• 2026年6月2日

【2026年版】熱中症から身を守る完全ガイド|内科医が教える最新の予防・対処法

こんにちは。丹野内科・循環器・糖尿病内科の田邉弦です。今年も暑い季節がやってきましたので、熱中症の話題です。

「少し暑いな」と思っていたら、急にめまいがして立っていられなくなった。 こうした経験をお持ちの方、あるいは身近にそういった方がいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。2025年夏、全国の熱中症による救急搬送者数は10万510人にのぼり、統計開始以来初めて10万人を超えました。そして気象庁の長期予報では、2026年の夏(6〜8月)は平年より気温が高い傾向が予測されており、今年も引き続き厳重な警戒が必要とされています。

熱中症は「気合いが足りない」「水を飲めば大丈夫」と軽く見られがちですが、適切な対処が遅れると命に関わる深刻な状態になり得ます。一方で、正しい知識を持ち、適切に行動することで、そのほとんどは防ぐことができます。

この記事では、科医として、2026年最新の情報をもとに、熱中症の基礎知識から予防・対処法まで、わかりやすくお伝えします。


目次

  1. 熱中症とは何か——体の中で何が起きているの?
  2. 熱中症の重症度分類(熱中症診療ガイドライン2024より)
  3. こんな症状が出たら要注意——段階別サイン
  4. 特に気をつけたい人はこんな方
  5. 2026年夏の特徴と注意ポイント
  6. 日常生活でできる予防法7つ
  7. もし熱中症になってしまったら——正しい応急処置
  8. よくあるご質問(Q&A)
  9. まとめ——今日からできることを一つずつ

1. 熱中症とは何か——体の中で何が起きているの?

熱中症とは、暑い環境の中で体の温度調節がうまくいかなくなり、体内に熱がたまってしまう状態のことをいいます。

私たちの体は、普段36〜37℃程度の体温を保つように精密に調整されています。気温が上がると、体は主に「汗をかいて蒸発させること」で体温を下げようとします。ところが、気温が高いだけでなく湿度も高い日本の夏は、汗が蒸発しにくく、この冷却システムがうまく機能しなくなります。

イメージとしては、ラジエーター(冷却装置)が詰まってしまい、エンジンがオーバーヒートしてしまうような状態です。

また、大量に汗をかくことで、体から水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの「電解質(でんかいしつ)」も失われます。これが筋肉のけいれんや意識障害などさまざまな症状を引き起こす原因となります。

2. 熱中症の重症度分類(熱中症診療ガイドライン2024より)

熱中症診療ガイドライン2024(日本救急医学会)では、熱中症の重症度をI度〜IV度の4段階で分類しています。

I度(軽症)

  • めまい、立ちくらみ、大量の発汗
  • 筋肉のこむら返り(足がつる)
  • 気分の悪さ

II度(中等症)

  • 頭痛、吐き気・嘔吐
  • 体がだるく力が入らない(倦怠感)
  • 集中力・判断力の低下

III度(重症)

  • 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が悪い
  • 体温が38℃以上の高体温
  • 手足がうまく動かない(運動障害)

IV度(最重症)

2024年の改訂で新たに設けられた分類です。深部体温が40℃を超えるような最重症例で、多臓器不全のリスクがあり、救命が最優先となります。

I度は自分で対処できる可能性がありますが、II度以上はすみやかに医療機関を受診することが推奨されます。

3. こんな症状が出たら要注意——段階別サイン

▶ 「少しおかしい?」と感じたら(I度の目安)

  • 急に立ちくらみやめまいがした
  • 足がつった(こむら返り)
  • 汗が止まらない
  • なんとなく気持ちが悪い

このような症状は、体が「暑さのサインを出している」段階です。すぐに涼しい場所に移動し、水分と塩分を補給しましょう。

▶ 「これは危ないかも」と感じたら(II度の目安)

  • 頭が割れるように痛い
  • 吐き気がひどく、嘔吐する
  • 体がだるく、歩くのもつらい
  • 気持ちがぼんやりしてくる

この状態になったら、自分だけで判断せず、周りの方に助けを求めるか、医療機関への受診を検討してください。

▶ 「救急車を呼ぶべき」状態(III度・IV度の目安)

  • 呼びかけても反応がない、または反応が鈍い
  • ろれつが回らない
  • 体が熱く、汗がかえって出ていない
  • けいれんを起こしている

このような状態は一刻を争います。ためらわずに119番に電話してください。

4. 特に気をつけたい人はこんな方

2025年の救急搬送データによると、65歳以上の高齢者が全体の約57%を占めていました。また、発生場所でもっとも多かったのは「自宅」で、屋外だけでなく室内でも多く発生していることがわかっています。

以下に該当する方は、特に注意が必要です。

高齢者:加齢とともに、暑さを感じにくくなり、のどの渇きも自覚しにくくなります。「暑くないから大丈夫」という感覚が、実は危険なサインかもしれません。

小さなお子様:体温調節機能が大人より未発達です。チャイルドシートで眠ってしまった際など、車内の温度上昇には特に注意が必要です。

糖尿病・心臓病・腎臓病のある方: これらの基礎疾患がある方は、体の水分調節や自律神経機能に影響が出ていることがあり、熱中症になりやすく、重症化もしやすい傾向があります。

肥満の方:体内に熱がこもりやすく、発散しにくい傾向があります。

飲酒している方:アルコールには利尿作用があり、知らないうちに脱水が進みやすくなります。

体調が優れない方・前日に十分眠れていない方:体力が落ちている状態では、体の暑さへの対応力も低下しています。

5. 2026年夏の特徴と注意ポイント

気象庁の長期予報によると、2026年の夏(6〜8月)は平年より気温が高い傾向が予測されており、特に7月後半〜8月上旬に記録的な高温となる可能性が指摘されています。

また、近年は「6月からすでに危ない」という傾向が強まっています。2025年6月の救急搬送者数は17,229人と、6月の調査以来最多を記録しました。梅雨明け前の蒸し暑い時期は、まだ体が暑さに慣れていない(暑熱順化が不十分な)状態のため、特に注意が必要です。

加えて、2025年から職場における熱中症対策の強化が法的に義務化され、2026年はリスクアセスメントの実施も新たに求められるようになりました。社会全体として熱中症を「個人の問題」ではなく「社会全体で取り組む課題」としてとらえる流れが加速しています。

「まだ梅雨だから大丈夫」「曇っているから大丈夫」という思い込みは、今年は特に危険です。

6. 日常生活でできる予防法7つ

① こまめな水分補給——「のどが渇く前に」が鉄則

のどが渇いたと感じた時点で、すでに体は軽い脱水状態にあります。1時間に1回を目安に、コップ1杯(150〜200mL程度)の水分をとることが推奨されます。

運動や屋外での活動時には、水だけでなく塩分も一緒に補給することが大切です。市販の経口補水液やスポーツドリンクも有効ですが、糖尿病や腎臓病のある方はかかりつけ医にご相談ください。

1日の目安:食事以外で1.0〜1.5L程度の水分補給が一般的です。

② 暑熱順化(しょねつじゅんか)——体を暑さに慣らす

暑熱順化とは、徐々に暑い環境に慣れることで、体の熱への対応力を高めるプロセスです。夏本番が始まる前の5〜6月頃から、軽いウォーキングなど適度な運動を屋外で行い、少しずつ体を暑さに慣らしていくことが推奨されます。

2025年の意識調査では「暑熱順化」という言葉を知っている人が51%と半数を超え、認知が広まってきています。

③ 服装の工夫

  • 色:白や薄い色は熱を反射しやすく、黒は吸収しやすいです
  • 素材:通気性の良い麻や綿、吸汗速乾素材が適しています
  • 帽子・日傘:直射日光を遮るだけで体感温度はかなり下がります
  • ネッククーラー・冷却スプレーなども補助的に有用です

④ 室内でも油断しない

「家の中にいれば安全」は誤りです。2025年の搬送データで最も多かった発生場所は「住居」でした。特に高齢者の方は「もったいない」「暑くない」という理由でエアコンを使わない傾向があり、これが命に関わることがあります。

室温28℃、湿度60%以下を目安に、エアコンや扇風機を積極的に活用することが推奨されます。就寝中もエアコンをつけたままにして室温をコントロールすることが望ましいです。

⑤ 環境省の「熱中症警戒アラート」「熱中症特別警戒情報」を活用する

気温や湿度、日射などを考慮した「WBGT(暑さ指数)」という指標をもとに、環境省と気象庁が発表する情報です。「警戒アラート」が出た日は、屋外での激しい運動は控えることが推奨されます。スマートフォンのアプリや天気予報でも確認できますので、毎日の生活習慣に取り入れてみてください。

⑥ 前日の睡眠・体調管理

睡眠不足や体調不良の日は、体の暑さへの対応力が落ちています。「なんとなく元気がない」と感じる日は、屋外での活動を控えめにすることをお勧めします。

⑦ 周りの方への声かけ

高齢のご家族や一人暮らしの方は、自分では気づかないうちに熱中症になっていることがあります。こまめな連絡や訪問、「エアコンつけてる?」のひと言が命を救うことがあります。

7. もし熱中症になってしまったら——正しい応急処置

ステップ1:涼しい場所へ移動する

エアコンが効いた室内、または日陰の風通しの良い場所に移動します。本人が動けない場合は、周囲の方が助けてください。

ステップ2:衣服を緩め、体を冷やす

ネクタイ・ベルト・ボタンなどを緩め、熱が外に逃げやすくします。 首・脇の下・足の付け根(鼠径部)には太い血管が通っており、ここを冷やすと体温を下げる効率が高まります。保冷剤や氷を布で包んで当てると有効です。

ステップ3:水分・塩分を補給する

本人が意識しっかりしており、自分で飲める場合は、経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつゆっくりと飲んでもらいます。

無理に飲ませることは、誤嚥(ごえん)の危険があるため避けてください。

ステップ4:症状が改善しなければ、迷わず受診・119番

応急処置をしても、15〜30分程度で改善しない場合、または意識がはっきりしない・ぐったりしているなど重症を疑う場合は、すぐに119番に連絡してください。

8. よくあるご質問(Q&A)

Q1:スポーツドリンクと経口補水液、どちらがいいですか?

A:日常的な水分補給にはスポーツドリンクや水で十分です。一方、経口補水液は脱水の治療に適した塩分濃度・糖分濃度に設計されており、熱中症を発症した時や脱水が疑われる時により適しています。ただし、腎臓病や心臓病のある方は塩分・カリウムの制限がある場合があるため、かかりつけの医師にご相談ください。

Q2:夜間や睡眠中にも熱中症になりますか?

A:なります。特に夜間の最低気温が25℃を超える「熱帯夜」が続く場合、睡眠中に脱水・体温上昇が進むことがあります。就寝前の水分補給と、エアコンの適切な使用が推奨されます。

Q3:子どもに市販の経口補水液を飲ませても大丈夫ですか?

A:軽度の脱水であれば使用可能なものが多いですが、体重が小さい乳幼児は適切な量の管理が難しい場合があります。心配な場合は、小児科で相談されることをお勧めします。

Q4:「熱中症になりやすい体質」はありますか?

A:体質的な差はあると考えられています。汗をかきにくい方、肥満の方、慢性疾患のある方などはリスクが高い傾向があります。特に糖尿病の方は自律神経障害により発汗機能が低下していることがあり、より注意が必要です。

Q5:熱中症になったあと、しばらく体がだるい状態が続きますがなぜですか?

A:「熱中症後症候群」とも呼ばれる状態で、全身の倦怠感・疲労感・集中力の低下などが数日〜数週間続くことがあります。重症だった場合はさらに長引くこともあります。無理をせず、水分補給と十分な休養をとっていただき、症状が続く場合はご受診ください。

Q6:病院では熱中症にどのような治療をするのですか?

A:軽症〜中等症では、点滴による水分・電解質の補給が中心です。体温が高い場合は体を外側から冷やす処置(クーリング)を行います。重症の場合は集中治療が必要となることもあります。

9. まとめ——今日からできることを一つずつ

熱中症は、正しい知識と行動で大部分を防ぐことができる「予防できる病気」です。

2025年には救急搬送者数が初めて10万人を超えました。2026年の夏も、非常に厳しい暑さが予想されています。だからこそ、今のうちから備えておくことが大切です。

今日からできる3つのことをお伝えします。

  1. こまめに水を飲む習慣をつける(のどが渇く前に)
  2. 室温をこまめにチェックする(28℃を超えたらエアコンを迷わず使う)
  3. 高齢のご家族に声をかける(「エアコンつけてる?」のひと言から)

正しい知識を持って、これから迎える暑い夏を乗り切りましょう。

参考文献・引用元

  1. 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」
  2. 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」
  3. 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」

執筆者プロフィール

田邉弦

丹野内科・循環器・糖尿病内科 院長

  • 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本心血管インターベンション治療学会 認定医
  • 認知症サポート医

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