• 2026年8月25日

睡眠不足で血圧が上がる?睡眠と高血圧の意外な関係を循環器内科医が解説

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。「最近よく眠れていないけれど、健診で血圧が高いと言われた」——そんな経験はありませんか。

実は、睡眠不足と血圧には深い関係があることが分かっています。睡眠時間が慢性的に不足すると、血圧が下がるべき夜間にも高いまま維持され、高血圧や心臓病・脳卒中のリスクが高まることが報告されています。

日本の高血圧の方は約4,300万人といわれ、まさに国民病です。この記事では、睡眠不足が血圧に影響するメカニズム、注意すべきサイン、今日からできる対策について、循環器内科専門医が分かりやすく解説します。

目次

  1. 睡眠不足と血圧の基礎知識
  2. 睡眠不足が血圧に与える具体的な影響
  3. 血圧を守る睡眠習慣——今日からできる対策
  4. よくある質問(Q&A)
  5. まとめ

睡眠不足と血圧の基礎知識

血圧は一日の中で変動しています

血圧は常に一定ではなく、一日の中でリズムをもって変動しています。日中の活動時間帯には高く、夜の睡眠中には日中より10〜20%程度低くなるのが一般的なパターンです。

これは、体をコントロールする「自律神経」の働きによるものです。日中は活動モードの「交感神経」が優位になり、血圧や心拍数が上がります。一方、夜間は休息モードの「副交感神経」が優位になり、血圧が自然に下がって心臓や血管が休まる時間になります。

例えるなら、睡眠は血管にとっての「メンテナンス時間」です。工場の機械も24時間フル稼働では傷んでしまうように、血管も夜間に血圧が下がる時間があるからこそ、健康を保てるのです。

睡眠不足が続くとどうなるのか

睡眠時間が足りない、あるいは眠りが浅い状態が続くと、本来休むはずの夜間にも交感神経の緊張が続きます。すると、夜間に血圧が十分下がらなくなり、血管が休めない状態が慢性化します。

さらに、睡眠不足はストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌を増やし、塩分をため込みやすくするなど、複数のルートから血圧を押し上げると考えられています。実際に、睡眠時間が短い方では高血圧のリスクが高まることが、国内外の研究で報告されています。

睡眠不足が血圧に与える具体的な影響

早朝高血圧に注意

睡眠の質が悪い方に多くみられるのが「早朝高血圧」です。朝起きた直後の血圧が特に高くなるタイプで、心筋梗塞や脳卒中は早朝から午前中にかけて起こりやすいことが知られているため、注意が必要とされています。

たとえば、次のような生活に心当たりはないでしょうか。

  • 仕事の残業やスマートフォンの使用で就寝が深夜1時を過ぎる
  • 朝6時に起床し、睡眠時間は5時間程度
  • 朝から頭が重く、健診では血圧が高めと指摘される

このようなケースでは、日中の診察室の血圧だけでは異常が分からないこともあります。家庭での血圧測定、特に朝の測定が大切になる理由がここにあります。なお、日中の血圧は正常でも早朝や夜間に高い「仮面高血圧」については、別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

睡眠時無呼吸症候群との関係

「いびきが大きい」「睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された」「しっかり寝たはずなのに日中眠い」——こうした症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れている可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群は、治療しても血圧が下がりにくい「治療抵抗性高血圧」の背景として重要な病気の一つです。睡眠時無呼吸と高血圧の関係についても、当院ブログの関連記事で詳しくご紹介しています。

放置した場合のリスク

夜間も血圧が高い状態が続くと、血管の壁に常に負担がかかり、動脈硬化が進みやすくなります。その結果、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病などのリスクが高まることが知られています。

2025年に6年ぶりに改訂された日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、原則として全年齢で診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)を目指すことが推奨され、減塩や運動と並んで、十分な睡眠を含む生活習慣の改善が治療の基盤として位置づけられています。


血圧を守る睡眠習慣——今日からできる対策

ステップ1:睡眠時間を確保する

厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023では、成人はおおむね6時間以上の睡眠を目安とすることが推奨されています。まずは「就寝時刻を30分早める」ことから始めてみましょう。

ステップ2:眠りの質を高める工夫

  • 就寝前1時間はスマートフォンやパソコンの画面を避ける
  • 夕方以降のカフェイン(コーヒー・エナジードリンクなど)を控える
  • 寝酒は眠りを浅くするため避ける
  • 朝起きたら太陽の光を浴びて体内時計を整える
  • 湯船に浸かるのは就寝の1〜2時間前が目安

ステップ3:朝の家庭血圧を測る習慣を

起床後1時間以内、排尿後、朝食や服薬の前に、椅子に座って1〜2分安静にしてから測定するのが基本です。記録を続けることで、ご自身の血圧の傾向が見えてきますし、受診時にも大変役立ちます。

ステップ4:気になる症状があれば医療機関へ

生活を整えても朝の血圧が高い状態が続く場合や、いびき・日中の強い眠気がある場合は、一度医療機関でご相談いただくことが推奨されます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 何時間眠れば血圧に良いのでしょうか?

A. 必要な睡眠時間には個人差がありますが、成人ではおおむね6時間以上が一つの目安とされています。長すぎる睡眠や、休日の寝だめで平日の不足を補う生活も、体内時計を乱す可能性があるため、毎日なるべく一定のリズムで眠ることが大切です。

Q2. 睡眠を改善すれば、薬を飲まずに血圧は下がりますか?

A. 睡眠を含む生活習慣の改善は血圧管理の基盤ですが、それだけで十分に下がるかどうかは、血圧の程度や他の病気の有無によって異なります。自己判断でお薬を中断せず、主治医とご相談ください。

Q3. 昼寝は血圧に良いですか?

A. 短時間(20〜30分程度)の昼寝は日中の眠気対策として有効とされていますが、長時間の昼寝や夕方以降の昼寝は夜の睡眠を妨げ、かえって逆効果になることがあります。

Q4. 家族にいびきを指摘されました。受診した方がよいでしょうか?

A. 大きないびきや呼吸の停止、日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査をおすすめします。自宅で簡単にできますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

  • 血圧は本来、睡眠中に下がって血管を休ませるリズムをもっています
  • 睡眠不足が続くと夜間や早朝の血圧が下がりにくくなり、高血圧や動脈硬化のリスクが高まることが報告されています
  • 大きないびきや日中の眠気がある方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります
  • 睡眠時間の確保・眠りの質の改善・朝の家庭血圧測定が、血圧を守る第一歩です

睡眠と血圧は、どちらか一方だけを整えればよいものではなく、生活全体で考えることが大切です。「眠れていない」「朝の血圧が気になる」という方は、一人で悩まず、お気軽に当院までご相談ください。


参考文献

  • 日本高血圧学会編『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医

インタビュー記事はこちらからご覧ください。

丹野内科・循環器・糖尿病内科 047-711-6450 ホームページ