• 2026年7月27日

座りすぎに要注意!内科医が解説する「座位行動」の健康リスクと今日からできる対策

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今回は趣向を変えて座りすぎはよくない!というブログです。私自身も外来中は座りっぱなしですので、この事実を知ってからは外来の合間に少しでも立つようにしています。

「座っているだけで体に悪いの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし近年の研究では、長時間の座位行動が心臓病・糖尿病・血栓症など深刻な生活習慣病のリスクを高めることが明らかになっています。しかも驚くべきことに、「定期的に運動している人でも、それ以外の時間に長く座り続けているとリスクは残る」とされています。

この記事では、「座りすぎ」がなぜ体に悪いのか、どんな症状・病気につながるのか、そして今日からすぐ実践できる対処法を、内科専門医がわかりやすくお伝えします。


目次

  1. 「座りすぎ」とは何か?─ 基礎知識
  2. 座りすぎが招く健康リスク
  3. こんな症状は”座りすぎサイン”かも
  4. 今日からできる!予防法・対処法
  5. よくあるご質問(Q&A)
  6. まとめ

1. 「座りすぎ」とは何か?─ 基礎知識

「座りすぎ」という言葉を聞いて、「どのくらい座ったら座りすぎになるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

医学的には、座ったり横になったりして体をほとんど動かさない状態を「座位行動(Sedentary Behavior)」と呼びます。テレビ視聴、デスクワーク、スマートフォンの操作、車の運転なども、すべてこれに含まれます。

世界保健機関(WHO)は2020年の身体活動・座位行動ガイドラインにおいて、「座位行動の時間を減らし、身体活動を行うことは健康に有益である」と勧告しています。

重要なのは、「定期的に運動していても、長時間座り続けること自体がリスクになる」という点です。運動習慣と座位時間の削減は、どちらか一方だけでは不十分で、両方に取り組む必要があります。

日本人の「座りすぎ」の実態

オーストラリアの研究機関(シドニー大学)が20か国以上を対象に行った大規模調査(2011年)では、日本人の1日の平均座位時間は約7時間と、世界でもトップクラスに長いことが報告されました。近年のリモートワーク普及後はさらに延びているとの指摘もあります。

1日8時間以上座り続けると健康リスクが上昇するという報告が複数の研究で示されており、これはちょうど標準的なオフィス勤務の時間と重なります。また、30分間座り続けるだけでも体への影響が始まるとされており、「座りすぎ注意」の意識を日常的に持つことが大切です。

項目目安
日本人の平均座位時間約7時間/日
健康リスクが高まる目安8時間以上の継続座位
一度に座り続ける時間の目安30分以内

2. 座りすぎが招く健康リスク

「座っているだけで病気になるの?」と驚かれる方もいらっしゃいます。ここでは、座位行動の長時間継続が体に与える主な影響を解説します。

① 心血管疾患(心臓病・脳卒中)のリスク上昇

長時間の座位は血流を低下させ、血管の内側(内皮)の機能を損なうことが知られています。これにより動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる可能性が指摘されています。

Biswas ら(2015年)が医学誌 Annals of Internal Medicine に発表したメタ分析では、座位時間が長いほど心血管疾患による死亡リスクが上昇することが示されており、その影響は中程度の運動習慣を持つ人にも認められたと報告されています。

② 2型糖尿病・インスリン抵抗性の悪化

座ったままでいると、下肢の筋肉がほとんど使われません。筋肉は食後の血糖を取り込む重要な臓器ですが、その働きが低下することで血糖値が上がりやすくなります。

30分座り続けるだけでもインスリン感受性(血糖を下げるホルモンの効きやすさ)が低下し始めるとされており、2型糖尿病のある方では特に注意が必要です。糖尿病内科の外来でも、座位時間の管理は血糖コントロールの重要な要素として扱っています。

③ 深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)

長時間足を動かさずにいると、脚の静脈内で血が固まりやすくなり、血栓(血のかたまり)ができることがあります。これが深部静脈血栓症(DVT)です。

さらに、この血栓が肺の血管に詰まると「肺塞栓症(肺血栓塞栓症)」という命に関わる状態を引き起こすことがあります。飛行機の中だけでなく、自宅や職場での長時間の座位でも発症リスクがあることが知られており、「エコノミークラス症候群」という呼称に惑わされないよう注意が必要です。

④ 腰痛・肩こり・姿勢の悪化

長時間同じ姿勢で座り続けると、椎間板への負荷が増え、腰の筋肉・靭帯が緊張し続けます。また、前傾みになって画面を見る姿勢は、首・肩・背中への負担を著しく大きくします。

腰痛は日本で最も多い整形外科的な訴えのひとつですが、その背景に「座りすぎ」が関与しているケースは少なくありません。

⑤ メンタルヘルスへの影響

座位行動の増加はうつ症状・不安感との関連が報告されています。反対に、身体活動量を増やすことが気分の改善に有効であることは多くの研究で支持されています。

ポイント 「週3回ジムに通っているから大丈夫」というわけではありません。運動習慣があっても、それ以外の時間に長時間座り続けているとリスクは残ります。「運動」と「座位時間の削減」は、別々に取り組む必要があります。

3. こんな症状は”座りすぎサイン”かも

以下のような症状や変化を感じている方は、座位時間を見直すきっかけにしてみてください。

  • 夕方になると足がむくむ、重くなる
  • 長時間座った後に立ち上がると腰・膝が痛む
  • 肩こり・首こりが慢性化している
  • 食後に眠気が強く、集中力が続かない
  • 最近体重が少しずつ増えている
  • 健康診断で血糖・中性脂肪・LDLコレステロールが高めと言われた
  • なんとなくやる気が出ない、気分が落ち込みやすい

これらの症状はすべて「座りすぎ」だけが原因とは限りません。しかし、複数あてはまる方はぜひ一度、普段の生活を振り返ってみてください。気になる症状が続く場合は、内科への受診をお勧めします。

4. 今日からできる!予防法・対処法

「座りすぎを改善しよう」と思っても、仕事の都合や生活習慣でなかなか難しい、という方が多いと思います。完璧を目指す必要はありません。まず「30分に1回、1〜2分立ち上がる」ことを意識するだけでも効果的とされています。

ステップ1:30分ごとに立ち上がる習慣をつくる

スマートフォンのアラームやパソコンのリマインダーを30分ごとに設定し、立ち上がるきっかけをつくりましょう。トイレに行く、水を取りに行くなど、小さな行動で構いません。(私自身もスマートウォッチが座りっぱなしを検知すると教えてくれる設定にしています。)

ステップ2:立ちながら・歩きながら行う習慣を取り入れる

電話は立って受ける、テレビのCM中は立って足踏みするなど、「ながら立位」が有効です。スタンディングデスクの活用も注目されています。

ステップ3:食後10〜15分のウォーキングを習慣化する

食後の軽い歩行は血糖値の急上昇(血糖スパイク)を抑えるうえで特に効果的とされています。激しい運動は必要なく、軽い散歩程度で十分です。

ステップ4:ふくらはぎを使う「ながら運動」を意識する

座ったままでも、足首を回す・かかとの上げ下ろしをするなどの動きで、下肢の血流を改善できます。深部静脈血栓症の予防にも有効とされています。

ステップ5:デスクの高さ・椅子の姿勢を見直す

背もたれにしっかりもたれ、膝が約90度になる高さに椅子を調整しましょう。モニターの上端が目線と同じ高さになるよう設定することで、首への負担が軽減されます。

ステップ6:睡眠時間・質を整える

睡眠不足は日中の活動量低下を招き、座位時間の増加につながります。7〜9時間の睡眠が推奨されており、規則正しい睡眠リズムを保つことが重要です。

補足:運動の置き換えではなく「組み合わせ」を WHO(2020年)は成人に対して、週150〜300分の中強度有酸素運動(速歩きなど)または週75〜150分の高強度運動(ランニングなど)を推奨しています。座位時間の削減はこれらの「代わり」ではなく、「組み合わせ」として取り組むことが大切です。

5. よくあるご質問(Q&A)

Q:立ち仕事の人は座りすぎと関係ありませんか?

A:立ち仕事の方はたしかに座位時間は少ないのですが、同じ姿勢で長時間立ち続けることも下肢の血流悪化・静脈瘤・腰痛のリスクになります。「動きのある立位」を意識し、適度に座る休憩も取り入れることが理想的です。


Q:テレビを見る時間が長いのも同じように危険ですか?

A:はい、テレビ視聴時間の長さは心血管疾患・糖尿病・死亡リスクの上昇と関連するとの研究があります。ただし、CM中に立ち上がる・ストレッチをするなどの工夫で影響を軽減できると考えられています。


Q:スマートフォンやゲームの時間はどうですか?

A:スマートフォンやゲームも、長時間の座位行動に含まれます。加えて、前かがみの姿勢(ストレートネック)になりやすく、首・肩・腰への負担が大きくなります。「1時間に1回は立ち上がる」というルールを設けることをお勧めします。


Q:足のむくみが気になります。病院に行くべきですか?

A:足のむくみは、座りすぎによる血流低下のほか、心臓・腎臓・肝臓の機能低下、甲状腺疾患、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症など、様々な原因で起こります。片側だけのむくみ、痛みや赤みを伴う場合、急に悪化した場合は早めに循環器内科を受診されることをお勧めします。


Q:血糖値が高めと言われましたが、座りすぎが原因ですか?

A:座位時間の長さは血糖コントロールに影響することがわかっています。ただし、血糖値の上昇には食事内容・体重・遺伝的要因など複合的な原因があります。健診で血糖高値を指摘された場合は、自己判断せずに糖尿病内科で詳しく調べることをお勧めします。

6. まとめ

いかがだったでしょうか?ポイントを下記にまとめます。

  • 日本人は世界有数の「座りすぎ大国」であり、1日平均約7時間座っているとされています
  • 長時間の座位行動は、心臓病・2型糖尿病・血栓症・腰痛・メンタル不調などのリスクと関連が指摘されています
  • 運動習慣があっても、長時間座り続けること自体がリスクになるため、「座位時間を削減する」意識が別途必要です
  • 「30分に1回立ち上がる」「食後のウォーキング」「ながら足運動」など、小さな習慣の積み重ねが有効とされています

「座りすぎ」は自覚しにくいリスクですが、日常のちょっとした意識で大きく改善できます。今日からまずは「30分に1回、立ち上がってみる」ことを試してみてください。

当院(丹野内科・循環器・糖尿病内科 松戸駅徒歩5分 キテミテマツド8階)では、生活習慣病 (高血圧・脂質異常症・糖尿病)の管理に関するご相談も承っております。健診結果が気になる方、体の変化が心配な方は、お気軽にご相談ください。


参考文献

  1. World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva: WHO; 2020.
  2. Biswas A, et al. Sedentary time and its association with risk for disease incidence, mortality, and hospitalization in adults: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med. 2015;162(2):123-132.
  3. Katzmarzyk PT, et al. Sitting time and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(5):998-1005.
  4. Dunstan DW, et al. Breaking up prolonged sitting reduces postprandial glucose and insulin responses. Diabetes Care. 2012;35(5):976-983.
  5. Wilmot EG, et al. Sedentary time in adults and the association with diabetes, cardiovascular disease and death: systematic review and meta-analysis. Diabetologia. 2012;55(11):2895-2905.
  6. Chau JY, et al. Daily sitting time and all-cause mortality: a meta-analysis. PLoS One. 2013;8(11):e80000.
  7. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医

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