• 2026年3月3日

高血圧 10のファクト|最新ガイドライン2025が教える「知っておくべき真実」

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。

以前ブログでも紹介しましたが、昨年日本高血圧学会は「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を発表しました。あわせて「高血圧の10のファクト〜国民の皆さんへ〜」という提言を公開しているのをご存知でしょうか?これは、世の中に誤った情報が溢れているという現状を改善するために、専門家が正しい知識をわかりやすくまとめたものです。私もこの事実を広く知っていただきたいため、本ブログで紹介したいと思います。

この記事では、その10のファクトをもとに、高血圧について知っておくべき大切なことを、できるだけわかりやすくお伝えします。


目次

  1. そもそも高血圧とは?
  2. 高血圧の10のファクト(最新ガイドライン2025より)
  3. 生活習慣の改善で血圧は下がる〜具体的な取り組み
  4. よくある質問(Q&A)
  5. まとめ|松戸で高血圧が気になる方へ

そもそも高血圧とは?

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出すときに血管の壁にかかる圧力のことです。この圧力が慢性的に高い状態が「高血圧」です。

最新のガイドライン2025では、以下の基準が示されています。

  • 診察室血圧:上(収縮期)140mmHg以上、または下(拡張期)90mmHg以上
  • 家庭血圧:上135mmHg以上、または下85mmHg以上

そして今回のガイドラインで特に重要なのが、降圧目標が「上の血圧130mmHg未満、下の血圧80mmHg未満」に設定されたことです。これは以前よりも厳しい目標値で、より積極的な血圧管理が求められるようになったことを意味します。

高血圧の10のファクト(最新ガイドライン2025より)

日本高血圧学会が発表した「高血圧の10のファクト」を、ひとつひとつ丁寧にひも解いていきます。


ファクト① 高血圧は脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症のリスクを高める

高血圧は単なる「数値の問題」ではありません。長期間にわたって血管が高い圧力にさらされると、血管の内側が傷み、動脈硬化が進行します。その結果、脳卒中・心筋梗塞・慢性腎臓病・認知症など、命や生活の質に直結する病気の発症リスクが高まります。

「症状がないから大丈夫」は、残念ながら正しくありません。むしろ症状がないことが高血圧の恐ろしさです。


ファクト② 日本では年間17万人が高血圧関連の病気で死亡している

少し驚かれる方もいるかもしれませんが、日本では毎年約17万人が、高血圧を原因とする脳卒中や心臓病で亡くなっています(出典:The Lancet Regional Health – Western Pacific 2022)。

これは交通事故死者数(年間約3,000人)の約50倍以上に相当します。高血圧がいかに身近で深刻な問題であるかが伝わるのではないでしょうか。


ファクト③ 日本の血圧コントロールは主要経済国で最下位レベル

「日本は医療水準が高い国」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、血圧コントロールの達成率という点では、主要経済国の中で最下位レベルにあります。

データによると、血圧がきちんとコントロールされている割合は、女性で日本29%に対してカナダ50%、ドイツ58%、男性では日本24%に対してカナダ69%という現状です(出典:Lancet 2019)。日本では高血圧と診断されても、十分に治療・管理できていない患者様が非常に多い実態があります。


ファクト④ 上の血圧を10mmHg下げると脳卒中・心臓病が約2割減る

これは非常に力強いエビデンスです。上の血圧(収縮期血圧)をわずか10mmHg下げるだけで、脳卒中や心臓病の発症リスクが約20%減少することが示されています。

たとえば150mmHgだった血圧を140mmHgに下げるだけでも、心血管イベントのリスクが約2割減るということです。「たった10mmHg」と思わず、この差を患者様を我々医療者も大切にしていきたいと思います。


ファクト⑤ 年齢に関わらず、130/80mmHg未満を目指すことが有益

「年をとったら血圧が高くなるのは当然」「高齢者は薬を飲まなくてもいい」という声を耳にすることがありますが、これは誤りです。

最新のガイドラインでは、年齢に関わらず、上の血圧を130mmHg未満、下を80mmHg未満に下げることで、脳卒中や心臓病のリスクが低下することが示されています。もちろん個人の状態によって目標値を調整することはありますが、「歳だから仕方ない」と諦めることは医学的に推奨されません。

ファクト⑥ 生活習慣の改善で血圧は下がる

薬の話をする前に、まず生活習慣の見直しが大切です。減塩・適度な運動・肥満の是正・節酒・禁煙などの取り組みによって、血圧を下げる効果が期待できます。

具体的な目安として、以下のような効果が報告されています。

  • 減塩(6g/日未満):3〜6mmHg程度低下
  • 有酸素運動(週150分程度):3〜5mmHg程度低下
  • 適正体重の維持:体重1kgの減少で約1mmHg低下

ファクト⑦ 日本人の食塩摂取量は世界でも高水準、高血圧の人は6g/日未満を目指して

日本人の平均食塩摂取量は約10g/日と、世界的に見ても高い水準にあります(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025年版」)。

一方、高血圧の方には1日6g未満の食塩摂取が推奨されています。「6gって少ない……」と感じる方も多いですが、たとえばラーメン1杯には5〜6g、みそ汁1杯には1.5g程度の塩分が含まれています。外食が多い方や濃い味付けに慣れている方は、少しずつ減塩を意識する工夫が効果的です。


ファクト⑧ 多くの高血圧患者では、2種類以上の降圧薬が必要

「薬を1種類飲んでいるから大丈夫」と思っていても、目標血圧に達していない方は少なくありません。最新のガイドラインでは、目標血圧を達成するために多くの患者様で2種類以上の降圧薬が必要であることが明示されています。

「薬の種類が増えること=悪いこと」ではありません。少量の異なる種類の薬を組み合わせることで、副作用を最小限にしながら効果を高める、というのが現代の治療戦略です。

ファクト⑨ 降圧薬は安価・安全で、副作用より利益の方が大きい

「薬を飲み始めたら一生やめられない」「副作用が心配」という声はよく聞かれます。しかし、現在使用されている降圧薬の多くは、長年にわたる研究で安全性と有効性が確認されており、副作用よりも血圧を下げることで得られる利益の方がはるかに大きいとされています。

また、ジェネリック医薬品も充実しており、費用対効果の面でも優れています。医師と相談しながら、適切な薬を正しく使うことが大切です。


ファクト⑩ 家庭血圧計の活用が診断と治療に役立つ

日本は世界的に見ても家庭血圧計の普及率が高い国です。これは大きな強みです。

家庭で毎朝・毎晩、決まった時間に測定した血圧は、診察室での血圧よりも信頼性が高く、治療効果の評価にも非常に役立ちます。「白衣高血圧(病院に行くと緊張して血圧が上がる)」や「仮面高血圧(診察室では正常だが自宅では高い)」の発見にも、家庭血圧測定が欠かせません。

生活習慣の改善で血圧は下がる〜具体的な取り組み

生活習慣の見直しは、薬を使わずに血圧を下げられる唯一の方法です。以下のポイントを、できるところから取り入れてみてください。

【減塩のコツ】 しょうゆやソースはかけるより「少量つける」習慣に。麺類のスープは飲み干さない。出汁の風味を活かして薄味でもおいしく食べられる料理を増やす。

【運動のコツ】 激しい運動でなくてよいです。毎日30分程度のウォーキングを継続することが、血圧に対して有効と報告されています。エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、日常生活に組み込む工夫が長続きのコツです。

前回のブログにNEATの記事を書きましたので、参考にしてください。「NEAT(ニート)で健康寿命を延ばす!運動嫌いでもできる日常生活活動のすすめ」

【飲酒・喫煙について】 アルコールは血圧を上げる作用があります。飲むなら適量(日本酒なら1合程度)を心がけましょう。また喫煙は血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を直接促進するため、禁煙が強く推奨されます。

よくある質問(Q&A)

Q1.血圧が少し高いだけで、症状もないのに治療が必要ですか?

A.必要な場合があります。高血圧は自覚症状がほとんどないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった深刻な病気を引き起こすことがあります。症状がないことを「安全」とは判断せず、まずは医師に相談されることをお勧めします。

Q2.一度降圧薬を飲み始めたら、ずっと飲み続けなければなりませんか?

A.生活習慣の改善によって血圧が十分に下がった場合、医師の判断のもとで減薬・休薬を検討できることもあります。自己判断でやめるのは危険ですが、「一生やめられない」とは限りません。担当医とよく相談してみてください。

Q3.家庭血圧はどのように測ればよいですか?

A.朝は起床後1時間以内、トイレを済ませた後、朝食・服薬前に測定するのが基本です。夜は就寝前に測定します。測定前は5分程度安静にし、背もたれのある椅子に座って測ることが推奨されます。記録をつけて、受診時に持参すると診療の参考になります。

Q4.塩分を減らすと食事がおいしくなくなりそうで不安です。

A.慣れるまでは薄味に違和感を覚えることもありますが、人の味覚は徐々に変化します。レモン・酢・香辛料・だしの旨味を上手に活用することで、少ない塩分でも十分においしく食べられるようになります。

まとめ|松戸で高血圧が気になる方へ

今回ご紹介した「高血圧の10のファクト」は、日本高血圧学会が2025年のガイドラインに基づいて国民の皆さんに向けて発信した、信頼性の高いメッセージです。

改めてポイントを整理します。

  • 高血圧は脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症に直結する深刻な病気である
  • 日本の血圧コントロール状況は主要先進国の中で最下位レベルにある
  • 上の血圧を10mmHg下げるだけで、心血管イベントが約2割減る
  • 目標は上130mmHg未満・下80mmHg未満(年齢に関わらず)
  • 生活習慣の改善と適切な降圧薬の使用を組み合わせることが有効
  • 家庭血圧計を活用して、日常的に血圧を把握することが大切

「自分には関係ない」と思わず、まずはご自身の血圧を知ることから始めてみてください。

丹野内科・循環器・糖尿病内科(キテミテマツド8階・松戸駅徒歩5分)では、循環器専門医と糖尿病専門医が連携してが高血圧の診断から治療、生活習慣指導まで、患者様お一人おひとりに寄り添いながら対応しています。「血圧が気になるけど、どこに相談すればいいかわからない」という方もお気軽にご相談ください。ご来院お待ちしております


参考文献・出典

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医
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