甲状腺とは

甲状腺イメージ

甲状腺は、首の前側中央に位置する内分泌器官で、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です(重量は約20g)。性別によって位置にわずかな違いがあり、男性の方がやや下にあります。ここで分泌される甲状腺ホルモンの量は、脳内の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調整されます。

甲状腺ホルモンは、ヨウ素を材料として甲状腺で作られるホルモンで、血液を通じて全身の臓器に運ばれ、脳、心臓、肝臓、腎臓などの新陳代謝を活発にする役割を担っています。

しかし、何らかの要因でこのホルモンの分泌が過剰になったり、不足したりすると、さまざまな症状が発生します。これを甲状腺疾患と呼びます。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、甲状腺機能亢進症(代表的な疾患はバセドウ病など)となり、逆に分泌が不足すると甲状腺機能低下症(代表的な疾患は橋本病など)に分類されます。

主な甲状腺疾患

バセドウ病

バセドウ病とは

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症の一つで、その中でも代表的なものがバセドウ病です。原因は自己免疫の異常とされています。甲状腺疾患は女性に多く見られますが、バセドウ病の場合、男女比は1:3~5です。

主な症状としては、全体的に甲状腺が腫れる(びまん性甲状腺腫)、頻脈、眼球突出の3つが有名で、多汗、体重減少、女性の場合は希発月経や無月経、食欲の増加、下痢、手の震え、イライラするなどの症状もあります。

検査について

患者様が訴える症状や診察結果からバセドウ病が疑われる場合、血液検査を行います。甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの数値を測定し、また頸部超音波検査(頸部エコー)で甲状腺の血流状態を確認し、診断します。

治療について

バセドウ病と診断されると、まずは薬物療法が行われます。抗甲状腺薬として、チアマゾールやプロピルチオウラシルが処方され、甲状腺ホルモンの抑制を目指します。

もし抗甲状腺薬が使えない、もしくは効果が不十分な場合には、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療が選択されます。この治療は放射性ヨウ素を服用し、その放射線が甲状腺を破壊し、ホルモンの分泌を抑えるというものです。この治療後、数年後に甲状腺機能低下症を発症することもあります。

上記の治療が困難な場合や、がんなどの腫瘍が併発している場合、または早期に治癒を目指す場合には、甲状腺の全摘または部分的な摘出手術が検討されます。

橋本病

橋本病とは

橋本病は、慢性甲状腺炎とも呼ばれる甲状腺疾患で、主に自己免疫反応によって甲状腺に慢性的な炎症が起こり、それにより甲状腺が破壊され、甲状腺機能低下症でみられる症状が発生する病気です。40~50代の中年女性に多く見られ、女性患者は男性の20倍とされています。

一般的な症状としては、甲状腺の腫れ(びまん性甲状腺腫大)、声がれ(嗄声)、寒がり、むくみ、食欲の低下、体重増加、疲れやすさ、徐脈、女性の場合は月経過多や無月経などが見られます。

検査について

頸部超音波検査を通じて、甲状腺の腫れや血流を調べます。また、血液検査で甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの数値を確認します。

治療について

甲状腺に腫れがあるものの、機能に異常がない場合、治療は不要です。しかし、将来甲状腺機能低下症を発症する可能性があるため、定期的な経過観察が必要です。

もし甲状腺機能低下症の症状が出た場合には、甲状腺ホルモンを服用する薬物療法が行われます(症状がなくても、血液検査でホルモン濃度が低いと診断された場合、治療が必要です)。