• 2026年7月13日

夏の心筋梗塞にご注意を|暑さと脱水が心臓に与える影響と予防法【医師が解説】

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長の田邉弦です。

「心筋梗塞は寒い冬の病気」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。実は、心筋梗塞は夏にも起こります。夏は大量の汗をかくことで体の水分が失われ、血液が濃縮されて「血栓(血のかたまり)」ができやすくなるためです。特に近年は猛暑日が増えており、暑さによる心臓への負担は決して軽視できません。

この記事では、松戸市でクリニックを開業している循環器内科専門医の立場から、夏に心筋梗塞が起こる仕組み、注意すべき症状、そして今日から実践できる予防法まで、わかりやすく解説します。

目次

  1. 心筋梗塞とはどんな病気?
  2. なぜ夏に心筋梗塞が起こりやすくなるのか
  3. 見逃してはいけない症状のサイン
  4. 夏の心筋梗塞を防ぐ5つの予防法
  5. よくあるご質問(Q&A)
  6. まとめ

心筋梗塞とはどんな病気?

心筋梗塞とは、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る「冠動脈(かんどうみゃく)」という血管が詰まり、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。

水道のホースをイメージしてみてください。ホースの内側に汚れ(動脈硬化)がたまって狭くなったところに、ゴミのかたまり(血栓)が引っかかると、水(血液)が完全に流れなくなってしまいます。心臓の筋肉は血液が届かなくなると、時間とともにダメージが広がっていくため、一刻も早い治療が必要とされています。

厚生労働省の統計では、心疾患は日本人の死因の第2位を占めており、その中でも心筋梗塞を含む虚血性心疾患は大きな割合を占めています。

なぜ夏に心筋梗塞が起こりやすくなるのか

汗による脱水で血液が「ドロドロ」になる

夏に心筋梗塞のリスクが高まる最大の理由は「脱水」です。

大量に汗をかくと、体の水分が失われて血液が濃縮されます。血液の濃度が高まると流れが悪くなり、血栓ができやすい状態になります。ジュースを煮詰めるととろみが出るように、血液も水分が減ると粘り気が増すとイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

特に高齢の方は、若い方に比べて体内の水分量がもともと少ないうえ、のどの渇きを感じにくくなっているため、気づかないうちに脱水が進みやすいと言われています。

冷房と屋外の温度差による血圧の変動

もう一つの要因が「温度差」です。

たとえば、冷房の効いた室内(25℃前後)から炎天下の屋外(35℃以上)へ出ると、10℃以上の温度差にさらされます。急激な温度変化は血管の収縮と拡張を繰り返させ、血圧が大きく変動し、心臓に負担がかかります。冬のヒートショックと似た現象が、実は夏にも起こりうるのです。

睡眠不足・夏バテによる自律神経の乱れ

熱帯夜による睡眠不足や夏バテは、自律神経のバランスを乱し、血圧や脈拍のコントロールに影響します。体力が落ちた状態で暑さのストレスが加わると、心臓への負担はさらに大きくなると考えられています。

見逃してはいけない症状のサイン

心筋梗塞の代表的な症状は、次のようなものです。

  • 胸の中央が締めつけられる、圧迫されるような強い痛みが20分以上続く
  • 冷や汗、吐き気、嘔吐を伴う
  • 左肩、腕、あご、背中に広がる痛み(放散痛)
  • 息苦しさ、強い倦怠感

ここで注意したいのが、夏の場合「熱中症との見分けがつきにくい」という点です。

たとえば「炎天下で庭仕事をしていたら、胸が苦しくなり冷や汗が出てきた」という場合、ご本人は熱中症だと思って涼しい場所で休んで様子を見てしまいがちです。しかし、涼んで水分をとっても胸の痛みや圧迫感が続く場合は、心筋梗塞の可能性を考える必要があります。

胸の強い痛みが20分以上続く場合は、ためらわずに救急車(119番)を呼ぶことが推奨されます。心筋梗塞の治療は、時間との勝負です。

夏の心筋梗塞を防ぐ5つの予防法

1. こまめな水分補給を習慣に

のどが渇く前に、コップ1杯程度の水をこまめに飲むことが基本です。特に「起床時」「入浴前後」「就寝前」「外出前」は意識して水分をとりましょう。厚生労働省も、食事以外に1日あたり1.2リットル程度の水分摂取を目安として推奨しています。

なお、アルコールやカフェインの多い飲み物は利尿作用があるため、水分補給としては適さない点にご注意ください。ビールを飲んだ後は、かえって脱水が進むことがあります。

2. 冷房を我慢しない

「電気代がもったいない」「冷房は体に悪い」と冷房を控える方がいらっしゃいますが、室温の目安は28℃以下、湿度にも配慮した環境づくりが熱中症予防の観点からも大切です。外出時は、屋外との温度差が大きくなりすぎないよう、設定温度を極端に下げないこともポイントです。

3. 暑い時間帯の運動・作業を避ける

ウォーキングや庭仕事は、早朝や夕方など比較的涼しい時間帯に行いましょう。日中どうしても外出する場合は、帽子や日傘を使い、途中で日陰の休憩をはさむことが勧められます。

4. 血圧・持病の管理を続ける

高血圧、糖尿病、脂質異常症は、動脈硬化を進めて心筋梗塞のリスクを高める代表的な病気です。夏は血圧が下がりやすい季節でもあるため、自己判断でお薬を中断せず、気になる変化があればかかりつけ医にご相談ください。当院のブログでは高血圧や熱中症についても詳しく解説していますので、あわせてご覧いただければ幸いです。

5. 定期的な検査で心臓の状態を知る

心電図や血液検査、血圧測定などの定期的なチェックは、リスクの早期発見につながります。健康診断で「血圧が高め」「コレステロールが高め」と指摘されたまま放置している方は、症状がなくても一度受診されることをおすすめします。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 心筋梗塞は冬の病気だと思っていました。夏も本当に多いのですか?

A. 心筋梗塞は一般に冬に多いとされていますが、夏も脱水や温度差の影響で発症リスクが高まる季節です。真夏のゴルフ場で心筋梗塞を発症し運ばれる方は珍しくありません。季節を問わず予防を続けることが大切です。

Q2. スポーツドリンクは毎日飲んだほうがよいですか?

A. 大量に汗をかいたときには塩分補給として有用ですが、糖分が多い製品もあるため、糖尿病の方や血糖値が気になる方は日常的な多飲は控えめにし、普段は水やお茶を基本とするのが良いと思います。

Q3. 胸の痛みがすぐに治まった場合は受診しなくてよいですか?

A. 短時間で治まる胸の痛みは「狭心症」の可能性があり、心筋梗塞の前触れのこともあります。一度でも気になる胸の症状があった場合は、早めの受診をおすすめします。

まとめ

夏の心筋梗塞は、脱水による血液の濃縮、室内外の温度差、夏バテによる体調の乱れなどが重なって起こりやすくなります。こまめな水分補給、適切な冷房の使用、持病の管理という基本的な対策を続けることが、心臓を守る第一歩です。

胸の痛みや圧迫感が続く場合は我慢せず救急要請を、気になる症状や健診結果がある方はお早めに医療機関へご相談ください。当院(丹野内科・循環器・糖尿病内科/松戸駅徒歩5分・キテミテマツド8階)では、循環器専門医による精査や生活習慣病の管理を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。

参考文献

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医

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