ねによって進行する疾患です。しかし、だからこそ、生活習慣の改善によって予防や進行抑制が可能です。
本記事のポイント
- 動脈硬化は血管が硬くなる状態で、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります
- 食生活の乱れ、運動不足、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが進行を促進します
- 初期には自覚症状がないため、定期的な健康診断が重要です
- バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、ストレス管理が予防の基本です
- 年齢に関わらず、今日から始める生活習慣の改善が血管を守ります
「もう年だから・・・」「今さら遅い・・・」ということはありません。生活習慣の改善は、いつ始めても遅すぎることはないのです。小さな一歩から始めて、動脈硬化の進行を予防していきましょう。
当院 (松戸駅徒歩5分 キテミテマツド8階 丹野内科・循環器・糖尿病内科)では、動脈硬化の早期発見・予防のための検査や、生活習慣改善のサポートを行っております。ご自身の血管の状態が気になる方、健康診断で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
執筆者プロフィール

田邉弦
丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長
- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
- 認知症サポート医
インタビュー記事はこちらからご覧ください。