• 2025年3月10日

高齢者に対するRSウイルスワクチンの有効性。RSウイルスは子供の感染症!?

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長の田邉弦です。先日RSウイルスワクチンの講演会を大阪まで聞きに行く機会があり勉強してきましたので、今回はRSウイルスワクチンについての話題です。今はまだ発売されたばかりで任意接種ですが、今後更なる研究が進行していけば、帯状疱疹ワクチンのように定期接種になっていくかもしれません。是非ご覧ください。

RSウイルスワクチンは2024年に日本国内でも接種が開始された新しいワクチンです。現在は高齢者向けワクチンと妊婦向けのワクチンが二社から発売されています。RSウイルスは「子どもの感染症」という印象が強いと思いますが、実は高齢者の肺炎の原因として重要なことがわかっています。特に基礎疾患を持った高齢者は重症化リスクが高く、新型コロナウイルス感染症と似ています。日本ではなんとRSウイルス感染症によって毎年約63,000人の入院と約4,500人の院内死亡が推定されているそうです。今回は新しい予防法であるRSウイルスワクチンについて説明します。

目次

RSウイルスとは?基本から理解しましょう

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、主に気道に感染するウイルスです。小さなお子様がいらっしゃる方は、子供の感染症として知っている方も多いのではないでしょうか。これまで乳幼児の感染症として知られてきましたが、実は全ての年齢層に感染する可能性があり、特に高齢者や基礎疾患をお持ちの方は要注意とわかってきました。

RSウイルスの特徴

  • 飛沫感染・接触感染で広がる(麻疹や結核のように空気感染ではありません)
  • コロナ禍より前は冬にピークだったが、近頃は春から夏にかけて流行のピークを迎える
  • 一度かかっても何度も感染する(2歳までにほぼ100%の子供が1度は感染すると言われています)
  • 年齢によって症状の重さが異なる (生後6か月以内の乳児と高齢者などは注意が必要です)

具体的な症状

症状は年齢や基礎疾患の有無によって大きく異なります。

1. 乳幼児の場合

  • 発熱
  • 鼻水・鼻づまり
  • 咳(特に夜間に悪化)
  • 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)
  • 呼吸困難
  • 哺乳力の低下

2. 成人・高齢者の場合

  • 風邪様症状(咳、鼻水)
  • 発熱
  • 倦怠感
  • 呼吸困難(特に基礎疾患がある方)
  • 食欲不振
  • 胸部の不快感

インフルエンザより咳などの気道症状が強く、長引きやすいとされています。(平均で一週間程度咳続く。)

年齢層別の具体的な注意点

1. 乳幼児(0-2歳)

  • 初感染であり、最も注意が必要な時期
  • 重症化のリスクが高い
  • 保護者の観察が重要
  • 早めの受診を心がける

2. 学童期(3-12歳)

  • 比較的軽症で経過
  • 学校での感染予防
  • 基礎疾患がある場合は注意

3. 成人期(13-59歳)

  • 通常は軽症
  • 基礎疾患がある場合は要注意
  • 感染拡大防止の役割

4. 高齢期(60歳以上)

  • 重症化リスクが上昇
  • 基礎疾患の影響が大きい
  • ワクチン接種の検討
  • 早期受診の重要性

なぜ今RSウイルスワクチンが注目されているの?

高齢者の重症化リスク

近年の研究で、RSウイルスが高齢者の重症肺炎の重要な原因の一つであることが分かってきました。特に60歳以上の高齢者で以下のような方はリスクが高くなります。

  • 慢性呼吸器疾患がある方 (気管支喘息、COPDなど)
  • 心臓病がある方
  • 糖尿病がある方
  • 慢性腎臓病のある方
  • 免疫機能が低下している方

抗ウイルス薬がない

インフルエンザや新型コロナウイルスのように抗ウイルス薬がなく、有効な治療がないため重症化を防ぐには予防が極めて重要。

医療負担の増加

RSウイルス感染症は医療機関にとって大きな負担となっています。

  • 高齢者の入院期間の長期化
  • 医療費の増加
  • 院内感染対策の必要性
  • 季節性の医療需要の集中

社会的影響

RSウイルス感染症は、以下のような社会的な影響も引き起こしています。

  • 保育園・幼稚園での集団感染
  • 高齢者施設でのクラスター発生
  • 働き盛り世代の業務への影響
  • 医療機関の受診集中による一般診療への影響

新しいRSウイルスワクチンの特徴

ワクチンの種類

現在、主に2種類のワクチンが接種可能です。

1. 高齢者向けワクチン (アレックスビー / グラクソ・スミスクライン)

  • 60歳以上 or 50歳以上で重症化リスクが高い人を対象
  • 重症化予防に高い効果
  • 1回の接種で3シーズンまでは効果が示されているが、それ以上は不明

2. 妊婦向けワクチン (アブリスボ / ファイザー)

  • 妊娠24‐36週の妊婦 or 60歳以上
  • 胎児への抗体移行を期待
  • 生後180日以内の乳児を保護

誰がワクチン接種を検討すべき?

1. 高齢者

  • 60歳以上の方
  • 基礎疾患がある50歳以上の方
  • 施設入所者
  • 小さな子供と同居している方

2. 基礎疾患がある方

  • 慢性呼吸器疾患 (喘息、COPDなど)
  • 心臓病
  • 糖尿病
  • 免疫機能が低下している方(癌治療中の方、ステロイド内服中の方など)
  • 腎臓病

高価なワクチンですので、高齢者全員が接種した方が良いとまでは言えませんが、上記リスクが重なる方が接種を検討すべき方になると思います。

接種のタイミング

インフルエンザワクチンのように秋に接種した方が良いというような推奨はありません。体調の良い時期を選択してください。

RSウイルス感染症のワクチン以外の予防対策

日常的な予防法

これは通常の風邪と同じで特に変わったところはありません。

1. 基本的な衛生管理

  • こまめな手洗い
  • マスクの着用
  • 適切な換気
  • 手指消毒 (アルコールが効きます)
  • 環境の清掃・消毒

2. 生活習慣の改善

  • 十分な睡眠
  • バランスの良い食事
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 禁煙

よくある質問と回答

Q1: 子どもの頃にRSウイルスに感染したことがありますが、また感染しますか?

 A: はい、RSウイルスは何度でも感染する可能性があります。ただし、年齢とともに重症化リスクは変化します。

Q2: RSウイルス感染症はクリニックで診断できますか?

A: いいえ、RSウイルスの抗原検査キットは大人に対しては保険適応がありません。大人に対しては抗原検査の精度が低いため、診断するのであればPCR法が良いですが、研究目的に調べることが多いのが現状です。

Q3: RSウイルス感染症に治療法はありますか?

 A: いいえ、抗ウイルス薬は現時点では開発されていないので、特定の治療薬はありません。そのため、ワクチンでの予防が重要になります。

Q4: RSウイルスワクチンの効果はどのくらい続きますか?

高齢者用ワクチン(アレックスビー)は現在3年までの有効性が示されていますが、その後はまだ追跡調査中です。

Q5: インフルエンザワクチンと一緒に接種できますか?

 A: 基本的に可能です。ご相談ください。

Q6: 副反応はありますか?

A: 接種部位の痛みや軽度の発熱などが報告されていますが、重篤な副反応は稀です。

Q7: 価格はいくらですか?

A: 当院では以下の価格で接種しております

  • アレックスビー:27,000円(税込)
  • アブリスボ:33,000円(税込)

基本的に高齢で適応の方はアレックスビーをご案内しております。 妊婦の方は主治医の許可をとってからご相談ください。

まとめ

  • RSウイルスは子供だけの感染症ではなく、全年齢層に影響を与える感染症です
  • 特に高齢者は重症化リスクに注意が必要です
  • 新しいワクチンで重症化予防が可能です
  • 基礎疾患がある方は特に接種を検討すべきです
  • 日常的な予防対策も重要です

RSウイルスは「子供の病気」という認識を改める必要があります。特に基礎疾患のある高齢者の方は、重症化予防のためにワクチン接種をご検討ください。

当院でのワクチン接種の流れ

  1. 電話での予約受付
  2. 予診票記入
  3. 問診・ワクチン接種
  4. 経過観察(15分程度)

接種をご検討の方は、ぜひご相談ください。状況に合わせた適切なアドバイスをさせていただきます。

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