• 2026年8月31日

発酵食品は体に良い?医師が解説する効果と注意点

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉優希です。今回は糖尿病とは直接は関係ありませんが、発酵食品に関する話題です。

「発酵食品は体に良い」とよく耳にしますが、具体的にどのような効果があるのか、また誰にでも当てはまるのかは、意外と知られていません。納豆、味噌、ヨーグルト、キムチなど、私たちの食卓には多くの発酵食品が並んでいますが、その健康効果とあわせて、持病をお持ちの方が注意すべき点もあります。この記事では、内科医の視点から発酵食品が体に与える影響と、日常生活での上手な取り入れ方について、できるだけわかりやすく解説します。

目次

  1. 発酵食品とは?基礎知識をおさらい
  2. 発酵食品が体に与える具体的な影響
  3. 発酵食品を取り入れる際の予防法・注意点
  4. よくある質問(Q&A)
  5. まとめ

発酵食品とは?基礎知識をおさらい

発酵とはどのような現象か

発酵とは、細菌や酵母、カビなどの微生物が食品中の糖質やタンパク質を分解し、うま味成分やビタミンなど、体に有用な物質を作り出す現象です。一方で、同じように微生物が食品を分解しても、人体に有害な物質が作られてしまう場合は「腐敗」と呼ばれます。発酵と腐敗は、いわば同じ仕組みの表と裏のような関係にあるといえます。

代表的な発酵食品

日本の食卓でおなじみの発酵食品には、以下のようなものがあります。

  • 納豆(納豆菌による大豆の発酵)
  • 味噌・醤油(麹菌による大豆・穀物の発酵)
  • 漬物・キムチ(乳酸菌による野菜の発酵)
  • ヨーグルト・チーズ(乳酸菌による乳製品の発酵)
  • 甘酒(麹菌による米の発酵)

これらは古くから日本人の食生活に根づいており、和食が発酵食品を豊富に含む食文化であることが、健康長寿との関連で注目されることもあります。

発酵食品が体に与える具体的な影響

腸内環境を整える働き

発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌といった「善玉菌」そのもの、あるいはその働きを助ける成分が含まれています。私たちの腸内には数百種類、100兆個以上ともいわれる細菌がすみついており、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスによって腸内環境が保たれています。

ストレスや食生活の乱れによって悪玉菌が優勢になると、便秘や下痢、肌荒れなどにつながりやすくなります。発酵食品を継続的に摂取することで、善玉菌が働きやすい環境を整えるサポートになると考えられています。実際に、和食に多く含まれる発酵食品の摂取と、腸内で短鎖脂肪酸を作る菌が増えることとの関連を示す報告もあります。

ビタミンやうま味成分が増える

発酵の過程で、微生物が食品中の栄養素を分解・合成することで、もとの食材にはなかったビタミン類が生成されることがあります。たとえば納豆にはビタミンK2が豊富に含まれており、これは骨の健康に関わる栄養素として知られています。

また、うま味成分が増えることで、少ない塩分でも満足感のある味付けがしやすくなるという側面もあります。これは、後述する塩分摂取量のコントロールを考えるうえでも、上手に活用したいポイントです。

生活習慣病予防との関連

発酵食品に含まれる成分が、血糖値の急激な上昇をゆるやかにする、あるいは腸内環境を通じて全身の炎症を抑える方向に働く可能性が、さまざまな研究で検討されています。ただし、「発酵食品を食べれば糖尿病や高血圧が予防できる」と断定できるほどの強いエビデンスが確立しているわけではなく、あくまでバランスの良い食生活全体の一部として位置づけることが推奨されます。

発酵食品を取り入れる際の予防法・注意点

発酵食品は多くの方にとって取り入れやすい食品ですが、持病をお持ちの方は次の点にご注意いただくことが大切です。

塩分の摂りすぎに注意

味噌や漬物、醤油などは、発酵の過程で塩分を多く使用しているものが少なくありません。高血圧の治療中の方や、塩分制限が必要な心不全・腎臓病の方は、摂取量に気をつける必要があります。たとえば、味噌汁は1日1杯程度にとどめる、漬物は小皿に少量添える程度にするなど、量を意識した工夫が良いでしょう。

納豆と血液をさらさらにする薬の飲み合わせ

ワーファリン(ワルファリン)という血液を固まりにくくするお薬を服用中の方は、納豆を食べることは避けていただく必要があります。納豆に含まれるビタミンKが、ワーファリンの効果を弱めてしまうためです。これは非常に重要な注意点ですので、心房細動や心臓の弁の治療などでワーファリンを服用されている方は、必ず主治医にご確認ください。なお、より新しいタイプの抗凝固薬(DOAC)ではこの相互作用は基本的に問題になりませんが、自己判断はせず、必ず処方医にご相談ください。

腎機能が低下している方のカリウムに関する注意

漬物や味噌など植物性の発酵食品にはカリウムが含まれるものもあり、腎機能が低下している方は摂取量に注意が必要な場合があります。定期的な血液検査の結果をもとに、主治医や管理栄養士と相談しながら量を調整することが望ましいです。

日常生活への取り入れ方の一例

  1. 朝食にヨーグルトを小鉢一杯(100g程度)添える
  2. 味噌汁は具だくさんにして、汁の量を控えめにする
  3. 納豆は1日1パックを目安にする(ワーファリン服用中の方を除く)
  4. 漬物やキムチは「箸休め」程度の少量にとどめる

このように、特定の食品に偏らず、少量ずつ複数の発酵食品を組み合わせることが、無理なく続けるコツといえます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 発酵食品は毎日たくさん食べたほうが良いのでしょうか?

A. 量を増やせば増やすほど良いというものではありません。特に塩分の多い発酵食品を大量に摂取すると、血圧に影響する可能性があります。少量を毎日継続することが推奨されます。

Q2. お腹がゆるくなりやすいのですが、発酵食品は控えたほうが良いですか?

A. 体質によっては、乳製品由来の発酵食品でお腹がゆるくなる方もいらっしゃいます。その場合は無理をせず、植物性の発酵食品(味噌や漬物など)を少量から試すなど、ご自身の体調に合わせて調整することが大切です。気になる症状が続く場合は、消化器内科への受診もご検討ください。

Q3. サプリメントで乳酸菌を摂るのと、発酵食品を食べるのとでは違いがありますか?

A. どちらにも一定の役割があると考えられていますが、発酵食品には菌そのものだけでなく、ビタミンやうま味成分など複数の栄養素が含まれる点が特徴です。まずは食事から取り入れることが基本となり、その上で必要に応じて補助的にサプリメントを活用する、という考え方が一般的です。

Q4. 薬を飲んでいる場合、発酵食品との飲み合わせが心配です。

A. 前述のワーファリンと納豆の関係のように、お薬の種類によっては注意が必要な組み合わせがあります。自己判断せず、お薬手帳を持参のうえ、主治医や薬剤師にご確認いただくことをお勧めします。

まとめ

発酵食品は、腸内環境を整える働きやビタミンの生成など、体にとって有用な側面を多く持つ食品です。和食文化に根づいた納豆や味噌、漬物、ヨーグルトなどを日常に取り入れることは、バランスの良い食生活の一助となります。

一方で、高血圧や心臓病、腎臓病などで治療中の方、特にワーファリンを服用中の方は、塩分やビタミンKとの関係で注意すべき点があります。「体に良い」といわれる食品であっても、ご自身の持病やお薬の状況によっては摂り方を調整する必要がありますので、気になる点があれば、かかりつけの内科でご相談ください。

当院では、高血圧や糖尿病、心疾患などの生活習慣病の管理において、日々の食事内容についてもきめ細かくご相談をお受けしています。血圧管理と食事の関係について詳しくは、当院の高血圧に関する記事もあわせてご覧ください。


参考文献

  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」

執筆者プロフィール

丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長 田邉 優希

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本医師会 認定産業医
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