- 2026年10月13日
低気圧で血圧は上がる?下がる?天気と血圧の関係を循環器専門医が解説
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長の田邉弦です。最近は雨や台風が多かったこともあり外来で聞かれることの多かった気圧と血圧に関するブログです。

「雨の前になると頭が重い」「台風が近づくと、血圧がいつもより高い気がする」。天気が崩れるたびに、こうした不安を感じている方は意外と少なくありません。 以前
低気圧と血圧の関係は、実は「必ず上がる」「必ず下がる」と言い切れるものではありません。研究結果にもばらつきがあり、体質や持病、そのときの気温によって反応は変わると考えられています。この記事では、低気圧と血圧について現時点でわかっていること、起こりやすい症状、ご自宅でできる対策を、内科専門医の立場から解説します。
以前天気痛(気圧の変化で引き起こされる体調不良)に関するブログも書きましたので、そちらも是非ご覧ください。「梅雨の気圧変化で体がだるい、頭が痛い(天気痛)…その原因と内科医が教える対処法」
目次

低気圧と血圧の基礎知識
低気圧とは「周りより気圧が低いところ」
気圧とは、空気が私たちの体を押す力のことです。地上の平均はおよそ1013hPa(ヘクトパスカル)ですが、気象庁によると「何hPa以下なら低気圧」という決まった基準はなく、周囲より気圧が低いところを低気圧と呼びます。
気圧は高い場所ほど低くなり、目安として10m上がるごとに約1hPa下がります。天気が崩れて気圧が10hPa下がるのは、気圧の変化としては、およそ100m(高層ビルの30階前後)の高さまで上がるのに相当します。エレベーターで耳がツンとするのも、この気圧の変化によるものです。
血圧を調整しているのは自律神経
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。この力は、自律神経が血管を締めたりゆるめたりすることで、一日の中でも細かく調整されています。
活動モードの「交感神経」が強まると血管が縮んで血圧は上がり、休息モードの「副交感神経」が強まると血圧は下がります。ホースの先をつまむと水の勢いが強くなるのと同じイメージです。
低気圧で血圧は上がる?下がる?研究でわかっていること
結論からお伝えすると、研究結果は一致していません。
- ポーランドの研究:治療中の高血圧の方1,662人を24時間血圧計で調べたところ、春の日中と冬の夜間に限り、気圧が低いときのほうが血圧は高いという関係がみられました。
- イスラエルの研究:65歳以上の高血圧の方250人では、気圧が低いときのほうが診察室の血圧は低い傾向でした(1007hPaで平均125/82mmHg、1024hPaで143/88mmHg)。ただし、気圧の高い時期は気温の低い時期と重なっており、気圧だけの影響とは言い切れません。
つまり、「低気圧だから血圧が上がる(下がる)」と単純には言えず、季節や個人差が大きいと考えられています。
また、気圧を下げると、内耳(耳の奥)からの情報を受け取る脳の部位が活発になることがマウスの研究で報告されており、内耳が気圧の変化を感じ取っている可能性が考えられています。ただし、人での仕組みはまだ十分に解明されていません。

低気圧のときに起こりやすい症状と血圧への影響
血圧が上がりやすいケース
低気圧が近づくと、頭痛や関節の痛み、寝つきの悪さを感じる方がいます。痛みや睡眠不足は交感神経を刺激するため、結果として血圧が上がりやすくなります。
たとえば、台風が接近した夜に雨風の音でよく眠れず、翌朝の血圧がいつもより高めだった、という場合です。
血圧が下がる・ふらつくケース
一方で、だるさや眠気、立ちくらみを感じる方もいます。もともと血圧が低めの方や、血圧を下げるお薬を服用中のご高齢の方は、ふらつきや転倒に注意が必要です。
実は「気温」の影響のほうがはっきりしている
血圧への影響がより明確にわかっているのは、気圧よりも気温です。
- 国内の約6万4,000人の家庭血圧を集計した研究では、朝の収縮期血圧(上の血圧)は、夏より冬のほうが男性で6.2mmHg、女性で7.3mmHg高いと報告されています。
- また別の調査では、室温が10℃低いと、朝の収縮期血圧が約8mmHg高いという関連が示されています。
寒冷前線が通過すると、冷たい空気が入って急に冷え込むことがあります。「低気圧のせい」と感じている血圧の変化には、気温の低下、睡眠の乱れなどが重なっている可能性があります。

低気圧の日の血圧対策・予防法
ステップ1:家庭血圧を測って「自分のパターン」を知る
天気と血圧の関係には個人差があるため、まずはご自身の傾向を知ることが推奨されます。日本高血圧学会が勧めている測り方は次のとおりです。
- 上腕(二の腕)に巻くタイプの血圧計を使う
- 朝は、起床後1時間以内、トイレの後、朝食とお薬の前に測る
- 晩は、就寝前(食事や入浴の直後は避ける)に測る
- 椅子に座って1〜2分安静にしてから、原則2回測って平均を記録する
血圧手帳やアプリに、その日の天気や体調(頭痛・睡眠など)をひと言メモしておくと、傾向がつかみやすくなります。
高血圧の診断基準は家庭血圧で135/85mmHg以上、治療の目標は家庭血圧で125/75mmHg未満とされています(高血圧管理・治療ガイドライン2025)。ただし、目標は年齢や体の状態に応じて個別に調整されます。
ステップ2:体を冷やさない
世界保健機関(WHO)は、寒い季節の室温を18℃以上に保つことを勧めています。寝室や脱衣所、トイレも含めて、朝の冷え込みを和らげる工夫が勧められます。
ステップ3:生活リズムを整える
- 睡眠時間を確保し、起きる時刻と寝る時刻をなるべく一定にする
- 雨の日も、室内でのストレッチや足踏みなどで体を動かす
- 食塩は1日6g未満を目標にする
- お酒は控えめにする
ステップ4:お薬は自己判断で変えない
血圧が一時的に高い、あるいは低いからといって、ご自身の判断でお薬を増やしたり中止したりすることは勧められません。血圧の記録をお持ちのうえ、かかりつけ医にご相談ください。
すぐに受診が必要なサイン
次のような症状がある場合は、天気のせいと考えず、ためらわずに救急車(119番)を呼ぶことが勧められます。
- 突然の激しい頭痛
- 胸の強い痛みや圧迫感、息苦しさ
- 片側の手足や顔の麻痺・しびれ、ろれつが回らない

よくある質問(Q&A)
Q1. 低気圧が来ると頭痛がします。血圧が高いせいでしょうか?
A. 低気圧に伴う頭痛には、片頭痛など血圧以外の原因が関わっていることも少なくありません。痛むときに実際に血圧を測ってみると、関係がわかりやすくなります。なお、痛みそのもので血圧が一時的に上がることもあります。いつもと違う頭痛や、長く続く頭痛は医療機関にご相談ください。
Q2. 血圧の薬を飲んでいます。天気が悪い日は量を調整したほうがよいですか?
A. 自己判断での調整は勧められません。季節によってお薬の調整が必要になる方はいらっしゃいますが、家庭血圧の記録をもとに主治医が判断するのが一般的です。
Q3. 血圧が低めです。低気圧の日のだるさや立ちくらみにはどう対処すればよいですか?
A. 急に立ち上がらない、こまめに水分をとる、朝食を抜かないといった工夫が一般的です(水分制限のある方は主治医の指示を優先してください)。失神や動悸、息切れを伴う場合は、不整脈や貧血など別の原因が隠れていることもあるため、受診が勧められます。
Q4. 天気の悪い日だけ血圧が高くなります。受診したほうがよいですか?
A. 一時的な変動はどなたにもみられます。ただし、家庭血圧で135/85mmHg以上の日が続く場合は、天気にかかわらず高血圧の可能性があります。記録をお持ちのうえ、ご相談いただくと安心です。

まとめ
- 低気圧と血圧の関係は研究結果が一致しておらず、上がる方も下がる方もいます
- 血圧への影響は、気圧そのものより、気温の変化や睡眠不足、痛みのほうが大きいと考えられています
- 家庭血圧を測り、天気や体調と一緒に記録すると、ご自身の傾向がつかめます
- 室温の管理、睡眠、減塩といった基本が、天気が崩れる日の血圧管理の土台になります
丹野内科・循環器・糖尿病内科(松戸駅から徒歩5分・キテミテマツド8階)では、家庭血圧の記録をもとにした血圧のご相談を承っています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献・引用元
- 日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン委員会 編.高血圧管理・治療ガイドライン2025.
- Kamiński M, Cieślik-Guerra UI, Kotas R, et al. Evaluation of the impact of atmospheric pressure in different seasons on blood pressure in patients with arterial hypertension. Int J Occup Med Environ Health. 2016;29(5):783–792. doi:10.13075/ijomeh.1896.00546
- Charach L, Grosskopf I, Karniel E, Charach G. A Meteorological Paradox: Low Atmospheric Pressure-Associated Decrease in Blood Pressure Is Accompanied by More Cardiac and Cerebrovascular Complications. Atmosphere. 2022;13(2):235. doi:10.3390/atmos13020235
- Sato J, Inagaki H, Kusui M, Yokosuka M, Ushida T. Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice. PLoS One. 2019;14(1):e0211297. doi:10.1371/journal.pone.0211297
- Iwahori T, Miura K, Obayashi K, et al. Seasonal variation in home blood pressure: findings from nationwide web-based monitoring in Japan. BMJ Open. 2018;8(1):e017351. doi:10.1136/bmjopen-2017-017351
- Umishio W, Ikaga T, Kario K, et al. Cross-Sectional Analysis of the Relationship Between Home Blood Pressure and Indoor Temperature in Winter: A Nationwide Smart Wellness Housing Survey in Japan. Hypertension. 2019;74(4):756–766
- 気象庁 はれるんライブラリー「高気圧、低気圧は何hPaで区別するの?」
執筆者プロフィール

田邉弦
丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長
- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
- 認知症サポート医
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