- 2026年11月2日
腸内細菌と糖尿病の関係とは?腸内フローラを整えて血糖値をケアする方法
こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長の田邉優希です。

「腸内環境を整えると血糖値にも良い」という話を耳にしたことはありませんか。近年の研究では、腸内細菌と糖尿病の発症・進行との間に、これまで考えられていた以上に深い関わりがあることが分かってきました。
この記事では、腸内細菌と糖尿病の関係について、基礎知識から日常生活でできる対策まで、内科医の立場からわかりやすく解説します。「健康診断で血糖値を指摘された」「家族に糖尿病の人がいて不安」という方、ぜひ最後までご覧ください。
目次

1. 腸内細菌と糖尿病の基礎知識
腸内細菌叢(腸内フローラ)とは
私たちの腸の中には、約1,000種類、100兆個ともいわれる細菌がすみついています。これらは種類ごとにグループを作って腸壁に生息しており、その様子がお花畑(フローラ)のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれます。
腸内細菌は、大きく分けて以下の3つのグループに分類されることが一般的です。
- 善玉菌:ビフィズス菌や乳酸菌など、体に良い働きをする菌
- 悪玉菌:ウェルシュ菌など、増えすぎると体に悪影響を及ぼしうる菌
- 日和見菌:腸内の状態によって善玉菌にも悪玉菌にも傾く菌
このバランスが整っている状態が、いわゆる「腸内環境が良い」状態です。
2型糖尿病と腸内細菌の関わり
2型糖尿病は、インスリンの分泌が低下したり、インスリンが効きにくくなったりする「インスリン抵抗性」が背景にある病気です。
近年の研究では、腸内細菌が作り出す代謝物が、この血糖コントロールに影響を与えている可能性が示されています。例えば、理化学研究所などの共同研究グループが日本人を対象に行った解析では、腸内細菌の一種であるAlistipes属という菌が多い人は、インスリン抵抗性が低い傾向にあることが報告されています(理化学研究所, 2023)。
また、腸内細菌が食物繊維などを発酵させてつくる「短鎖脂肪酸」という物質が、血糖値の調整やインスリンの働きに関わっていることも知られています。

2. 腸内環境の乱れが血糖値に与える影響
腸内環境の乱れは、次のような形で血糖コントロールに影響しうると考えられています。
腸のバリア機能の低下
腸の壁は本来、体に必要なものだけを吸収し、有害なものは通さない「バリア」の役割を果たしています。腸内環境が乱れると、このバリア機能が低下し、本来は体内に入らないはずの物質が血液中に入り込みやすくなるといわれています。これが全身の軽い炎症を引き起こし、インスリンの働きを妨げる一因になると考えられています。
食後血糖値の急な上昇
たとえば、同じ量の食事をとっても、腸内環境によって食後の血糖値の上がり方には個人差があることが分かってきています。腸内細菌が糖の吸収スピードに影響を与えている可能性があるためです。健康診断で「食後高血糖」を指摘された方は、食事内容だけでなく腸内環境も一因になっているかもしれません。
人工甘味料と腸内細菌
「カロリーゼロ」の飲み物であれば血糖値に影響しないと思われがちですが、Suez et al.(Weizmann Institute、Eran Elinav博士ら)の研究ではサッカリンやスクラロースなどの一部の人工甘味料が腸内細菌叢を乱すことを通じて、2型糖尿病の発症リスクにつながる可能性が指摘されています。「糖質オフだから安心」と思い込まず、日々の摂取量にも目を向けることが大切です。

3. 腸内環境を整えるための予防法・対処法
腸内環境は、日常生活の工夫で整えていくことができると考えられています。すぐに実践しやすいポイントをご紹介します。
ステップ1:食物繊維を意識してとる
野菜、きのこ、海藻、豆類、全粒穀物などに多く含まれる食物繊維は、善玉菌のエサとなり、短鎖脂肪酸を作り出す助けになります。毎食、片手のひらに乗るくらいの野菜を目安に加えることから始めるのがおすすめです。
ステップ2:発酵食品を取り入れる
納豆、味噌、ヨーグルト、漬物などの発酵食品には、乳酸菌などの善玉菌そのものが含まれています。毎日の食卓に一品加えることを意識してみましょう。
ステップ3:加工食品・人工甘味料をとりすぎない
清涼飲料水やスナック菓子など、加工度の高い食品を控えめにすることも、腸内環境を守るうえで推奨されます。
ステップ4:適度な運動を続ける
ウォーキングなどの有酸素運動は、腸内細菌の多様性を高める効果が報告されています。1日20〜30分程度の早歩きを、無理のない範囲で継続することが一般的に推奨されています。
ステップ5:睡眠と生活リズムを整える
不規則な生活リズムは腸内環境にも影響を与えると考えられています。毎日同じ時間に食事や睡眠をとることも、腸を整える土台になります。

4. よくある質問(Q&A)
Q1. ヨーグルトを食べれば糖尿病は予防できますか?
A. ヨーグルトなどの発酵食品は腸内環境を整える助けになると考えられますが、それだけで糖尿病を予防・改善できるわけではありません。食事全体のバランスや運動習慣とあわせて取り組むことが推奨されます。
Q2. 腸内環境は検査でわかりますか?
A. 便を用いた腸内フローラ検査などもありますが、専門の医療機関で自費診療となります。気になる方は、まずはかかりつけ医にご相談ください。
Q3. サプリメントで善玉菌を補えば十分ですか?
A. サプリメントも選択肢の一つですが、まずは食事や生活習慣から見直すことが基本になります。持病やお薬を服用中の方は、自己判断で始める前に医師や薬剤師に相談されることをおすすめします。

5. まとめ
腸内細菌と糖尿病の関係について、研究が進むにつれて新しい知見が次々と明らかになっています。腸内環境を整えることは、血糖コントロールを支える一つの手段になりうると考えられますが、それだけで糖尿病がすべて予防・改善できるわけではありません。
食事、運動、睡眠といった生活習慣全体を見直すことが、腸内環境と血糖コントロールの両方に良い影響を与える土台になります。健康診断で血糖値を指摘された方、糖尿病の家族歴がある方は、一人で悩まず、是非当院(松戸駅徒歩5分 キテミテマツド8階 )にご相談ください。
当院では、血糖値や生活習慣病に関するご相談を承っております。気になる症状や検査結果がございましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 理化学研究所「インスリン抵抗性に関連するヒト腸内細菌の網羅的解析」2023年
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第21章 2型糖尿病の発症予防
- 東北大学「腸内細菌由来のフェニル硫酸による血糖値調節メカニズム」2025年
執筆者プロフィール

丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長 田邉 優希
- 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本医師会 認定産業医