• 2026年6月9日

和食と洋食、血糖値が上がりやすいのはどっち?食事と血糖値の関係を専門医がわかりやすく解説


こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長の田邉優希です。今回は食事の種類と血糖値の関係についての話題です。「和食はヘルシーだから血糖値が上がりにくい」「洋食は太るから血糖値も高くなる」——そんなイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

確かに和食は世界的にも「健康食」として注目されており、2013年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。一方で洋食はカロリーが高く、生活習慣病のリスクが高いと思われがちです。

しかし実際には、「和食だから安全・洋食だから危険」という単純な話ではありません。

糖尿病や血糖値が気になる方、またそのご家族にとって、毎日の食事選びはとても重要です。この記事では、和食・洋食それぞれの特徴を血糖値の観点から詳しく比較し、日常生活で実践できる食事のポイントをわかりやすくご説明します。是非ご覧ください。

目次

  1. そもそも血糖値とは?なぜ食事で上がるの?
  2. 和食の特徴と血糖値への影響
  3. 洋食の特徴と血糖値への影響
  4. 和食・洋食を比較してみると…意外な落とし穴
  5. 血糖値を上げにくい食事の選び方・工夫
  6. よくある質問(Q&A)
  7. まとめ

そもそも血糖値とは?なぜ食事で上がるの?

血糖値とは、血液の中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。私たちが食事をすると、食べ物に含まれる「糖質(炭水化物)」が消化・吸収されてブドウ糖に変わり、血液中に流れ込みます。これが血糖値の上昇です。

通常、血糖値が上がると膵臓(すいぞう)からインスリンというホルモンが分泌され、細胞にブドウ糖を取り込んでエネルギーとして使わせることで、血糖値を正常範囲(空腹時70〜110mg/dL程度)に戻します。

しかし、食事の内容や量・食べ方によって、この血糖値の上がり方は大きく変わります。急激に血糖値が上がることを「血糖スパイク」と呼び、これが繰り返されると血管や臓器に負担がかかり、糖尿病の発症や進行、さらには動脈硬化・心臓病・脳卒中のリスクが高まるとされています。

和食の特徴と血糖値への影響

和食の「良い面」

和食の基本は「ご飯・汁物・主菜・副菜」という一汁三菜のスタイルです。この構成には、血糖値管理の観点からいくつかの優れた点があります。

① 食物繊維が豊富:わかめ、ひじき、きのこ類、大豆製品(豆腐・納豆)、根菜類(ごぼう・れんこん)など、食物繊維を多く含む食材が使われやすいのが和食の特徴です。食物繊維は消化・吸収を穏やかにするため、食後の血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。

② 低脂質・低カロリーになりやすい:焼き魚・煮物・おひたしなど、調理法がシンプルで油を多く使わないメニューが多いため、カロリーが抑えられやすく、肥満予防にもつながります。肥満はインスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性)ため、体重管理は血糖値コントロールの基本とも言えます。

③ 魚・大豆を中心としたタンパク質:和食では動物性脂肪の多い肉類よりも、魚や大豆製品がタンパク源として使われることが多く、コレステロールや飽和脂肪酸の過剰摂取を防ぎやすいとされています。

和食の「見落としがちな問題点」

ここが重要なポイントです。和食には、実は血糖値を上げやすい”隠れた落とし穴”があります。

① 白米の糖質量は意外と多い:一般的なお茶碗1杯(約150g)に含まれる糖質は約55gです。これは食パン2枚分(約50g)とほぼ同じ量です。和食の献立では白米をしっかり食べることが多く、「ご飯のおかわり」や「丼もの」になると糖質量はさらに跳ね上がります。

② 味付けに砂糖・みりんを多用する:煮物・照り焼き・すき焼き・きんぴらなど、和食の定番料理には砂糖やみりんが多く使われます。これらも糖質であり、血糖値上昇の一因となりえます。

③ 塩分が高くなりやすい:しょうゆ・みそ・漬物・佃煮など、和食は塩分を含む食材や調味料を多用する傾向があります。塩分の過多は高血圧につながり、糖尿病と高血圧が重なると、心臓病・腎臓病のリスクが大幅に高まることが知られています。

洋食の特徴と血糖値への影響

洋食の「リスクとなりやすい面」

① 精製された炭水化物が多い:白パン・パスタ・ピザ・クッキーなどは、精製度の高い小麦粉が主成分です。精製された炭水化物は食物繊維がほぼ取り除かれているため、消化・吸収が速く、食後の血糖値が急上昇しやすい傾向があります。

② 脂質・カロリーが高くなりやすい:バター・生クリーム・チーズなど飽和脂肪酸を多く含む食材や、揚げ物(フライ・コロッケなど)が多用されます。高カロリーな食事が続くと体重増加→インスリン抵抗性の悪化→血糖値コントロールの困難、という悪循環に陥りやすくなります。

③ 食事のボリュームが大きくなりがち:ハンバーガーセット・パスタ大盛り・ランチのパンおかわり自由など、洋食は一食の量が多くなりやすく、結果として糖質・カロリーともに過多になりやすい環境があります。

洋食にも「血糖値に優しい選択肢」がある

一方で、洋食の中にも血糖値管理の観点から推奨できるメニューは数多くあります。

  • サラダ・スープを先に食べる(ベジタブルファーストの実践がしやすい)
  • グリルチキン・魚料理(低脂質・高タンパク質)
  • 全粒粉パン・ライ麦パン(食物繊維が豊富で血糖値上昇が穏やか)
  • オリーブオイルを使った地中海式の料理(良質な脂質で血糖値・心血管リスク改善効果が報告されている)

つまり、洋食であっても選び方・食べ方次第で、血糖値への影響をコントロールすることは十分に可能です。

和食・洋食を比較してみると…意外な落とし穴

「和食だから大丈夫」「洋食だから危ない」という固定観念は、ここで一度見直していただきたいと思います。

実は、血糖値への影響という点では、食事の「スタイル(和・洋)」よりも「何をどのくらい・どんな順番で食べるか」のほうがはるかに重要です。

以下に典型的なシチュエーションを比べてみましょう。

メニュー例推定糖質量
和食(要注意パターン)白米2杯+照り焼き+みそ汁+漬物約110〜130g
洋食(要注意パターン)ハンバーガー+フライドポテトL+コーラ約100〜120g
和食(良いパターン)白米1杯(小盛り)+焼き魚+豆腐+野菜の煮物+みそ汁約55〜65g
洋食(良いパターン)全粒粉パン1枚+グリルチキン+サラダ+コンソメスープ約40〜55g

この比較からわかるように、工夫された洋食のほうが、雑然とした和食よりも血糖値への影響が少ない場合もあるのです。

血糖値を上げにくい食事の選び方・工夫

①「食べる順番」を意識する(ベジタブルファースト)

食事の最初に野菜・海藻・きのこなど食物繊維の多いものを食べると、その後に食べた糖質の吸収が穏やかになることが知られています。和食でも洋食でも、まずサラダ・おひたし・スープ(具だくさん)から始めることをお勧めします。

②白米・白パンを「玄米・全粒粉」に替える

精白された穀物から食物繊維を多く含む全粒穀物に切り替えると、食後血糖値の上昇が緩やかになります。いきなり完全に切り替えるのが難しければ、白米に押し麦や雑穀を混ぜる「雑穀米」から始めるのがおすすめです。

③糖質量を「目で見える化」する

ご飯・パン・麺類・イモ類・果物・砂糖などに糖質が多く含まれます。一食あたりの糖質量の目安は、糖尿病の方であれば40〜60g程度が一般的とされています(個人差がありますので、必ず主治医にご相談ください)。

④食後に軽く体を動かす

食後15〜30分後に10〜15分程度のウォーキングをするだけで、筋肉がブドウ糖を消費しやすくなり、食後の血糖値スパイクを抑えるのに役立つとされています。「食後の一散歩」を習慣にしてみてください。

⑤「ゆっくりよく噛んで食べる」

早食いは血糖値の急上昇を招きやすいことがわかっています。一口30回を目安によく噛み、食事に20〜30分かけることが推奨されます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 糖尿病でなければ、血糖値はあまり気にしなくて良いですか?

A. 糖尿病と診断されていなくても、食後に血糖値が急上昇する「隠れ血糖スパイク」を繰り返している方は少なくありません。血糖スパイクは将来の糖尿病リスクを高めるだけでなく、血管の老化(動脈硬化)や疲労感・眠気の原因になることもあります。健診の空腹時血糖が正常であっても、食後の血糖値が高い方がいらっしゃるため、気になる症状がある場合はご相談ください。

Q2. 和食でも血糖値が上がるなら、何を食べれば良いのですか?

A. 和食・洋食のどちらでも、「野菜・海藻・きのこ・豆類を増やす」「精白された炭水化物を減らす」「糖分の多い調味料を控える」という3点を意識するだけで、血糖値への影響はかなり改善できます。完全に制限する必要はなく、量とバランスを整えることが大切です。

Q3. フルーツは血糖値に良いですか?

A. フルーツには食物繊維やビタミンが豊富な一方で、果糖(フルクトース)という糖質も含まれています。少量であれば食後血糖値への影響は比較的穏やかとされていますが、食べすぎや果汁100%ジュース(食物繊維が少ない)の多飲には注意が必要です。食後のデザートとして少量を楽しむ程度が推奨されます。

Q4. ラーメンやうどんは和食ですが、血糖値に影響しますか?

A. ラーメン・うどん・そばなどの麺類は、一杯で糖質が60〜80g程度になることがあり、血糖値への影響は決して小さくありません。特にラーメンはスープに脂質・塩分も多く含まれるため、食べる頻度や量には注意が必要です。そばは他の麺類よりもGI値(食後血糖値の上がりやすさを示す指数)が低めとされており、比較的選びやすい選択肢のひとつです。

Q5. 外食が多い場合、どうすれば良いですか?

A. 外食でも工夫はできます。①定食スタイルを選ぶ(栄養バランスが整いやすい)、②ご飯を少なめにしてもらう、③サラダ・野菜の多い副菜を追加する、④揚げ物より焼き物・蒸し物を選ぶ、という4点を意識するだけでも大きな違いが生まれます。

まとめ

和食と洋食、血糖値という観点でまとめると以下のようになります。

  • 和食は食物繊維が豊富で低脂質になりやすい反面、白米・砂糖・塩分の多さに注意が必要
  • 洋食は脂質・カロリーが高くなりやすい反面、選び方次第で血糖値に優しい食事も可能
  • 最も重要なのは「和・洋」のジャンルではなく、「何を・どれだけ・どんな順番で食べるか」

食事は毎日のことだからこそ、極端な制限や我慢より、長く続けられる「ちょうど良いバランス」を見つけることが大切です。

血糖値や食事のことで気になることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。当院では、糖尿病専門医と循環器専門医が連携し、患者様お一人おひとりの生活スタイルに合わせた食事指導・生活習慣のサポートを行っております。HbA1cの当日結果も説明可能なので、「検査結果をすぐに知りたい」という方もお気軽にご相談ください。

参考文献・引用元

  1. 日本糖尿病学会 編・著「糖尿病診療ガイドライン2024」南江堂
  2. 日本糖尿病学会 編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」文光堂

執筆者プロフィール

丹野内科・循環器・糖尿病内科 副院長 田邉 優希

  • 日本糖尿病学会 糖尿病専門医
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本医師会 認定産業医
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